ピアノの跳躍で音を外すときに:移動と着地を分けて確かめる練習

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

違う鍵盤に着く、到着が遅れる、音だけ強くなる。跳躍のつまずきを分け、サティとクーラウの譜例、鍵盤図を使って、移動をフレーズの中へ戻す練習を考えます。

ピアノの跳躍で音を外すとき、同じ二音を何度も往復しているだけでは、失敗の理由が見えないことがあります。着地する鍵盤を見つけていないのか、移動を始めるのが遅いのか。鍵盤には届いていても、慌てて打鍵するために音が強く飛び出す場合もあります。

跳躍の練習では、まずどこへ行くか、いつ着くか、どんな音で着くかを分けて聴いてみます。そのあと、三つを曲のフレーズへ戻します。ここではサティとクーラウの譜例を使い、左手の低音から和音への移動と、右手の旋律の中の跳躍を考えます。

同じ「外れる」でも、確かめることは違う

違う鍵盤に着く
着地先だけを弾き、鍵盤の位置と指の配置を知る。次に、出発音から移動して音を出す前に確かめる。
鍵盤は合うが、到着が遅れる
出発音のあと、いつ移動を始めているかを見る。二音の間にある拍の長さへ戻す。
間に合うが、音が飛び出す
移動せずに出した音と比べる。着地直前の高さ、指の準備、和音がそろうタイミングを聴く。

着地する鍵盤と手の形

出発する音を弾く前に、着地先だけを一度弾いてみてください。単音なら鍵盤の位置と使う指、和音なら構成音と手の形を確かめます。離れた場所から飛んでくる前に、その場所にいるときの感触を知っておきます。

和音への跳躍では、端の音だけ合っていて中の音を外すことがあります。たとえば最低音だけを目で追い、ほかの指の配置を着いてから探している場合です。和音をゆっくり一緒に鳴らし、どの指がどの鍵盤に触れるかを覚えてから、出発点へ戻ります。

次は出発音を鳴らし、着地先へ移動して、音を出す直前で止まります。鍵盤に指が触れたところで、位置と形を確認します。このときは曲のテンポを保つ練習とは分け、移動の行き先を確かめます。いきなり音を出すと、位置が曖昧でも勢いで鍵盤を押してしまい、どこでずれたかを見落とします。

手の幅も、出発時の形に固定しないで観察します。単音を弾いたあとに和音の形へ変わる跳躍なら、移動中に次の配置を準備します。和音を弾き終えたあとも大きく指を開いたまま次の単音へ向かうと、余計な構えを持ち越します。音型ごとに必要な形へ移ることが、鍵盤上の移動と一緒に起きています。

サティ:低音から和音へ

《ジムノペディ第1番》の冒頭では、左手が1拍目に低音を弾き、2拍目に上の和音へ移ります。和音は上段の五線に書かれていますが、左手の伴奏です。低音と和音を合わせて一つの響きを作ります。

サティ:低音のあと、1拍で上の和音へ

《ジムノペディ第1番》第1〜2小節。4分の3拍子、調号はファ♯とド♯。上段はト音記号、下段はヘ音記号。

譜例は横にスクロールできます。

第1小節は左手が低いソを1拍目に弾き、2拍目にシ・レ・ファ♯の二分音符の和音へ。第2小節は低いレからラ・ド♯・ファ♯の和音へ。低音は付点二分音符。伴奏の和音は上段に書かれ、旋律は休んでいる。
譜例を大きく表示

低音から和音までは1拍、和音から次の低音までは2拍。音の距離と、移動に使える時間を一緒に読みます。

最初の小節は、低いソからシ・レ・ファ♯の和音へ。次の小節は、低いレからラ・ド♯・ファ♯の和音へ移ります。行き先の和音が違うので、「同じくらい上へ跳ぶ」という覚え方では不安定になります。それぞれの和音を単独で弾き、その形へ移る練習をします。

ここでは低音から和音までが1拍、和音から次の低音までは2拍あります。往復する距離だけを見ていると、この時間の違いを見落とします。低音を弾いたあと、ぎりぎりまでその場所に留まってから急いで上へ行くと、ゆっくりした曲でも着地が慌ただしくなります。

低音の響きはペダルで支え、手は次の和音へ向かいます。音符に書かれた長さを指だけで保とうとして、低い鍵盤に留まり続けると、同じ左手が和音へ移れません。低音を鳴らすこと、響きを保つこと、手を運ぶことの役割を分けます。

和音へ着いたあとも、3拍目には新しい音を弾かず、響きを保ちます。着地に成功した安心感で次の低音を早く弾いてしまうと、拍が縮みます。まず伴奏だけを四小節ほど続け、低音、和音、響きが続く時間の三つを聴いてみましょう。

Vienna Piano School
グランドピアノを弾く生徒に、楽譜を示しながら指導する講師。

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ウィーン育ちのコンサートピアニスト、Enea。

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黒鍵のまとまりと視線

跳躍の着地点は、白鍵を一つずつ数えるより、黒鍵の二本・三本のまとまりとの位置関係で覚えると、鍵盤全体の中に置けます。たとえばシは、三本組の黒鍵の右側にある白鍵です。一オクターブ上のシにも、同じ並びがあります。

シから、一オクターブ上のシへ

どちらのシも、三本組の黒鍵の右側にあります。図の数字は音域を表し、中央のドをド4と数えます。

鍵盤図は横にスクロールできます。

着地先のシを、周りの黒鍵と一緒に覚えます。移動中の手を追う代わりに、その場所へ視線を送る練習を試します。

出発点をずっと見つめていると、手が動き始めてから行き先を探すことになります。短い一箇所で、出発音の位置を確かめたあとに視線を着地先へ移し、その場所へ手を運ぶ練習をしてみます。目で追う対象を、空中を動く手から次の鍵盤へ変える比較です。

ただし、視線を早く送るために、出発音まで雑にしてしまってはフレーズが崩れます。最初の位置と指使いを覚えたうえで、次を見る時間を作ります。二つの場所をゆっくり交互に確かめる練習から、曲の中で必要な一回の視線移動へ絞っていきます。

楽譜を見ながら弾く場合は、跳躍を含む短い音型を先に読んでおきます。次の音名を譜面で探しながら、同時に遠い鍵盤を探すと、目の仕事が重なります。一小節の音と指番号が頭に入れば、鍵盤を見たあとに戻る譜面上の場所も決められます。

クーラウ:旋律の中の一オクターブ

クーラウのソナチネOp.20-1 第1楽章、第17小節では、右手のシが一オクターブ上のシへ進みます。低いシは四分音符、高いシは二分音符です。左手の伴奏は八分音符で動き続けています。

クーラウ:高いシへ、柔らかく歌う

ソナチネOp.20-1 第1楽章、第17小節。4分の4拍子、上段はト音記号、下段はヘ音記号。右手はシ4からシ5へ進みます。

譜例は横にスクロールできます。

ピアノ、ドルチェ。右手はシ4の四分音符から、一オクターブ上のシ5の二分音符へ跳び、そのあとラ・ソの八分音符で下がる。左手はソ・レ・シ・レの八分音符の伴奏を続ける。
譜例を大きく表示

到着したシの音色を聴き、そのあとのラ・ソまで続けます。跳躍の成功を、鍵盤が合ったかだけで判断しないようにします。

最初は右手だけで、二つのシの位置を確かめます。次に低いシから高いシへ移り、着地したあとのラ・ソまで弾いてみます。高いシに届くことだけが目標になると、そこで手の動きも歌も止まり、そのあとの下降が別の音型に聞こえます。

この場所はピアノ、ドルチェです。高いシを外さずに弾けても、着地の音だけ強ければ、柔らかな旋律の中で飛び出します。私はこうした跳躍では、着いた音を「成功した音」として強調していないかを聴きます。低いシを弾くときから、高いシの音色と、その先へ続く歌を思い描きます。

指使いは次の音まで含めて決めます。二つのシの移動だけなら弾きやすくても、そのあとにラ・ソへ下がると手が動きにくい場合は、まだフレーズ全体に合っていません。指番号を変えて比べるときは、いつも同じ短い範囲を弾き、跳躍の前後の音量とつながりも聴きます。

左手を戻したら、右手が高いシへ向かう間にも、伴奏の八分音符が同じ速さで続くかを確かめます。右手の移動に合わせて左手まで一瞬止まる場合は、右手の位置の問題に加えて、両手の時間の合わせ方を練習する必要があります。

この楽章全体の伴奏や音階、再現部については、クーラウOp.20-1 第1楽章の練習ガイドで詳しく扱っています。

音は合うのに、着地が硬い

正しい鍵盤へ届くようになったら、音の出方を聴きます。跳躍のあとだけ大きくなる、和音の一音だけ先に鳴る、毎回違う響きになる。これらは音程の正誤だけでは捉えられない着地の問題です。

同じ到着音を、移動せずに弾いた場合と、跳躍して弾いた場合で比べます。その場で弾けば柔らかい音が出るのに、移動を加えると強くなるなら、使いたい音はすでに作れています。次は、その音を出せる位置と準備を、移動のあとにも保つことを考えます。

たとえば、鍵盤のかなり上から急に落とす動きになっていないか、着地直前まで指の形が決まっていないかを見ます。高さや軌道を一律に決めるより、自分の動きで音が変わる場所を探します。少し早く行き先へ向かい、鍵盤の近くで指の配置を整えた場合と比べてください。

和音の音がばらける場合は、跳躍を外して、その和音をそろえて鳴らすところへ戻ります。和音そのものの打鍵が整っていない段階で距離を加えると、二つの問題が混ざります。逆に、移動なしならそろう場合は、着くときの手の向きや、鍵盤に触れる指のタイミングを観察します。

テンポの中へ戻す

着地先で止まる練習は、位置を知るための比較です。曲に戻るときには、その停止を取り除きます。出発音と到着音の間に書かれた時間を数え、元のリズムで弾きます。

最初は、移動の前後にある音を一つずつ加えます。跳躍だけなら合うのに、一小節前から弾くと外れる場合、出発音を弾く指や手の位置が孤立練習のときと違っていることがあります。実際の前の音から、どんな形で出発点へ来るのかを見直します。

到着後の音も大切です。和音へ着いたあとすぐ別の音域へ戻るなら、その次の行き先まで考えます。到着音を押さえ込んで手が止まると、一回目の跳躍は成功しても、続く移動に遅れます。小さな往復練習が整ったら、曲の中の一方向の流れへ広げます。

テンポを上げるときは、鍵盤に当たる確率に加えて、拍と音色も聴きます。速くした途端に強い音でしか着けなくなるなら、そこで音楽上の条件が変わっています。少し落とした速さで、同じ音色を保つ移動を探し直します。

メトロノームを使うなら、跳躍の直前だけ待っていないか、到着後に急いで帳尻を合わせていないかを聴きます。数回クリックと合わせたあとには止めて、旋律や伴奏の中に同じ拍を感じられるか確かめます。

両手で跳ぶ場所と視線の配分

左右が同時に別の場所へ動くと、両方の着地点を同じ瞬間に見ることはできません。片手ずつの練習で、どちらが視覚の助けを強く必要としているかを調べます。たとえば右手は黒鍵のまとまりで位置をつかめるのに、左手の低音だけが毎回ずれるなら、視線を左手に使う案を試せます。

両手に戻すときは、もう一方の手を完全に忘れるのではなく、音と位置の感覚で追います。見る側を決めても不安定なら、片手の指使いや出発位置がまだ毎回変わっていないかを確かめます。視線だけで解決しようとせず、先に覚えるべき音型を見つけます。

「鍵盤を見ないで弾くこと」を最初から目標にすると、位置が曖昧なまま飛ぶ練習になりがちです。まず見て確かめ、同じ動きが再現できるようになってから、どこまで視線を減らせるかを試します。楽譜を見る時間と鍵盤を見る時間を、曲に応じて選べるようにします。

練習で整った移動を、演奏につなげる

同じ跳躍を続けて弾いていると、直前の移動の感触が残っています。何回か安定したら、別の箇所を弾いてから戻ってみます。途中からではなくフレーズの始まりから弾いたときにも、着地先が思い浮かぶかを確かめます。

短い録音では、外れた音だけでなく、跳躍の前に不自然な間がないか、到着音が飛び出していないかを聴きます。手元の動画を使うなら、一度に全身の動きを評価しようとせず、移動を始める時点や、着地直前の指の準備など、一つの点を見ます。

練習した二音が当たるようになると、その部分だけを何度も確かめたくなります。最後には前後の旋律へ戻り、何のためにその音域へ進むのかを聴いてください。跳躍がフレーズの自然な動きとして聞こえれば、位置と時間と音色の練習が一つの演奏になっています。

池袋・新宿で跳躍を見直す

レッスンでは、実際に弾いている曲から一箇所を取り上げ、着地音をその場で弾いた場合と、移動して弾いた場合を比べられます。私は音を外した結果だけでなく、その前に手がどこにいて、次の音へいつ向かい始めたかを見ます。指使いや視線の工夫は、その曲の拍と音色の中で試します。

指番号と移動の関係をさらに考えたい方には、フレーズから選ぶピアノの指使いも役立ちます。手や腕を構えたまま動きにくくなる場合は、ピアノで力が抜けないときに見直す動きで、別の観察点も紹介しています。

Vienna Piano Schoolでは、池袋・新宿のピアノスタジオでの対面レッスンのお申し込みを受け付けています。跳躍、音色、伴奏のバランスなど、今の曲でつまずいているところを55分・無料の初回体験レッスンでご相談ください。現在は開講準備中で、開始時期と体験の日程はメールでご案内します。

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