ピアノで力が抜けないときに見直す5つの動き

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

「力を抜いて」と言われても、どこを変えればよいのでしょうか。呼吸、肩と前腕、手首、指、音を終える動きを一つずつ観察します。一音を保つ支えと離鍵を分ける例を通して、無理のない練習の手がかりを探します。

ピアノで「力を抜いて」と言われても、どこを変えればよいのか分からないときは、一音を弾く前、鳴らしている間、離したあとに分けて観察してみてください。呼吸、肩と前腕の準備、手首の向き、指の働き、音を終える動き。この五つを一度に直そうとせず、一つずつ確かめます。

目指すのは、手をふにゃふにゃにすることではありません。必要な音の長さや拍を保ちながら、余分に押し続けたり、次の音へ動けないほど構えたりしていないかを見つけることです。

ピアノの鍵盤に触れる両手を横から見た写真

鍵盤に触れる手元。写真:Thirdman / Pexels。演奏場面のイメージ写真で、奏法の正誤を示すものではありません。

「力を抜く」は、支えまでなくすことではありません

鍵盤を下げるとき、音を保つとき、指を離すときでは、することが違います。全部を同じ力加減で済ませようとすると、音が鳴ったあとも押し込んだり、反対に、必要な音まで途中で切れたりします。まずは「音を保つ支え」と「さらに押す力」を分けて考えましょう。

ここで扱うのは、痛みのない範囲で弾き方を観察する方法です。痛みが出たら演奏を止めてください。しびれ、力が入りにくい感じ、動かしにくさ、続く症状がある場合は、練習で直そうとせず、医師など適切な医療専門職に相談します。 演奏家の健康を扱うBAPAMのピアニスト向け資料も、痛みが出た際の中止と、しびれや筋力低下などへの医療相談を案内しています。

力みが気になる場所を確かめるために、わざと強く固める必要はありません。難しい和音や速いパッセージを使わず、弾き慣れた中音域の一音から始めます。音量は無理なく出せる範囲にし、分からなくなったら手を鍵盤から離して休みます。

1.呼吸:弾き始める前から息を止めていませんか

音を間違えないように構えるうちに、最初の音の前で息を止めていないか、確かめてみましょう。長いフレーズを弾いたあと、急に大きく息を吸いたくなる場合も、どこで呼吸が止まったかを観察する手がかりになります。それだけで力みの原因が分かるわけではありません。

まず、鍵盤に触れずに楽譜の短い部分を見ます。次に、普段どおり呼吸しながら、弾きやすい一音を鳴らします。大きく吸い込んだり、決めた秒数だけ息を吐いたりする課題にはしません。呼吸を整えようとして、別の力が入らないようにします。

片手の短いフレーズでも同じことを確かめます。一音では自然に呼吸できるのに、両手になると止まるなら、両手の音や指づかいを読む負担も見直せます。「呼吸が下手だから」と決めつけるより、どの条件で変わったかを覚えておく方が、次の練習につながります。

うまく弾けたかどうかと、息が止まったかどうかは、別々に振り返って構いません。音を外さなかった演奏でも、難所の前で長く構えていたと気づけば、それが今回の収穫です。

Vienna Piano School
グランドピアノを弾く生徒に、楽譜を示しながら指導する講師。

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ウィーン育ちのコンサートピアニスト、Enea。

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2.肩と前腕:指だけで鍵盤へ届こうとしていませんか

指先を鍵盤に置く前に、椅子の高さと距離を確認します。肩を持ち上げないと届かない、肘が体に詰まる、上体を大きく前へ倒さないと手が置けない、といった状態がないかを見ます。前腕は、肘から手首までの部分です。

ヤマハの姿勢の解説では、足裏を支え、肘が鍵盤とほぼ同じ高さになるよう椅子を調節することを案内しています。これは座る位置を探す出発点です。身長や腕の長さが違う人に、同じ椅子の高さや鍵盤からの距離を当てはめる必要はありません。

試すときは、中央付近の弾きやすい白鍵に手を置き、いったん膝へ戻します。もう一度置く際に、肩が先に上がるか、手だけを遠くへ伸ばしているか、肘や前腕に動く余地があるかを見ます。肩を押し下げて固定することが目的ではありません。

近くの音では問題がなく、離れた音へ移ると構えるなら、まず移動先を見つけてから手を運びます。音を探す作業と、音を鳴らす作業を一度分けるためです。椅子の位置を変えるときは演奏を止め、安定して座れることを確かめてから再開します。

3.手首:形を守るために、次の音への動きを止めていませんか

「手首を柔らかく」と考えて、音のたびに大きな円を描いたり、上下に揺らしたりする必要はありません。一方で、最初に作った形を最後まで変えないようにすると、別の鍵盤へ指を運ぶときにも、その形を守ることが課題になってしまいます。

打鍵を調べた古屋晋一・木下博による熟練者と初心者の比較研究では、肩から指までの動きの組み合わせに違いが見られました。ただし、各群七人が右手のオクターブを弾いた実験です。研究中の関節角度を、そのまま全員の「正しいフォーム」にすることはできません。

ここでは、弾きやすい指で近くの白鍵を二音だけ弾きます。たとえば、右手の人差し指でレ、中指でミを、いったん離して順に鳴らします。次の指を置く前から手首が強く横へ曲がっていないか、最初の音で固めたままになっていないかを見ます。

動きを足すことより、音を減らす、移動先を先に見る、無理のない指づかいにする、といった条件の変更から試してください。見た目が大きく動くほど脱力できている、という評価にはしません。

鍵盤に置いた手と手首を斜め上から見た写真

手の形だけでなく、音を鳴らす前後の動きも確かめます。写真:cottonbro studio / Pexels。演奏場面のイメージ写真で、特定の手の形を推奨するものではありません。

4.指:音が鳴ったあとも、押す力を増やしていませんか

鍵盤が底まで下がったあとも、「もっと響かせたい」と押し込み続けていないかを確かめます。アコースティックピアノでは、ハンマーが弦を打って音が出ます。すでに鳴った一音を、鍵盤の底をさらに押すことで大きく育てることはできません。

Parlitzらによる鍵盤に加える力の研究では、同じ速さと音量の課題でも、アマチュア群は熟練者群より大きな力を長く加えていました。各群十人の予備的な研究で、一部の指を押さえたまま別の指を動かす課題を使っています。日常の演奏すべてに当てはまる力の数値や、けがを防ぐ練習回数を示した研究ではありません。

自分で確かめるときに、その難しい指の課題を再現する必要はありません。一音を鳴らし、音が続いている間に、指先をさらに押し込もうとしていないかを観察します。鍵盤が戻らないための支えは残しますが、底より下へ押そうとはしません。

使っていない指を高く持ち上げたままにしたり、手の形を保つために握り込んだりしていないかも見てください。「指を独立させる」という目標を、動かさない指を固める課題にしないことが大切です。

音が小さすぎて鳴らない場合は、支えまでなくしていないか、打鍵の動きが途中で止まっていないかを確認します。指を強く押しつける練習と、何も支えない練習の二択にする必要はありません。

5.音を終える動き:力を減らすことと、鍵盤を離すことを分けます

余分な圧力を減らすことと、音を終えるために鍵盤を戻すことは、別の操作です。音を保ちたい途中で鍵盤を戻してしまうと、意図しない短い音になります。ヤマハのアクションの解説では、鍵盤から指を離すとダンパーが弦に戻り、振動を止める仕組みを説明しています。

次の例は、中音域の弾きやすい一音を、ペダルなしで三拍保ち、四拍目の始まりで離す確認です。電子ピアノなら通常のピアノ音色を使います。拍数は、音を保つ時間と休む時間を区別するための例です。決まったテンポや反復回数は設けません。

一音を「保つ」と「離す」に分ける

中音域の一音を、ペダルなしで。無理のない音量で確かめます。

  1. 弾く前

    準備する

    呼吸と弾く鍵盤を確認します。

  2. 1拍目

    音を出す

    鍵盤を下げ、音の出だしを聴きます。

  3. 2・3拍目

    音を保つ

    押す力を増やさず、鍵盤を保ちます。

  4. 4拍目

    離して休む

    拍の始まりで鍵盤を戻し、一拍休みます。

鍵盤を保つ支えは必要です。痛みがあれば中止します。

一拍目で音を出したあと、二、三拍目では音の続きを聴きます。その間に、肩や指をさらに固めていないかを一つだけ確認します。四拍目の始まりで鍵盤を戻し、一拍休みます。休みでは、すぐ次を弾こうとして同じ構えを続けていないかを見ます。

音が予定より早く切れたら、支えを減らすことと離鍵が混ざった可能性があります。次は保持中の鍵盤の位置に注目します。逆に、休符でも鍵盤を押さえたままなら、音を終える時点を先に決め直します。どちらも、力を増やすことだけで解決しようとしないのがポイントです。

一つの変化を、短いフレーズへ戻して確かめます

一音で違いが分かったら、弾き慣れた短いフレーズへ戻します。今日は呼吸、次は音を離す時点、というように観察する対象を絞ってください。五つ全部を監視しながら一曲通す必要はありません。

スマートフォンで見返す場合は、指先だけを大きく映すより、肩、肘、手首、鍵盤の位置関係が分かる角度を選びます。ただし、映像から力の大きさや症状の原因までは測れません。「三つ目の音の前で肩が上がる」「音を離したあとも指を伸ばしたまま」と、見えたことを具体的にメモします。

動きの見た目と一緒に、音の長さ、拍、次の音へのつながりも聴きます。音を聴く観点は初心者の音づくりの記事で、練習の対象を一つに絞る考え方は上達を感じにくいときの練習の見直し方で扱っています。

判断が難しいときは、30分の無料体験レッスンで、気になる短い部分を実際に弾きながら確認できます。どの音の前後で構えるのか、どこまでなら無理なく弾けるのかを伝えると、練習の条件を相談しやすくなります。痛みやしびれなどの症状がある場合は、レッスンでの奏法確認より医療相談を優先してください。

参考資料

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