クーラウのソナチネOp.20-1 第1楽章:音階・伴奏・フレーズの練習
クーラウのソナチネOp.20-1 第1楽章は、音階を速く弾く練習だけでは仕上がりません。冒頭では長い旋律の下で伴奏が動き、ほどなく左右の役割が入れ替わります。軽く歌う場面、短い呼びかけが続く場面、音階が駆け上がる場面。それぞれの違いが聴こえると、この曲の明るさと表情が生まれます。
ここでは第1楽章の全体を見ながら、左手のバランス、音階の進み方、スラーと休符、再現部の変化を譜例で考えます。譜読みを終えた方は、弾けない場所だけでなく、いつも同じ調子に聞こえる場所にも目を向けてみてください。
全80小節の聴きどころ
- 第1〜31小節:明るい主題から、柔らかな歌へ
- 冒頭の伴奏、第9小節から左手の旋律、第17小節のドルチェ、第24小節からの音階。第31小節のあとに繰り返し。
- 第32〜49小節:短い言葉と、変わる響き
- 右手のスラーと休符、第41小節からの左手の音階、冒頭へ戻る前の上昇と下降。
- 第50〜80小節:主題の帰還と、明快な終止
- 第66小節のドルチェはハ長調へ。音階の違いを読み、最後の和音と休符まで聴く。
冒頭の旋律と左手の伴奏
最初の右手は、ド・ミ・ソと上へ進みます。第1小節のドとミは二分音符、第2小節のソは二分音符から八分音符へタイで続きます。一方、左手はド・ソ・ミ・ソの八分音符を繰り返します。下段もト音記号で始まるので、低すぎる音域で読まないように最初に確かめます。
この左手は、和音を「低い音・高い音・中の音・高い音」の順に並べたアルベルティ・バスです。四つの音を一つずつ強く弾くと、右手の長い音が途中で埋もれます。右手のドを鳴らした瞬間だけでなく、その後に左手が動いている間も旋律が残って聴こえるかが、バランスの目安になります。
ハ長調、4分の4拍子。上下ともト音記号で始まります。
譜例は横にスクロールできます。

- 旋律の長さ
- タイで続く音は打ち直さず、そのあとに並ぶ同音と区別する。
- 伴奏の音量
- 右手の長い音が減衰しても、左手の新しい音で覆わない。
私はこの冒頭で、右手だけを弾いてもらってから、左手を重ねたときに何が変わるかを聴きます。右手だけなら伸びやかだったフレーズが、両手になると細かく区切られることがあります。そのときは旋律をさらに強くする前に、伴奏の一音一音が前へ出すぎていないかを確かめます。
左手のド・ミ・ソを一度和音で鳴らし、その響きを保つつもりで元の順番に戻すと、四つの独立した打鍵から一つの和音の動きへ耳を向けられます。これは音を全部ペダルで残すという意味ではありません。指で音を順に交替させながら、響きのまとまりを感じる練習です。
同じ伴奏でも、第4小節ではレ・ソ・ファ・ソへ変わります。右手のドがシへ下がるところと合わせて聴いてください。音量を一定に保つことだけに集中すると、この和声の変化が平らになります。左手を控えめにしながら、フレーズが向かう先は両手で共有します。
タイ、スラー、休符の違い
第2小節のソは、タイの先でも押さえ続けます。そのあとに並ぶ三つの八分音符のソは、それぞれ打ち直す音です。長く続くソから、短いソが動き始める切り替わりを聴くと、単調な同音反復を避けられます。
第4小節では、ドからシへスラーがかかり、そのあとに八分休符、次のシがあります。二つの音の終わりを整え、休符で離してから次の入りを準備します。スラーの終わりをいつも極端に短くすると、四分音符のシの長さが失われます。音の長さを守ったうえで、フレーズの終わりとして重さを収めます。
第5・6小節にも、長い音から短い音へ進み、休符を挟んで次へ入る形があります。ここを小節ごとに停止して覚えると、休符のたびに拍を取り直す癖がつきます。第4小節の終わりから第6小節までをゆっくり続け、離す瞬間にも同じ四拍が流れているか聴いてみましょう。


第8〜12小節:左手が旋律を引き継ぐ
第8小節の後半で左手はヘ音記号へ移り、ソ・ラ・シから第9小節のドへ上がります。そこから左手がド・ミ、続いて長いソを歌い、右手は八分休符から始まる伴奏に回ります。冒頭の「右手を聴き、左手を控える」という関係を、そのまま持ち越せない場所です。
ハ長調、4分の4拍子。下段は第8小節の途中でト音記号からヘ音記号へ変わります。
譜例は横にスクロールできます。

- 第8小節後半から聴く
- ソ・ラ・シを、次のドへ向かう旋律の始まりとして弾く。
- 右手の入り
- 第9小節の最初は八分休符。左手のドのあとに伴奏が加わる。
まず第8小節後半のソ・ラ・シから、第10小節のソまでを左手だけで弾きます。第9小節のドを到着点として聴き、そこからミとソへ一つの線を続けます。次に右手を加えて、左手だけのときに聴こえていた旋律が保たれているかを比べます。
右手の和音が毎回強く出ると、左手の二分音符や全音符は鳴り始めたあとすぐに隠れます。右手の最初の八分休符にも注意してください。両手が同時に弾き始める場所ではなく、左手の入りを聴いてから伴奏が加わる場所です。
第11・12小節まで続けると、左手の線は別の音から同じような長さで進みます。左右それぞれを覚えたあとには、旋律を歌う担当を耳で追いながら弾く時間を取ります。音数の多い手だけに注意を奪われると、この役割の交替が聴こえなくなります。
三連符からドルチェへ
第13小節ではフォルテになり、右手に三連符が現れます。最初の三連符は八分休符から始まるため、最初の音を拍の頭へ詰めないようにします。左手の低音が鳴る位置と、右手が入り始める位置を分けて感じてください。
第13・14小節のミ♭、続く第15・16小節の左手のファ♯は、ハ長調の白鍵だけの響きから色を変えます。速い形として暗記する前に、左手の低音と右手の和音の構成音を一緒に鳴らしてみます。どの響きから次へ移るのかが聴こえると、四小節が同じ強さの三連符の連続で終わりません。
第17小節はピアノ、ドルチェ。ト長調の柔らかな旋律に変わり、右手はシから一オクターブ高いシへ跳びます。高いシを強く突くと、それまでの勢いが残ったままになります。低いシを弾く時点で次の音の場所と音色を思い描き、跳躍のあとも歌の流れを続けます。
第18・19小節では半音の動きが表情を作ります。レ♯からミ、ソ♯からラという進みを、同じ鍵盤間隔の単なる運動として通り過ぎないで聴きます。左手の伴奏を一度薄くし、右手だけでその二音の関係を味わってから、四小節の旋律へ戻すとよいでしょう。
第24〜29小節:音階の方向と指使い
第24小節からは、右手の細かい音階が前面に出ます。ここでは第1小節と違って、左手がずっと八分音符を弾いているわけではありません。低音や和音を鳴らしたあとは休み、右手の動きに空間を渡しています。
上段はト音記号、下段はヘ音記号。4分の4拍子。調号はなく、ファ♯やド♯、ド♮を臨時記号で示しています。
譜例は横にスクロールできます。

- 最初の音
- ソは八分音符。そのあとに続く十六分音符と同じ長さにしない。
- 左手の休符
- 第25小節の和音は3拍目の裏から。休んでいる間も拍を保つ。
第24小節はソの八分音符から始まり、そのあとに十六分音符が続きます。全部を同じ長さで弾くと、最初からリズムが変わります。ゆっくり弾くときにも、最初のソの長さを保ったまま次のラへ進んでください。
指くぐりの直後に親指の音が強く出たり、その前の音が長くなったりする場合は、指が交替する場所を含む四〜六音を取り出します。手を止めて親指だけを遠くへ押し込むより、進む方向へ手の位置も移しながら、次の音を迎えます。短い範囲で音がそろったら、前後の拍を加えて元の音階へ戻します。
譜例の第25小節ではド♯のあと、下降中にドのナチュラルが現れます。ト長調の音階を覚えているだけでは、この一音の変化を取り落とします。さらに第28・29小節では、いったん低い音へ戻ってからもう一度上へ広がる形があります。指番号は単独の音につけるより、どこへ手を運ぶための順番なのかを見て選びます。
私は音階がつまずくとき、最後の到着音までの形を先に聴きます。指の交替だけを何度も練習しても、毎回どこで終わるのかが曖昧なままだと、途中の音に不要なアクセントがつきます。到着音と、そこへ向かう一まとまりの音を確かめてから速さを上げます。
第25小節の左手は前半が休みで、3拍目の裏から三つの和音が入ります。その三つを急がず、右手のファ♯の反復と拍の中で合わせます。右手だけなら整っているのに両手で崩れるときは、この伴奏の入りを先に確かめる価値があります。
第30・31小節は下降して響きを収め、反復記号に戻ります。上へ駆け上がる勢いだけで第一の部分を覚えず、下り始めてから冒頭へ戻るまでを一続きで弾いてみます。
第32〜49小節:短い呼びかけと左手の音階
第32小節からは、右手の短いスラーと休符が目立ちます。たとえばド・シのあとに休符があり、次の呼びかけが始まります。その間も左手の伴奏は動いています。右手の休符で全体まで止まると、会話の間が毎回大きな区切りに変わってしまいます。
左手だけで数小節を続け、次に右手を声で歌って重ねると、伴奏が流れる中で旋律が話しかける感じをつかめます。両手に戻したら、スラーの頭と終わりを全く同じ重さにせず、二音が一つの言葉として聞こえるように整えます。
第39・40小節では、右手の重音の下で左手が半音を含んで下がり、響きに緊張が加わります。そして第41小節からは左手が細かい音階を担当します。冒頭の伴奏とは、同じ左手でも役割が大きく変わります。
上段はト音記号、下段はヘ音記号。4分の4拍子。第41小節のソからの上昇と、第42小節のドからの上昇を比べます。
譜例は横にスクロールできます。

- 左手の行き先
- 上昇の到着音と、そのあとの休符まで一まとまりで聴く。
- 右手のタイ
- 左手の動きにつられて、保っている和音を早く打ち直さない。
第41小節の左手はソから上がり、第42小節ではドからミ♭を含む別の響きへ進みます。二つを同じ指の形として覚える前に、それぞれの音と指番号を読み分けます。右手は二分音符から八分音符へタイで続く和音を保ち、そのあとに短い和音が続きます。左手の速い動きにつられて右手を早く打ち直さないようにします。
左手の音階の終わりには休符があります。走り終えた瞬間に次の小節へ飛び込む癖があるなら、到着音と休符まで含めて練習します。速い音を弾けたことより、そのあとにも同じ拍が残っていることを聴き取ります。
第46小節からは右手の動きが広がり、第48小節のフォルテから第49小節の下降へ進みます。第50小節で冒頭が戻るので、ここは盛り上がりの頂点だけで終わらず、音量を収めて次のピアノへ渡す長さで練習します。
第50小節からの再現部
第50小節で冒頭のド・ミ・ソが戻ります。手が最初の形を覚えていても、前の下降から自然に入れるかは別に確かめたいところです。第49小節の最後の数音から弾き、右手の長いドと左手の伴奏へ落ち着く感触を聴きます。
再現部の後半では、最初にト長調で聴いたドルチェの旋律が、第66小節からハ長調で現れます。第17小節のシから高いシに対して、第66小節はミから高いミへ進みます。旋律の性格は似ていても、鍵盤上の位置と指の順番を読み直す必要があります。
第73小節以降の音階も、前半の形をそのまま手の位置だけで移すと混乱しやすい場所です。第24小節と第73小節、第25小節と第74小節を並べ、始まる音、指の交替、臨時記号を比べます。ハ長調へ戻っても、第74小節にはファ♯が現れます。「最後は白鍵だけ」と大まかに覚えず、前半との違いを音で覚えてください。
最後の和音と休符
第77・78小節の上昇が、第79小節の高いドへ届きます。そのあと、和音は低い音域へ移りながら曲を閉じます。終わりに向かうほど一音ごとに急いでしまうと、せっかくの上昇に結末がつきません。
4分の4拍子。譜例の入りは上下ともト音記号。下段は第79小節の途中、上段は第80小節の前でヘ音記号へ変わります。
譜例は横にスクロールできます。

- 最後の一小節
- 和音のあとにも拍が続く。ペダルで休符を埋めず、離したあとの時間も聴く。
第79小節は、音、四分休符、和音、四分休符という並びです。第80小節の和音のあとにも休符が残ります。最後の和音を鳴らした瞬間に数えるのをやめず、響きを切ったあとの拍まで聴きます。終止の明快さは、音を強く弾くことだけでなく、この離し方からも生まれます。
ペダルを使う場合は、休符に前の和音が残っていないかを確かめます。冒頭の伴奏や細かい音階も、まずペダルなしで音の交替を聴き、そのあと必要な響きを足します。ペダルの量は楽器と部屋で変わりますが、旋律の切れ目や和音の変化を耳で判断する基準は持っておきたいところです。
曲全体を仕上げる練習
通して弾くときは、細かい音の速さだけを採点せず、三つの変化を聴いてみてください。
- 第9小節で、左手の旋律が前へ出るか。
- 第17小節で、フォルテの三連符からドルチェの歌へ音色が変わるか。
- 第49〜50小節で、下降の勢いが収まり、冒頭の表情へ戻るか。
同じテンポでも、この三つが聴こえる演奏には起伏があります。アレグロの速さを決めるときは、最も弾きやすい冒頭だけでなく、右手と左手の音階、休符のあとの入りも含めて選びます。速さを上げた結果、旋律を聴く余裕がなくなるなら、その手前のテンポで全体の表情を磨く時間を取ります。
ソナチネを何曲か弾いていて、どれも「音は合うけれど平ら」という状態なら、ソナチネから先へ進むための練習も参考になります。指番号を曲の流れに合わせて考えたい方には、フレーズと手の移動から選ぶ指使いで、別の例も紹介しています。
池袋・新宿でソナチネを学ぶ
この曲をレッスンに持ってくるなら、音階が崩れる場所だけでなく、響きや歌い方がまだ決まらないところも一緒に扱えます。旋律と伴奏を別々に聴き、指使いや離すタイミングを試してから、前後のフレーズへ戻します。一つの工夫が曲のどこで生きるかを、その場で音にして確かめます。
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