ソナチネで伸び悩んだときに見直したいこと

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

ソナチネを最後まで弾けても、音楽が変わらないと感じるときに。クレメンティOp.36-1の2つの譜例と聴く項目のチェックリストで、拍、旋律と伴奏のバランス、音の終わり、終止、楽章ごとの違いを確かめます。

ソナチネで伸び悩んだときは、弾く回数を増やす前に、何の音を変えたいのかを一つ決めてみましょう。拍が途中で揺れるのか、伴奏で旋律が隠れるのか、フレーズの終わりが聞こえないのか。音符を追う練習から、音同士の関係を聴く練習へ移すと、取り組む場所が具体的になります。

ここではクレメンティ《ソナチネ Op.36-1》の短い譜例を使い、譜読みの先にある課題を確かめます。他のソナチネでも、同じ音型を探すより、旋律と伴奏がどんな役割を持っているかに置き換えて読んでみてください。

電子鍵盤を弾く両手を横から見た写真

音を間違えないことの、その先に目標を置く

「止まらずに最後まで弾ける」は大切な到達点です。その先では、正しい音が並んでいるかに加えて、どの音が聞こえ、どこへ進み、どこで一区切りになるかが課題になります。前より速く弾けなくても、旋律が伴奏に埋もれなくなったなら、演奏の内容は変わっています。

まず、気になっているフレーズを普段の弾き方で弾きます。弾きながら全部を判断しようとせず、下の項目から一つだけ選んで聴いてください。録音を使う場合も、採点するつもりで欠点を探すより、「右手の長い音が最後まで聞こえるか」のように質問を決めると比べやすくなります。

今日は、何を聴いてみる?

まず1項目を選び、聴いて確かめたらチェックします。できた・できないの採点ではありません。

聴いて確かめた項目

チェックは曲の合否ではなく、その日に聴いて確かめたことの記録です。うまくいかなかった項目も、「伴奏を小さくすると拍が止まる」と分かれば、次の練習で見るべき関係が見えてきます。全部を一度に直す必要はありません。

まだ音や指づかいを探すことに注意が取られる部分では、先にその迷いを減らします。練習の焦点そのものが定まらないときは、ピアノの上達が止まったと感じるときの見直し方も参考になります。

第1楽章の冒頭は、左手の休符の間も拍を進める

クレメンティ Op.36-1の第1小節では、右手がド・ミ・ド・ソ・ソと進む一方、左手は最初のドを弾いた後に休みます。左右が同じ密度で動いているわけではありません。左手の音を出す瞬間だけに拍を感じていると、その後の空白で右手が急いだり、次の小節の頭で待ったりしやすくなります。

譜例1:左手が休んでも、右手の流れは続く

クレメンティ Op.36-1、第1楽章・第1小節。音高・音価・休符を中心に示しています。

上段:右手・旋律下段:左手・伴奏

左手のドの後は、四分休符と二分休符。音のない間も、右手の進む速さを保ちます。

音名・音価を文字で確認する

音の高さは中央のドをC4とする表記です。ハ長調、2分の2拍子。二分音符を1拍とします。

上段・右手:C5(四分音符)、E5・C5(各八分音符)、G4・G4(各四分音符)。

下段・左手:C3(四分音符)、四分休符、二分休符。

まずペダルを使わず、右手だけで短いまとまりを弾き、声で一定の間隔を数えます。この譜例の拍子は2分の2拍子です。練習では四分音符を一つの単位として細かく数えても構いませんが、慣れたら二分音符を単位とする二つの拍に戻し、細かな音がその中に収まるように聴きます。

左手を加えるときは、最初のドの後に四分休符と二分休符があることを確かめます。鍵盤を離しても、拍まで止めるわけではありません。右手のミ・ドの八分音符を詰めず、後の二つのソへ同じ流れで進めるかを聴いてください。

ここでの目的は、小節の頭を毎回強く打つことではありません。拍は、次の音が来る位置を内側で保つ支えです。最初の左手だけ大きくなるなら、音量を控えても右手の流れが変わらないかを試します。譜例の1小節だけで終わらず、手元の楽譜で次の小節までつなぎ、入り直す前の間が伸びていないかも確認しましょう。

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第2楽章では、動く伴奏の上に長い音を残す

第2楽章の冒頭は、左右の関係が変わります。右手はドを二分音符で伸ばしてからファへ進み、左手はファ・ラ・ドの三連符を繰り返します。右手の音数が少ないため、左手を正確に並べることへ注意が移り、主役の長い音を聴かなくなりやすい場所です。

譜例2:長い旋律と、動いている伴奏

クレメンティ Op.36-1、第2楽章・第1小節。音高・音価・休符を中心に示しています。

上段:右手・旋律下段:左手・伴奏

右手のドは2拍分。左手の三連符が2組進む間、同じ旋律音を聴き続けます。

音名・音価を文字で確認する

音の高さは中央のドをC4とする表記です。ヘ長調、4分の3拍子。調号はシにフラットです。

上段・右手:C5(二分音符)、F5(四分音符)。

下段・左手:F3・A3・C4を3回。各組は八分音符の三連符で、3音が四分音符1拍分に収まります。

先に右手だけを弾き、ドからファへどうつなぎたいかを歌ってみます。二分音符の間も、次のファを待つだけにせず、その音へ向かう流れを感じます。ピアノの音は自然に減衰するので、伸ばしている間に同じ音を大きくし直すことはできません。だからこそ、後から鳴る左手との関係が大切です。

左手だけでは、三連符の各組が一拍に収まるかを確かめます。三つの音の先頭を毎回強調したり、三つ目のドへ向かって急いだりすると、伴奏の動きが前に出ます。音を小さくするために拍まで曖昧にせず、一定の位置で次の組へ進める音量を探してください。

両手に戻したら、左手の途中で右手のドを耳が追えなくならないかを聴きます。隠れるなら、まず伴奏の音量や突出する一音を見直します。右手を強く叩く、ペダルを増やす、という方法だけで埋め合わせないことが大切です。音のつながりとバランスは、少ない音でも別々に確かめられます。

音の切り方を決めるときは、フレーズの先まで聴く

アーティキュレーションは、音をつなぐ、離す、区切るといった扱いです。「古典派だから全部短く」「旋律だから全部つなぐ」と一律に決めると、同じ音型の繰り返しやフレーズの境目が聞き取りにくくなることがあります。

スラーやスタッカートが書かれている場合は、まず手元の版の記号を確認します。記号や運指は版によって異なることがあるため、別の楽譜や演奏と違うだけで、すぐ誤りとは判断できません。この記事の譜例は音高・音価・休符を中心に示しています。つなぎ方を一つに指定するための譜例ではありません。

短いフレーズを弾き、最後の音が次のまとまりへどう渡るかを聴いてみましょう。最後だけ急に短くしていないか、逆に鍵盤を押さえ続けて次の音と重なっていないか。終わりの音量だけでなく、長さと、その後の間も比べます。どの終わりも同じように弱く、遅くする必要はありません。

片手では区切れていても、両手にすると左手につられて右手まで切れる場合があります。そのときは、左右を同じ動きにそろえることより、それぞれの音が終わる位置を確認します。スラーの終わりで手を大きく上げること自体を目標にせず、実際の音に区切りが聞こえるかを基準にしてください。

終止の響きは、低音と旋律だけでも確かめられる

フレーズをどこへ運ぶか迷うときは、低音を一緒に聴きます。終止とは、和声の進み方によって音楽が一区切りになることです。小節線があるだけで毎回終わるわけではなく、曲の主調以外の響きにいったん落ち着く場合もあります。

例えばOp.36-1の第1楽章、第14〜15小節では、左手のレからソへの動きとともに、右手もソへ着地します。手元の楽譜でその前の流れから弾くと、このソが途中の通過音とは違って聞こえるかを確かめられます。ハ長調の曲だから、すべての区切りがドで終わるとは限りません。

音が多くて響きの移り変わりを聴きにくければ、練習として旋律と低音を残し、伴奏の内側の音を一時的に省いて弾きます。どこで響きが変わり、どこに落ち着くのかを耳で追います。和音名がすぐ言えなくても、同じ響きが続く場所と、進む方向が変わる場所を探すところから始められます。

その後は省いた音を戻し、響きの行き先がまだ聞こえるかを確かめます。低音を目立たせる練習は、仕上げでも低音を常に大きくするという意味ではありません。また、終止を示すたびに大きくテンポを落とす必要もありません。音量、音の長さ、わずかな間の取り方を、前後の音楽と合わせて考えましょう。

楽章が変わったら、拍の感じ方も切り替える

ここで参照した版では、第1楽章が2分の2拍子、第2楽章が4分の3拍子、第3楽章が8分の3拍子と記されています。第2楽章のAndante、第3楽章のVivaceという指示も、同じ種類の動きを同じ速さで続けないための手掛かりになります。

第2楽章では、三連符の一音ずつを数えることだけに集中すると、長い旋律の流れを見失います。三つの細かな音が一拍を作ることを確かめたら、その上で右手の長い音を聴きます。第3楽章では、まず八分音符の位置をそろえ、慣れてきたら小節全体のまとまりも感じてみてください。三つの音をすべて同じ強さで刻む必要はありません。

テンポを上げる基準も、指が間に合うかだけでは足りません。旋律が隠れないか、休符が消えないか、フレーズの境目が聞こえるかを確認します。速くした途端にそれらが失われるなら、いったん聴き分けられる速さへ戻します。全員に共通する完成テンポを決めるより、その曲の性格と現在保てる音楽の両方を見ることが役に立ちます。

この考え方はソナタへ進んでも続きます。モーツァルト《ソナタ K.545》の練習順序でも、音階が弾けることと、伴奏の上で旋律を保てることを分けて扱っています。

1か所の変化を、前後の音楽に戻して確かめる

練習の終わりには、直した小節の少し前から、その後のフレーズまで弾きます。第2楽章の最初のドが聞こえるようになったなら、次の小節へ進んでも伴奏との関係を保てるかを聴きます。そこだけ取り出したときの弾き方が、続けると元に戻ることもあるためです。

最後に、「左手を小さくする」だけでなく、「右手の長い音の途中で、左手の三つ目が飛び出す」といった、聞こえた事実を短く残しましょう。次に練習するとき、何を比べればよいかが明確になります。速さ、音量、音の切り方をまとめて変えてしまうより、一つの変化を聴ける範囲で試すほうが確認しやすくなります。

一方、譜読みそのものに無理がある曲では、表現の課題を聴く余裕がなくなります。必要ならクラシック曲の選び方も見直し、現在のソナチネと、少し負担の軽い曲を組み合わせる選択もあります。教則本の何番まで進んだかだけで、演奏の力を決める必要はありません。

自分では音の違いを判断しにくいときは、取り組んでいるソナチネと気になる小節を、無料体験レッスンでお聞かせください。Vienna Piano Schoolでは、現在の演奏を聴きながら、次に確かめる音と練習方法を具体的に考えます。オンラインは現在受講でき、東京・新宿の対面レッスンは2026年10月からです。体験は30分・無料です。

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