ソナチネで伸び悩むときの練習:拍・音色・フレーズを見直す

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

正しい音を並べるところから、音楽の会話を聴くところへ。クレメンティOp.36-1の実際の譜例で、休符、長い旋律、動く伴奏と終止を確かめます。

ソナチネを最後まで弾けるようになったのに、演奏があまり変わらない。そんなときは、音の間違いを直す練習に加えて、拍、旋律と伴奏、フレーズの終わりを聴いてみましょう。同じ音符でも、何を前に出し、どこまで音を聴くかによって、曲の表情は変わります。

ソナチネでは、右手が休んだあとの左手や、長い旋律音の下で動く伴奏にも耳を向けます。目立つ速い部分を弾けても、こうした場所が一様だと、音楽の会話が聞こえてきません。

ここではクレメンティOp.36-1を使い、次の四つを確かめます。

  • 拍:片手が休んでいる間も、音楽が同じ流れで進むか。
  • バランス:伴奏が動いても、長い旋律を追えるか。
  • 音の終わり:一方の手を離したあと、もう一方の音を聴いているか。
  • 終止:低音と旋律が、どの響きへ落ち着くか。

いま弾いているソナチネにも、似た役割の場所を探してみてください。曲の速さや教則本の番号に加えて、そこで何が聞こえるようになったかを、次の目標にします。

第1楽章:休符の間の拍

冒頭の右手は、ド・ミ・ド・ソ・ソと進みます。左手は最初のドを弾いたあと、四分休符と二分休符で休みます。右手が動き続ける間、左手には音のない時間があります。

左手が休んでも、右手の拍は続く

クレメンティOp.36-1、第1楽章、第1〜4小節。

譜例は横にスクロールできます。

ハ長調、2分の2拍子、Spiritoso。右手はド・ミ・ド・ソ・ソで始まり、左手は最初のドのあと休む。第4小節では、右手の最後の四分休符の間も左手のミ・レが続く。
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第1小節の左手は、ドのあとに四分休符と二分休符。第4小節の最後は、右手が休み、左手が続きます。

まず右手だけで最初の2小節を弾き、細かなミ・ドの八分音符と、その後のソが同じ拍の流れに収まるか聴きます。八分音符の直前で待ったり、ソへ急いだりしていないでしょうか。次に左手を加え、最初の低音が入っても右手の進み方を保ちます。

この譜例は2分の2拍子です。音の位置を調べるときは四分音符で細かく数え、流れを作るときは二分音符を単位とする二つの拍で感じてみます。小節の中を四つに刻み続けた場合と、二つの大きな拍に収めた場合で、右手のまとまりを弾き比べます。

左手の最初のドを大きくすると、そこだけが強い目印になりがちです。低音を控えめに弾いても、その後の拍を保てるか試してください。鍵盤を離したあとも、右手の音が次々に来る位置を感じます。

第3小節では左手のドが2回になり、第4小節では後半に左手の下降する音形が現れます。伴奏の密度が変わった場所で、両手の速さまで変わっていないかを聴きます。最初の小節だけを整えたら、4小節のまとまりへ戻して比べましょう。

第4小節:右手の休みと左手の続き

第4小節の右手は、レ・ド・シ・ラと下がり、ソを弾いたあとに四分休符へ入ります。その休符の間にも、左手のミ・レは続いています。右手を弾き終えた感覚で両手をまとめて離すと、左手の最後が短くなります。

右手だけでソの長さと、その後の休符を確かめます。次に左手の後半を聴きながら両手で弾き、右手が止まっても左手の線を最後まで追います。左右が同時に終わる場所と、片方が続く場所を分けて聴くことが、フレーズの表情になります。

このような区切りは、手を大きく上げる動きだけでは決まりません。音がいつ終わり、そのあとに何が聞こえるかを基準にします。手元の版にスラーやスタッカートがある場合も、記号を見ながら前後の音まで弾いて、区切り方を考えます。

短く弾いた音が鋭く飛び出す場合は、長さと音量を別々に比べます。少し離しても穏やかな音、長く保っても前へ出る音があります。すべてを「つなぐか、切るか」の二択にすると、こうした違いを見落とします。

第2楽章:長い旋律と三連符

第2楽章のAndanteでは、右手の最初のドが二分音符で伸び、そのあとファへ進みます。左手はファ・ラ・ドの三連符を繰り返します。音数の多い左手へ注意が移ると、右手のドを途中から聴かなくなることがあります。

長い旋律の下で、三連符が動く

クレメンティOp.36-1、第2楽章、第1〜3小節。

譜例は横にスクロールできます。

ヘ長調、4分の3拍子、Andante。第1小節の右手はドの二分音符とファの四分音符。左手はファ・ラ・ドの三連符を3組弾く。第2小節の旋律はラからドへ、第3小節はファから始まる。
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右手の最初のドを2拍保つ間、左手は三連符を2組弾きます。動く音を聴きながら、長いドも耳に残します。

右手だけでドからファへの流れを歌い、同じ方向を感じながら弾きます。二分音符の間にも、次のファへ向かう時間があります。ドを弾いた瞬間だけ確認して、残りを待ち時間にしないように聴いてください。

左手だけでは、ファ・ラ・ドの3音が四分音符1拍の中に収まるかを確かめます。三つ目のドが毎回強くなると、伴奏が跳ねて聞こえます。最初のファから最後のドまでを一つのまとまりとして弾き、次の組へ入る間隔も聴きます。

両手に戻したら、最初の右手のドを聴き続けながら、左手の量を変えてみます。ピアノの音は鳴らしたあと自然に減衰するため、長いドの途中で音量を増やすことはできません。その下へ新しく入る左手の音を整え、旋律が残る響きを探します。

左手を小さくした途端に三連符が不ぞろいになる場合は、伴奏だけの音量と拍をもう一度確かめます。小さくても音の始まる位置がはっきりしているか。音量を下げることと、打鍵をためらうことが一緒になっていないかを聴きます。

第2小節では右手がラからドへ進み、第3小節はさらに低いファから始まります。旋律の音域が下がっても、左手との関係を同じ耳で追います。冒頭の高いファだけが目立つ演奏から、低い音にも表情がある演奏へ広げていきます。

ペダルと音の輪郭

このAndanteは、最初にペダルなしで弾くと、指で保っている旋律と、離れている場所がよく分かります。右手のドをどこまで残しているか、左手の三連符がどれほど重なっているかを聴きます。

そのあとペダルを加えるときは、響きを増やしたことで旋律が隠れていないか確かめます。第3小節では左手の音の組み合わせも変わります。前の響きを残す量は、今鳴っている和音と合わせて聴いて決めます。

ペダルを足す前から左手が突出しているなら、まずその音を扱います。指のつながりと左右のバランスが分かったうえで、楽器や部屋に合う響きを選びます。同じ手の中で旋律が和音に埋もれる場合には、右手の声部を弾き分ける練習も参考になります。

第1楽章:ソへ落ち着く終止

フレーズの行き先を聴くには、低音にも耳を向けます。第1楽章の第14〜15小節では、左手のレからソへの動きとともに、右手もソへ落ち着きます。ハ長調で始まった曲ですが、ここではト長調の響きで前半を区切ります。

レの低音から、ソの響きへ

クレメンティOp.36-1、第1楽章、第14〜15小節。

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第14小節の右手はミ・レ・ド・シ・レ・ド・シ・ラの八分音符、第15小節でソの二分音符と二分休符へ。左手は第14小節のレから、第15小節でソ・シ・レ・ソと上がり、低いソと四分休符で終わる。
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右手の細かな音が、長いソと休みへ変わります。左手のレからソへの進行と一緒に、前半の終わりを聴きます。

まず第14小節の右手から第15小節のソまでを弾きます。第15小節のソは二分音符で、その後は二分休符です。直前までの八分音符の動きが、長い音と休みへ変わることを聴きます。

左手は第14小節で高さの違うレを弾き、第15小節では低いソからソ・シ・レ・ソと上がり、再び低いソへ戻ります。この左手を加えると、右手だけで弾いたときより、どこへ着地したかがはっきり聞こえます。

次は数小節前から弾いて、この終止へ向かいます。第15小節だけを特別に遅くする前に、前の音形がどこへ進み、低音がどう支えているかを聴いてみてください。落ち着く場所が分かると、それまでの細かな音にも方向が生まれます。

ほかのソナチネで音数が多い場合は、練習として旋律と低音を取り出して弾きます。響きの行き先を聴いてから、間の音を戻します。和音名を覚えることと並行して、進む感じ、落ち着く感じを実際の音で確かめます。

三つの楽章の性格

この作品は、第1楽章が2分の2拍子、第2楽章が4分の3拍子、第3楽章が8分の3拍子です。拍子とSpiritoso、Andante、Vivaceの指示を見比べると、同じ種類の動きを三つの楽章で続ける作品ではないことが分かります。

第1楽章では、細かな音を二つの大きな拍へ収めます。第2楽章では、三連符の動きの上に長い旋律を保ちます。第3楽章では、三つの八分音符を一つずつ確かめたあと、小節全体の軽やかなまとまりも感じてみます。

テンポを上げるときも、指が間に合うかに加えて、休符、旋律、フレーズの終わりを聴きます。速くすると休みが消えるなら、その音を離す時点まで含めて練習します。伴奏が前に出るなら、速さを戻して左右の関係を試します。

より短い曲で長い音と伴奏を聴きたい場合は、シューマン《メロディー》Op.68-1にも取り組めます。モーツァルトへ進む際には、《ソナタ K.545》の難易度と練習で、音階と伴奏、楽章ごとの課題を見比べてください。

レッスンへ持っていく一つの変化

練習の終わりに、扱った箇所を前後のフレーズへ戻します。第2楽章のドが聴こえるようになったら、次の小節のラへ進んでも同じバランスが残るか。第4小節の休符を直したら、左手のミ・レまで聴いて次へ進めるかを確かめます。

録音を聴く場合も、今日はどの音を比べるかを決めます。「左手を小さくする」より、「右手のドを保っている間、左手の三つ目が飛び出す」という観察が、次に弾くときの手掛かりになります。速さだけでは見えなかった変化を、音で捉えます。

レッスンでは、同じ箇所をいくつかの弾き方で試し、どの違いを自分で聞き取れるかを一緒に考えます。音の探し方から見直したい場合も、すでに弾ける曲を磨きたい場合も、今の演奏が出発点です。

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