ピアノの譜読みが一音ずつ止まるとき:音程・和音・次の拍を読む練習
音符の名前は分かるのに、ピアノを弾くと一音ずつ止まってしまう。そんな譜読みでは、今の音を確かめる作業が、次の音を読む時間まで使っていることがあります。最初の音を見つけたら、その先を「隣へ上がる」「一つ飛ばす」「同じ形が戻る」という関係でも見てみましょう。
私はレッスンで、止まった音だけでなく、その一つ前を聴きます。次の鍵盤を探しているのか、音符の長さに迷ったのか、両手を合わせたところで読む場所を見失ったのか。音名をもう一度言うだけでは、直らない止まり方もあります。
この記事では、短い譜例を使って、次の三つを扱います。
- 横の動き:音の高さを、前の音との関係で読む。
- 縦のまとまり:和音を見つけ、繰り返しと変化を確かめる。
- 次の拍:今の音を弾いている間に、次に必要な情報へ目を向ける。
五線上の最初の音を見つけるところから始めたい方は、初心者の楽譜の読み方をご覧ください。ここでは、その先の「読める音を、音楽の流れの中で使う」練習を進めます。
音名と音程
たとえば、ドからレへ進むとき。二つの音名を読むことに加えて、「隣の音へ上がる」と捉えます。五線では、線上の音から隣の間へ、または間から隣の線へ移ります。この隣り合う音の関係が2度です。
ドからミなら、ド・レ・ミと数えて3度。五線では一つ隣の線どうし、または一つ隣の間どうしになります。まず出発点のドを読み、次の音が上向きの3度だと分かれば、毎回五線の下から数え直さずに進めます。
ただし、五線上の形と鍵盤上の距離は、調号や臨時記号も含めて読みます。ドとミも、ドとミ♭も3度ですが、響きと鍵盤の位置は変わります。形を見たあとに記号を落とさないことが大切です。調号と臨時記号の読み方では、その有効範囲を譜例で説明しています。
バイエルの4小節
次は、バイエルOp.101第7番の生徒パート、冒頭4小節です。上下ともト音記号で書かれています。右手は中央のドより1オクターヴ上のド、左手は中央のドから始まります。両手は1オクターヴ離れ、同じ音名で動きます。
バイエルOp.101第7番、生徒パート、第1〜4小節。上下ともト音記号です。
譜例は横にスクロールできます。

第1・3小節
ド → レ → ミ → ファ
隣の音へ、一つずつ上がる。
第2・4小節
ソ → ファ → ミ → レ
隣の音へ、一つずつ下がる。
小節線の前後はファからソへ。形をまとめて見ても、拍の流れは続きます。
最初の右手はド・レ・ミ・ファ。次の小節はソ・ファ・ミ・レです。第3・4小節は、この二つの小節を繰り返しています。一音ずつ読むと片手で16個の音ですが、動きとしては「上がる形、下がる形、その繰り返し」が見えてきます。
まず最初のドを見つけ、続く3音が隣へ上がっていることを確かめます。次に第2小節のソを見て、そこから隣へ下がる形を読みます。小節の境目では、ファからソへ一つ上がります。小節線があっても、音の動きは続いています。
左手も、ド・レ・ミ・ファ、ソ・ファ・ミ・レです。譜面上で二つの段を見比べ、同時に鳴る音が縦にそろっていることを確認します。右手と左手の出発点を鍵盤で見つけたら、短い範囲を両手で弾いてみます。
この譜例では、左右の同じ指番号が一緒に動くわけではありません。右手の最初のドは親指、左手の最初のドは小指です。音の並びと指の動きを混同せず、それぞれの手で上がる・下がる感触を確かめます。


同じ形と、変わる場所
繰り返しを見つけたら、戻ってきた形の最初の音とリズムを照合します。このバイエルでは、第1小節と第3小節が同じで、第2小節と第4小節も同じです。最初の2小節で読んだ関係を、次の2小節にも使えます。
ほかの曲では、よく似た形が一つ高い場所から始まることがあります。そのときは、出発点を読み直し、同じ動きがどこまで続くかを見ます。最後の音だけ違う、途中に♯がある、長さが変わる。そうした差に印を付けると、同じところ全部へ音名を書くより、目を向ける場所が絞られます。
弾いたあとには、予想した形と実際の音が合っていたかを聴きます。上がると思ったところで同じ音が続いたなら、楽譜と鍵盤を見直します。形で読む練習にも、出発点と変化を確かめる耳が必要です。
和音を縦に読む
和音では、同時に鳴る音のまとまりを見ます。ブルグミュラー《アラベスク》Op.100-2の冒頭は、左手だけで始まります。下のヘ音記号の段に、ラ・ド・ミが縦に重なり、同じ和音を繰り返しています。
ブルグミュラー《アラベスク》Op.100-2、第1〜4小節。
譜例は横にスクロールできます。

- 縦:ラ・ド・ミ
- 三つの音を一緒に弾く和音。次の和音も同じ高さ、同じ形です。
- 横:休みから音形へ
- 右手の2小節の休みを数え、その間に第3小節の入りを読みます。
最初は下からラ・ド・ミと読み、鍵盤で位置を確かめます。ラからド、ドからミは、それぞれ3度。譜面では、線上の音が一つおきの音名で積み重なっています。この三つで、イ短調のラ・ド・ミの和音になります。
次の和音を見ると、音の高さも並びも同じです。新しい三つの音として全部読み直す代わりに、同じ形であることと、次に鳴らす拍を確かめます。右手が入ってからも、表示した範囲では左手の和音は変わりません。その間に、右手の動きを読む時間を作ります。
さらに先で和音の一部が変わったら、残る音と動く音を分けて見ます。たとえばラ・ド・ミからラ・レ・ファなら、下のラは残り、上の二つが一つずつ上がります。三つの音を毎回ばらばらに探すより、前の和音からの動きとして捉えます。
この譜例で見たいのは、曲全体を速く弾くことより、左手の同じ形と右手の開始位置です。右手は2小節休み、第3小節から入ります。休符の間も2拍子を数え、左右のどちらが次に鳴るかを読みます。作品のリズムや仕上げ方は、《アラベスク》の練習ガイドで詳しく扱っています。
一つ先の拍を見る
先読みは、いつも1小節先へ目を飛ばすことから始める必要はありません。バイエルの譜例なら、最初のドと次のレを見てから弾き始め、レを弾いている間に、その先のミ・ファへ目を向けてみます。音の多い曲では、次の一つの和音を捉えることから始めます。
今鳴っている音が合っているか、音符と鍵盤を長く見比べていると、次へ進む時間がなくなります。最初の位置を準備したうえで、弾いた音は耳でも確かめます。譜面を見る時間を、次の高さやリズムを知るために使います。
長い音や休符も、先を見る場所になります。《アラベスク》冒頭の右手の休みでは、入る音と、その音形の向きを先に確認できます。ただし、目が先へ進んでも、数えている拍は現在の場所に残します。次の音が分かった勢いで、早く弾き始めないように聴きます。
先を読もうとすると今の音が抜ける場合は、範囲を小さくします。2小節まとめて見ようとしていたなら、次の2音へ。拍をゆっくり取り、どこまで見た状態なら音楽が続くかを探します。譜面の密度が違えば、見ておく範囲も変わります。
鍵盤を見たあとの戻り先
跳躍などで鍵盤を見たあと、楽譜のどこへ戻るか分からなくなることがあります。その場合は、目を下げる前に、次に読む小節と拍を確かめます。小節線、休符、長い音など、戻る場所の目印を使います。
同じ位置の中で動くバイエルの譜例なら、最初の鍵盤を確かめてから、短い間だけ楽譜を見て弾いてみます。毎音鍵盤を見る動きが減ると、譜面上のつながりを追う時間が生まれます。一方、広く移動する曲では、必要な位置確認も含めて視線を考えます。
楽譜と鍵盤の往復を減らしたいからといって、覚えた指の動きだけで通してしまうと、読み方を確かめにくくなります。ときには第3小節など途中から始め、最初の音と、その先の形を楽譜から見つけてください。
止まって直す時間と、流れを読む時間
新しい曲を学ぶときは、音や指使いを立ち止まって確かめます。それとは別に、短い範囲を一定の拍で読む練習も作ります。前者では正確な内容を調べ、後者では次の音へ進む読み方を試します。
バイエルの4小節であれば、まず迷う音を確認します。そのあと、弾ける速さで4小節を続け、どこで拍が伸びたかを聴きます。終わってから、その場所の一つ前へ戻ります。止まった音だけを繰り返すと、そこへ入る読み方が残ったままになることがあります。
両手にすると読む余裕がなくなる場合は、右手と左手をそれぞれ確認し、同時に鳴る場所を見てから合わせます。片手で覚えきるまで繰り返すことより、どの情報を両手で見失うのかに耳を向けます。指が追いつかない部分では、速さや弾く範囲も調整します。
次の譜例へ移る目安
同じ短い譜例を何度も弾くと、やがて音を覚えます。その段階では、別の初めて見る譜例にも同じ読み方を使ってみます。狭い音域、単純なリズム、少ない和音など、目で追う余裕のある曲を選びます。
確かめたいのは、最初の音を自分で見つけられるか、上がる・下がる形を追えるか、変わる場所に気づけるかです。完成までの日数だけでは見えにくい、譜読みの中身を聴きます。難しい曲を仕上げる練習と、初めての短い譜面を読む練習を、別の曲で持つこともできます。
レッスンでは、初めて見る短い譜面と、いま練習している曲の両方を使って、どこで読む流れが止まるかを確かめます。音名、リズム、両手、鍵盤の位置を聴き分け、その場で読み方を変えて試します。
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