ピアノのレッスンで同じ注意を受けるとき:家での練習を変える方法
レッスンでは音が変わったのに、家で弾くと元に戻ってしまう。翌週も「旋律をもっと聴いて」「ここを急がずに」と言われる。練習している大人にとって、これは気になることです。
同じ注意が続くときは、先生の言葉を、家で自分が聴き取れる音に置き換えるところから始めます。「歌って」という言葉を覚えるだけでなく、どの音からどの音へ歌が続き、伴奏が入ると何が変わったのかを捉えます。
持ち帰りたいのは、次の三つです。
- 楽譜のどこで、どんな音を目指したか。
- 自分で弾いたとき、何を変えるとその音に近づいたか。
- まだ再現できないのは、どの部分か。
説明のあとに音が変わったら、自分でもその違いを聴いているか確かめます。先生の合図に反応できることと、自分の耳で音を選べることには違いがあります。
「もっと歌って」を音にする
「歌って」「軽く」「流れを止めないで」。こうした言葉には、先生がその場で聴いてほしい音が含まれています。ただ、家の楽譜に同じ言葉が書いてあっても、そのときの響きまで戻ってくるとは限りません。
たとえば「右手を歌わせる」と言われたとします。最初の音を強くすることなのか、長い音の先までフレーズを聴くことなのか。左手の音が重なる場所で旋律が埋もれているのかもしれません。まず、問題になっている一つの場所を先生と確かめます。
「このミから次のシまで、旋律を続けて聴くということですか」と尋ね、そのつもりで弾いてみる。言葉の意味が、楽譜の音と自分の演奏に結び付きます。先生が求めている音と、自分が受け取った音に違いがあれば、そこで話し合えます。
譜例:旋律が伴奏に隠れるところ
ブルグミュラー《アラベスク》Op.100-2の第12〜13小節を見てみましょう。細かく動くのは左手です。その上で、右手は長い音を保ちながら、ミからシ、ドからラへと旋律を進めます。
イ短調、4分の2拍子。上段はト音記号、下段はヘ音記号の続きです。
楽譜は横にスクロールできます。

- 上段:長い音の続きを聴く
- ミの響きを聴きながら、シ、次の小節のドへ。左手が動いても、その行き先を保ちます。
- 下段:休符で役割を渡す
- 左手の最後の八分休符で、右手のシが鳴ります。左手と一緒に旋律まで切らず、次へ続けます。
第12小節の右手のミは付点四分音符です。左手のソ♯・ラ・シ・ラという十六分音符と、続くソ♯の八分音符の間、右手の音は続いています。左手が最後の八分休符に入るところで、右手はシへ移ります。
ここで「右手を聴いて」と言われたら、ミを弾いた瞬間だけに注意を向けず、その響きが左手の動きの中に残っているかを聴きます。右手だけでミからシ、次の小節のドまで弾くと、短い旋律の行き先が見えてきます。
先生が左手を弾き、学習者が右手を受け持つ方法もあります。伴奏の中で旋律を聴いてから、自分で両手を弾きます。左手を加えたとたんにミの響きが意識から消えるなら、二つの手に注意が分散したのか、左手の打鍵音が強くなったのかを聴き分けます。
また、この場所では左手の休符も大切です。右手のシと次のドを聴くために、左手は書かれたところで離します。両手を一緒に切ってしまうと、旋律まで途切れます。左右の役割を分けることが、「歌わせる」という指示の中身になります。
曲全体の拍や左右の交代については、《アラベスク》の練習ガイドで扱っています。ここでは、この二小節で受け取った助言を家へ持ち帰ってみます。
楽譜に残す短いメモ
レッスン中にたくさん書いても、あとで読んだときに何を聴くのか分からなければ、練習は元の弾き方へ戻りがちです。譜面には、次に弾くときの耳を導く言葉を残します。
先生の言葉から、家で使うメモへ
レッスン中の言葉
「右手をもっと聴いて」
第12小節のそばに
「ミの先のシまで聴く。左手の休符でも歌は続く」
練習後の一行:「右手だけでは続いた。両手では、左手の最後のソ♯が強くなった」
「右手」という語だけよりも、「ミの先のシまで聴く」と書いた方が、この場所での目的が伝わります。さらに「両手で弾くと左手の最後の音が強くなる」と気付いたなら、それも練習ノートに添えます。先生の指示と、自分が弾いて発見したことが並びます。
楽譜への書き込みは、音符、休符、指番号を読める位置に。長い説明は別のノートへ移し、譜面には短い言葉を置きます。毎回ページ全体を読み直すより、弾き始める前にその一言を見て、目指した響きを思い出します。
一つの小節に「脱力」「拍」「歌」「左手」と注意が重なった場合は、今回の練習で何を中心に聴くかを選びます。旋律の続きが聴けたあとで、拍の流れも確かめる。すべてを同時に直そうとすると、実際に変わった音を見失いやすくなります。
翌日の最初の一回
家での練習では、何度か弾いて調子が出てからの演奏だけでなく、翌日の最初の一回にも耳を向けます。楽譜のメモを見て、旋律を頭の中で歌い、弾いてみる。その時点で何が残っているかが分かります。
《アラベスク》なら、第12小節から右手の歌を思い出し、そのあと両手で弾きます。ミの響きを聴き続けられたか。左手の休符で右手まで離していないか。うまくいかなかった場合も、前日の練習を最初から全部繰り返す前に、どこで音が変わったかを見つけます。
短い部分で取り戻せたら、その前の小節から入り、次のフレーズへ進めます。部分練習では歌えていても、前の音形から勢いよく入ると左手が強くなることがあります。その場合、課題は旋律の弾き方だけでなく、その場所への入り方にもあります。
録音を使うなら、確かめたい範囲を短く残します。聴き返すときの問いも一つに絞ります。「間違えていないか」だけで聴く日と、「右手の長い音が聞こえるか」で聴く日では、気付くことが変わります。録音の出来を採点するより、次の一回で何を試すかを決めるために使います。
家のピアノで確かめる音
レッスンのグランドピアノと、家のアップライトや電子ピアノでは、響き方や鍵盤の感触が違います。教室でうまくいった打鍵の感触だけを再現しようとすると、家では旋律と伴奏のバランスが変わることがあります。
持ち帰る中心は、音同士の関係です。伴奏が動いても旋律を追えるか。長い音のあとに来る次の音が、急に飛び出していないか。電子ピアノなら普段使う音量やヘッドホンで、まずその関係を聴きます。自宅の楽器でどんな違いが出たかも、次のレッスンで話す材料になります。
たとえば「教室では右手が聞こえましたが、家では左手を加えると消えます」と伝えれば、同じ指示をもう一度受け取るだけでなく、家で起きていることを一緒に考えられます。楽器の違いがある中でも、耳で探せる手掛かりを増やしていきます。
先生に聞きたいこと
先生の演奏を聴いて「きれいだ」と感じたら、その中の何を自分でも試したいのかを言葉にしてみます。「最初の音より、次の音が柔らかく聞こえました」「左手が入っても旋律が残っていました」。自分の耳で受け取ったことを伝えると、その違いを生む弾き方へ話を進められます。
説明を聞いたあとの演奏を録り、聴こえた違いを言葉にしてみます。もう一つの弾き方とも比較すると、自分で選べる音と、まだ再現しにくい音が分かります。
示範を録音して家で聴きたい場合は、先生に確認し、役立つ短い部分を残します。録音を再生するだけで終えず、そのあと自分で弾き、何が同じで何が違ったかを聴きます。分からなかった点は、次回の質問にします。
次のレッスンへ持っていくもの
次回は、仕上がった演奏に加えて、練習で見つけた違いを持っていきます。「右手だけなら歌えた」「両手でも遅いテンポなら続いた」「前の小節から入ると切れた」。この三つは、同じ二小節についての別々の情報です。
先生の前で、できた弾き方と難しかった弾き方の両方を試してみると、次に扱う場所がはっきりします。取り組むのは、左手の音量かもしれませんし、旋律を聴いたまま手を動かすことかもしれません。少し前から弾き始める練習が必要な場合もあります。
同じ言葉をもう一度言われても、前回と同じ段階とは限りません。右手だけで分かったことが両手へ移り、短い部分でできたことが曲の流れの中へ広がる。その変化を、実際の音で確かめていきます。練習の進め方全体を見直したい方は、初心者の練習で起こりやすい五つのことも参考にしてください。
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