ペツォルトのメヌエット BWV Anh.114:フレーズ・拍・左手の練習

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

音を覚えたあとのメヌエットを、もっと生き生きと。三拍子の歩み、二つのフレーズの着地、後半の響きと左手の声を、六つの譜例でたどります。

ト長調の《メヌエット》BWV Anh.114は、音を覚えたあとに面白くなる曲です。同じ「ソ・ソ」でも二つの音の重さは変わり、右手が長く伸ばしている間に左手が次の行き先を示します。両手を間違えずに合わせるところから、踊るような三拍子と、まとまりのあるフレーズへ進んでみましょう。

最初に聴きたいのは、次の三点です。

  • 拍:四分音符と八分音符が混ざっても、一小節の三拍が保たれているか。
  • フレーズ:第8小節と第16小節の終わりに、違う表情があるか。
  • 左手:旋律を支えながら、自分の音の長さや動きを歌えているか。

「バッハのメヌエット」とペツォルト

この曲は『アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳』に収められているため、「バッハのメヌエット」として親しまれてきました。現在はクリスティアン・ペツォルトの作品として扱われています。楽譜を探すときは、作曲者名に加えてト長調、BWV Anh.114という表記を確かめると、同じ音楽帳の別のメヌエットと区別できます。

全32小節で、前半の第1〜16小節と後半の第17〜32小節をそれぞれ繰り返します。前半の旋律を覚えたら、後半も早めに読み始めましょう。高い音域への移動、ドのシャープ、左手で二つの声を弾く箇所など、後半には別の面白さがあります。

ここでは冒頭のレを第1小節として数えます。お手元の版にある指番号やスラーも見ながら、以下の譜例と音の動きを照らし合わせてください。

三拍子と八分音符

冒頭の右手は「レ、ソ・ラ・シ・ド」と五つの音を弾きますが、五拍ではありません。レが一拍、ソ・ラが一拍、シ・ドが一拍です。最初のレを短くすると、八分音符の流れが早く始まり、小節全体が前のめりになります。

第1〜4小節:三拍の中で旋律が上がる

ト長調、4分の3拍子。右手の五つの音が、一小節の三拍に入ります。

譜例は横にスクロールできます。

第1小節は右手レの四分音符とソ・ラ・シ・ドの八分音符。左手はソ・シ・レの二分音符とラの四分音符。第3〜4小節では右手が高いソまで上がる。
譜例を大きく開く

右手を弾きながら「いち・と、に・と、さん・と」と数えてみます。レは「いち・と」の間続きます。次のソからは一つの言葉に一音ずつです。第2小節のレ・ソ・ソに来たら、一音をそれぞれ「いち・と」「に・と」「さん・と」の長さで弾きます。

五つの音、三つの拍

1拍目

レ

四分音符

いち・と

2拍目

ソ・ラ

八分音符二つ

に・と

3拍目

シ・ド

八分音符二つ

さん・と

左手:ソ・シ・レを二拍
ラを一拍

三つの枠は同じ長さ。二拍目で左手の和音を弾き直しません。

左手の冒頭は、ソ・シ・レの和音を二拍保ち、三拍目でラへ進みます。右手が細かく動き始める二拍目にも、左手は最初の響きを保っています。両手の音をすべて一緒に切り替えようとすると、この二分音符が短くなります。

私はこの曲で、一拍目を強く叩くよりも、二拍目と三拍目がどこへ向かうかを聴きます。「強・弱・弱」を三つの独立した音量にしてしまうと、かえって歩みが重くなるからです。まず三拍を等しい長さで感じ、その上で一小節を一つの小さな弧として弾いてみてください。

速さは、第21小節の六つの八分音符も同じ拍の中で弾けるところから選びます。冒頭だけ弾きやすい速さで始め、後半で急に遅くなるなら、後半を基準に全体のテンポを見直します。拍と音の長さがまだ混ざる場合は、初心者の楽譜の読み方も参考になります。

旋律の山と同じ音の言い方

第1小節のソ・ラ・シ・ドは、第2小節のレへ上がっていきます。レに着いたあと、旋律は低いソに戻り、もう一度ソを弾きます。五つの音を均等に並べる練習の次には、この「上がる、着く、戻る」という動きを耳で追いましょう。

第2小節の二つのソは、両方を同じ強さで押し直すと平板になります。最初のソから次のソへ、言葉の終わりを整えるように弾いてみます。ただし、最後のソを急いで短くしてしまうと三拍目が消えます。音の重さを減らすことと、拍の長さを縮めることを分けて聴いてください。

第3〜4小節では、旋律がさらに高いソまで上がります。第1〜2小節を小さな問い、第3〜4小節を少し広がった応答として歌ってみると、同じ形の繰り返しにも方向が生まれます。各小節の頭を全部同じ音量にするより、四小節でどこへ向かうかを先に決めるほうが、この旋律の明るさが出ます。

スラーやスタッカートは、版によって付け方が異なることがあります。弾いている版の指示を読み、旋律を声でも歌ってみましょう。音を離す場所では、次の音を迎える短い呼吸を作ります。すべての四分音符を一律に短く切ると、旋律の長い流れまで細切れになります。

開いた楽譜が置かれた黒いピアノの鍵盤

第8小節と第16小節の着地

前半には、似た長さでありながら違う終わり方をする二つのまとまりがあります。第8小節の右手はラ、第16小節はソで落ち着きます。左手も一緒に聴くと、その違いがはっきりします。

二つの着地を聴き比べる

ト長調、4分の3拍子。上段はト音記号、下段はヘ音記号。

第7〜8小節:ラに着き、先へ続く

譜例は横にスクロールできます。

第7小節の右手はファ♯、ソ・ラ・シ・ソ。第8小節は小さなシからラの付点二分音符へ。左手はレのあと低いレ・ド・シ・ラと動く。
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第15〜16小節:ソへ帰る

譜例は横にスクロールできます。

第15小節の右手はラ、シ・ラ・ソ・ファ♯。第16小節はソの付点二分音符。左手はド・レ・低いレからソの二分音符と低いソの四分音符へ進む。
譜例を大きく開く

第7小節では、左手がレ・シ・ソと一拍ずつ下降します。続く第8小節はレで始まり、そのあと低いレからド・シ・ラと動きます。右手がラを伸ばしている間も、音楽は止まっていません。左手の最後のラから、第9小節のシへ続く動きまで弾いてみましょう。

第15小節では左手がド・レ・低いレと進み、第16小節のソに到着します。右手もソへ着くため、第8小節より「帰ってきた」という感覚が強くなります。第7〜8小節と第15〜16小節を続けて弾き、二つの終わりを聴き比べてください。和声の名前を覚える前にも、この開いた感じと落ち着いた感じは耳で捉えられます。

長い音の間は、左手の一拍ずつを聴きます。右手の指だけを見ていると、付点二分音符を二拍ほどで終えたり、次のフレーズの準備のために余分な間を入れたりしがちです。第16小節を三拍保ってから、同じ歩みで冒頭へ戻ると、繰り返しが自然に始まります。

後半の高い音とドのシャープ

第17小節は高いシから始まります。前半最後のソから鍵盤上で大きく位置が変わるので、前半を終えてから急に音を探すと間が空きます。第16小節の響きを保つ間に次の位置を見て、第17小節のシを内側で歌ってから弾いてみましょう。

第17〜21小節:高いシから、新しい響きへ

調号はファ♯。第20〜21小節では、ドにもシャープが付きます。

譜例は横にスクロールできます。

後半は高いシから始まり、各小節の最初の音がシ・ラ・ソと下降する。第20小節はド♯、シ・ド♯、ラ。第21小節はラ・シ・ド♯・レ・ミ・ファ♯の八分音符。
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高いシは、後半の新しい出発点です。そこからソ・ラ・シ・ソ、第18小節ではラからレ・ミ・ファ♯・レと進みます。音型は似ていますが、出発音と着地点が下がっていきます。手の形を覚えるだけでなく、各小節の最初の音をシ・ラ・ソと歌うと、広い音域の中でも旋律の骨格が見えます。

第20小節のドにはシャープが付きます。同じ小節の後半に戻ってくるドもシャープです。第21小節にもド♯があり、旋律はレの響きへ向かいます。第24小節では右手がレを伸ばし、左手の三拍目にドのナチュラルが現れます。そこから、ト長調へ戻る後半の流れを聴いてみてください。

第21小節は八分音符が六つ並びます。ここだけ六拍のようにゆっくり弾いたり、逆に指の勢いで駆け抜けたりせず、「ラ・シ/ド♯・レ/ミ・ファ♯」と二音ずつ三拍に置きます。次の第22小節のソまで続けて練習すると、上行の到着点がはっきりします。

左手の二つの声

第25〜26小節では、左手の譜面に上向きと下向きの符尾があります。同じ手が二つの声を担当している印です。第25小節は下のシを二拍保ち、二拍目に上のレが加わります。三拍目で下のシを弾き直しても、上のレは続いています。

第25〜26小節:左手の音を別々に保つ

上段はト音記号、下段はヘ音記号。ト長調、4分の3拍子。

譜例は横にスクロールできます。

第25小節、左手の下の声はシの二分音符とシの四分音符。上の声は四分休符のあとレの二分音符。第26小節は下の声がド、上の声がミで、同じリズム。
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まず下の声だけで「シを二拍、シを一拍」と弾き、次に上の声だけで「一拍休み、レを二拍」と弾きます。二つを重ねると、鍵盤を押す時点と離す時点が別々になるのを感じられます。第26小節は同じ仕組みで、下がド、上がミです。

ここでペダルを使って全部の音を残すと、どの指がどの声を保っているかが聞こえにくくなります。最初はペダルを外し、二拍目の上の音を保ったまま三拍目の下の音を弾き直します。前後の移動も含めて指番号を選び、指を残すために手全体が固まっていないかを見ます。

右手が入ったら、左手の上の音を強く目立たせすぎないように聴きます。二拍目に新しい響きが加わることは大切ですが、旋律は右手にあります。私はこの箇所で、まず右手を歌いながら左手を弾いてみます。左手の仕組みと、曲の中での役割を同時に聴けるからです。同じ手の中で旋律と伴奏を弾き分ける練習では、声ごとの音量にも詳しく触れています。

装飾音と最後の四小節

譜例の第3小節や第5小節には、細かな波形に縦線を添えた装飾記号があります。ここでは主音から下の隣の音へ触れ、主音へ戻るモルデントです。たとえばドに付いていれば、ド・シ・ドという動きを短く入れます。まず記号のない骨格の旋律を拍どおりに弾き、その同じ時間の中へ装飾を加えます。

第8小節にはラの前に小さなシが書かれています。このシだけを急いで押し込み、肝心のラが弱く抜けないように、シからラへの表情を聴きましょう。装飾の入り方や細かな長さは、使う版とフレーズの解釈を含めて考えます。装飾を入れたために後続の音が遅れるなら、前の小節から続けて拍を確かめます。

第29〜32小節:低音の動きまで聴く

上段はト音記号、下段はヘ音記号。調号のファ♯が有効です。

譜例は横にスクロールできます。

第29小節は右手レからシへの八分音符の上行。左手のレは三拍続き、三拍目にファ♯が加わる。第32小節は右手がソ・シ・レの和音を伸ばし、左手がソ・レ・低いソと下がる。
譜例を大きく開く

第29小節の右手は、低いレから六つの八分音符で上がります。左手では低いレが三拍続き、その上に三拍目でファ♯が加わります。右手の上行に合わせて左手のレまで弾き直さず、続く低音の上で音が増える響きを聴いてください。

第30小節の装飾、第31小節のシ・レからソ・ファ♯、そして最後のソへ進む間も、三拍子の歩みを保ちます。最後の右手の和音を押さえたところで演奏が終わった気になると、左手のソ・レ・低いソが雑になります。低音が下りきるまで、一つの終わりとして歌いましょう。

一曲として仕上げる

細部を練習したあとは、前半の16小節、後半の16小節をそれぞれ続けて弾きます。録音では、まず旋律だけを追って聴いてみてください。第4小節の高いソ、第8小節のラ、第16小節のソが全部同じ表情になっていないか。後半の高い音域に入ったところで、音色や呼吸に変化があるか。正しい音の先に、聴きたいことが増えてきます。

次に左手を聴きます。長い音を必要なところまで保ち、動く箇所では次の和音へ向かっているか。右手の間違いを直すために何度も最初から弾くより、左手が活躍する第7〜9小節や第25〜26小節を取り出すほうが、曲の印象を大きく変えることもあります。

このメヌエットの次の曲を探すときは、初心者向けクラシック曲の選び方もご覧ください。同じ曲をもう一段深く弾くことも、次の曲へ進むことも、現在の課題に合わせて選べます。

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