ブラームス《間奏曲》Op.118-2の難易度と練習:旋律・内声・ペダル

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

穏やかな速さの中に、声部の弾き分けや複雑なリズムを持つブラームス《間奏曲》Op.118-2。4つの譜例を使い、冒頭の歌から中間部の対話、主題の変化、最後の余韻まで、耳で確かめながら練習する方法を考えます。

ブラームス《間奏曲》Op.118-2の難しさは、旋律を歌いながら、その下で動く内声と低音を弾き分けることにあります。穏やかな速さでも、同じ手の中で音の長さや強さを変え、中間部では左右の異なるリズムを保ちます。音符を追える段階から、声部を聴いて演奏を組み立てる段階へ進みたい方に、深く取り組む価値のある曲です。

私はこの曲を聴くとき、まず旋律が長い音から次の音へどう進むかに耳を向けます。和音をきれいに鳴らしていても、その間に歌が止まると、音楽が小さな響きの連続になってしまうからです。冒頭だけでなく、中間部と主題が戻るところまで見渡すと、必要な練習も変わります。

最初に見る場所は、次の3か所です。

  • 冒頭:右手の旋律を保ちながら、内声と左手の動きを加えられるか。
  • 第49小節から:左手の3連符と右手のリズムを分け、下の声部にも耳を向けられるか。
  • 第77小節から:冒頭と似た音楽の中で、変わった旋律や強弱を読み取れるか。

難易度と取り組む目安

この曲は、速く指を動かす力だけで難易度を判断すると、実際の負担を見落とします。和音の中の1音を長く保ち、その下の音を動かすこと。広い左手の音型を運びながら、右手の歌を聴くこと。ペダルで響きを豊かにしつつ、和声の変化を伝えること。こうした力を同時に使います。

譜読みの目安になるのは、旋律と低音を別々に取り出し、それぞれを拍の中で弾けるかどうかです。そのうえで数小節を両手に戻し、旋律のつながりに注意を向けてみます。毎回ほぼすべての音を探し直しているなら、今は音を読む負担が大きい状態です。もっと短く、声部の少ない曲で読譜とバランスを育てる方法があります。

一方、音は読めるのに平板に聞こえる、左手が重くなる、長いフレーズが続かないという悩みは、この曲のレッスンで掘り下げられる課題です。「弾ける・弾けない」の二択より、どこまで耳で聴きながら練習できるかを見ます。

ソナチネなどを経験していても、その曲数だけで準備が決まるわけではありません。例えば同じソナチネでも、旋律と伴奏の音量を分けて仕上げてきたか、音を覚えて通すことが中心だったかで、ブラームスへの入り方は変わります。中級者のクラシック選曲では、伸ばしたい力に応じた曲の選び方を紹介しています。

冒頭の旋律と内声

冒頭の短い弱起は、右手の上の声がド♯・シと動き、次の小節のレへ進みます。ここを「小さな2音、それから和音」と分けると、レに着いたところで歌が止まりがちです。まず上の旋律だけを弾き、弱起から長い音へ向かう息の長さを聴いてください。

冒頭:長い旋律と、その下の動き

弱起〜第5小節

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イ長調、4分の3拍子の冒頭。弱起の旋律ド♯・シに続き、第1小節のレが2分音符で伸びる。その下で内声と低音が動く。
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旋律

弱起のド♯・シから、長いレへ。最初の和音に着いたあとも歌を続けます。

内声・低音

長い旋律を聴きながら、次に鳴らす音の量と、離す音の時点を確かめます。

第1小節では、右手のレが2分音符で続きます。その下にはファ♯があり、さらに下の音と左手の動きが加わります。上のレを十分に響かせてから、後続の音でその響きを覆わないようにします。長い音を保持している指へ力を足し続けても、鳴り始めた音がその分大きくなるわけではありません。次に鳴らす音の量と、鍵盤を離す時点が聴こえ方を左右します。

私はまず、旋律を弾いたときの音色を覚え、そのまま内声を加えて比べます。和音にした途端に旋律の出だしが硬くなるなら、上の音をさらに叩く前に、内側の音をどれくらい鳴らしているか聴きます。内声が静かになるだけで、旋律の輪郭が戻ることもあります。

ただし、内声を曲全体で消すように弾くと、ブラームスの和声の動きまで薄くなります。例えば第3〜4小節へ進むところでは、下の音が変わることで同じ旋律の聞こえ方も変わります。旋律だけ、旋律と低音、全部の音という順で比べると、何を足したときに響きが変わったのかが分かります。比較したあとには、必ずフレーズとして聴き直します。

指使いも、同時に届くかだけで決めず、長い音を保ちながら次へ動けるかで考えます。和音を1つずつ静止した形でつかむと、手の移動が遅れてしまいます。前の音を離せる時点を譜面で読み、次の位置へ手を運びます。届きにくい箇所は、無理に広げたまま固めず、音の配分や指使いを先生と検討する場所です。

Vienna Piano School
グランドピアノを弾く生徒に、楽譜を示しながら指導する講師。

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池袋・新宿のピアノスタジオでの対面レッスン。

ウィーン育ちのコンサートピアニスト、Enea。

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低音とペダルの響き

左手を「伴奏だから小さく」とだけ考えると、和声の土台までなくなります。低音は音楽の重心を作り、その上を動く音は響きに流れを与えます。同じ左手でも、それぞれの役割を聴き分けたいところです。

冒頭では、最初の低音を弾いたあと、上へ動く音に同じ重さを加え続けないようにします。左手だけで弾き、低音の響きが残る中を次の音が通っていくように聴いてみます。そこへ旋律を戻したとき、各8分音符が歌を押し上げたり遮ったりしていないかを確認します。

ペダルは、そのバランスと一緒に考えます。まず1つの短いフレーズを普段の踏み方で弾き、和声が変わったあとにも前の低音が強く残る場所を探します。その場所だけ、踏み替えの時点や戻す量を変え、旋律のつながりと和声の明瞭さを比べます。

8分音符が動くたびにすべての響きを切ると、音楽が細切れになる場合があります。反対に、小節線だけを目印に踏み替えると、小節の途中の変化を覆うことがあります。譜面の区切りと、耳に届く和声の区切りを対応させて決めます。踏み替えの基本動作は、初めてのペダル練習でも扱っています。

練習室のピアノで決めた深さを、別の楽器にそのまま当てはめる必要はありません。同じフレーズを弾き、低音の残り方と旋律の消え方を聴いて調整します。特に響きの長い部屋では、指で弾いている音が正しくても、ペダルで残した音が重なって聞こえます。録音で確かめるなら、低音から次の和声へ移る数秒に耳を絞ると、変化を比較できます。

中間部の3連符と対話

第49小節からは、左手の3連符の上に右手の旋律が進みます。調号はそのままですが、響きの中心は嬰ヘ短調へ移ります。冒頭で作った穏やかな流れをそのまま続けるだけでは、この部分の陰影や、上下の声が応答する面白さを捉えきれません。

中間部:3連符の中に聞こえる声

第48〜52小節。反復記号の次が第49小節です。

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第48小節の和音から、第49小節の中間部へ。右手の通常の8分音符に対して左手が3連符を弾き、その中の上の声はド♯・ファ♯、次の小節でミ・レと動く。
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第49小節・第1拍

右手は1拍を2つ、左手は3つに分けます。拍の始まりを共有し、途中の音を区別します。

左手の上の声

第49〜50小節のド♯・ファ♯・ミ・レを取り出し、細かい音型の中にも歌を聴きます。

第49小節の第1拍を見ると、右手の2つの8分音符に対して、左手は3つに分かれます。右手の2音目を左手の2音目に合わせると、右手が早く出てしまいます。1拍を6つに分けて考えると、右手は1・4、左手は1・3・5の位置です。最初にその関係をゆっくり確かめ、次には1拍のまとまりとして弾きます。3対2のリズムの練習には、この対応を見られる図があります。

ここでリズムをそろえたあと、左手の3連符をすべて同じ表情で流すだけでは、まだ曲の半分しか聴いていません。第49小節の左手では、細かい動きの中にド♯、ファ♯という上向きの声が現れ、第50小節ではミ、レへ進みます。譜面に書かれた長さを持つこの声を、まず右手で取り出して弾いてみてもよいでしょう。伴奏の形から離れると、歌としての方向を聴き取れます。

次に左手へ戻し、下の細かい音と、その上の声の役割を分けます。響かせたい音にだけ突然アクセントを付けると、旋律が音型の中から飛び出してしまいます。前後の音の量を調整し、ド♯からファ♯、ミ、レという線が聞こえるバランスを探します。右手を加えたときにも、その応答が耳に残ることが目標です。

第57小節からのpiù lentoでは、細かく流れていた音楽が、よりゆっくりした和音中心の書法に変わります。ppの中で和音の上の旋律が続くよう、次の響きを用意します。和音ごとに音量を下げるだけでは、その都度音楽が止まります。長い音の間にも拍を感じ、響きの色がどこで変わるかを聴いてください。

第65小節にはTempo Iとあり、再び動きが戻ります。ここでは上と下の声が独立して進むため、片手練習でも音型の運動だけにせず、各声部を歌として聴きます。動きが多いほど、指の感覚が音楽全体を引っ張りやすくなります。時々、旋律と低音だけに戻すと、フレーズの行き先を保ったまま細部を練習できます。

主題の回帰と変化

第76小節のフェルマータのあと、短い弱起が戻り、第77小節から冒頭の主題が再び現れます。ここは、最初のページを思い出して自動的に弾くと、書かれた変化を落としやすいところです。

主題の回帰:同じ始まりからの変化

第74〜79小節。第76小節末の弱起から、主題が戻ります。

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第74〜79小節。第76小節のフェルマータのあと、a tempoの弱起を経て、第77小節に冒頭の主題が戻る。続く第78〜79小節では旋律が変わり、フォルテが現れる。
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第76〜77小節

余韻のあとに、弱起から次の小節へ向かう拍を感じます。

第78〜79小節

冒頭と異なる旋律と強弱に注目。同じ指の記憶だけで続きを弾かず、変化を耳で捉えます。

第77小節は冒頭を思わせますが、続く第78〜79小節では旋律の動きが変わり、フォルテも現れます。再現された主題には、中間部を通ってきたあとの強さがあります。最初と同じ音色へ戻すかどうかを考える前に、まず違う音、違う強弱、違う声部の動きを譜面から拾います。

比べるなら、冒頭の第1〜4小節と、第77〜80小節を交互に弾いてみてください。同じ始まりから、どの音で別の方向へ進むかが聞こえます。これは暗譜にも役立つ比較です。「似た箇所がまた来る」という記憶だけで弾くと、最初の形へ戻ってしまいます。変わる音を耳で覚え、そこから途中開始できるようにします。

テンポの戻し方も音楽の一部です。フェルマータの余韻を聴いてから、弱起が次の小節へ向かう速さを内側で感じます。余韻を待つことと、次の拍が決まらないまま待つことでは、再開したときのフレーズが違います。声に出して旋律を歌うと、どこで息を吸い、どこへ進むかを試せます。

終結部の長い呼吸

終わりが近づくと、早く静かに収めようとして、その手前の盛り上がりまで小さくまとめてしまうことがあります。第110小節以降では、クレッシェンドと、rit.、più lentoへ向かう流れを一続きに聴きたいところです。

終結部:頂点から最後の響きへ

第110〜116小節

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第110〜116小節。クレッシェンドで盛り上がったあと、rit.とpiù lentoの指示を経て最後のアルペッジョの和音へ至る。
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クレッシェンド

左手の上昇と旋律の到達点を、一続きのフレーズとして聴きます。

最後の和音

直前の響きと混ざりすぎないペダルを探し、手を離したあとの余韻まで聴きます。

ここでも、左手の動きが増えたからといって、すべての音を同じ強さで弾く必要はありません。低音から上がる音型が、旋律の到達点をどう支えるかを聴きます。頂点へ向かう方向が聞こえれば、その後の静けさにも前後関係が生まれます。

最後の和音だけを美しく鳴らそうとするより、その前にどんな響きが残っているかを確かめます。ペダルを深く残しすぎて前の低音が重なると、最後の和音の色が曖昧になります。反対に早く切りすぎると、そこまで続いていた息が途切れます。終わりの数小節を弾き、手を離したあとの音まで聴いてから、次の試行に移ります。

練習では最後だけを何度も繰り返す日があっても、仕上げではもう少し前から弾いてみます。その日の終わり方が、フレーズの長さから自然に生まれているかを確かめるためです。

レッスンで深める解釈

この曲は、細部を直すほど音楽全体が自然になるかを聴くことが大切です。内声をよく聴けるようになっても、旋律が止まってしまえば、音量の配分をもう一度考えます。ペダルが明瞭になっても歌が切れるなら、指のつなぎ方や踏み替えの時点を探ります。正しい音を増やした先に、どんなフレーズを作るかという面白さがあります。

楽譜の指使いやペダル記号は、使っている版によって扱いが異なります。スラー、タイ、音価、強弱を読み、追加された指示と区別しながら使います。版を選び直す場合は、原典版とピアノ楽譜の選び方も参考にしてください。

Vienna Piano Schoolでは、池袋・新宿のピアノスタジオで、音色・声部・フレーズを掘り下げる対面レッスンのお申し込みを受け付けています。現在は開講準備中です。《間奏曲》Op.118-2で取り組んでいる箇所や、これから弾きたい理由を添えて、体験レッスンをお申し込みください。初回体験は55分・無料。通常は55分4,800円、室料800円を加えた合計5,600円です。開始時期と体験の日程はメールでご案内します。

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