初めてのペダル:濁らせずに踏み替えるための練習

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

ピアノの右ペダルで音が濁るときは、足だけでなく、和音が変わる瞬間の響きを聴き直すことが大切です。ペダルなしの確認から、打鍵後に踏み直す基本、曲に戻すまでの練習を順番に解説します。

ピアノのペダルで音が濁るときは、足を速く動かすことより、前の和音をどこで消したいかを聴くことから始めます。基本練習の順番は、新しい和音を弾く、右ペダルを上げる、踏み直す、です。先に次の音を鳴らすことで、響きを切らずに前の和音だけを整理しやすくなります。

ただし、これはすべての曲に同じ形で当てはめる規則ではありません。まず単純な和音で手と足の順序を覚え、その後に曲の和声、音域、テンポ、アーティキュレーション、楽器の反応を聴いて調整します。

木製ピアノの三本のペダルを横から見た写真

木製ピアノの三本のペダル。写真:Chris F / Pexels

ペダルは足より先に耳で覚える

この記事で扱うのは、右側にあるダンパーペダルです。ヤマハのアコースティックピアノ用語集によると、このペダルを踏むとダンパーが弦から離れ、鍵盤から指を離したあとも弦の振動が続きます。そのため、指だけではつなげにくい音を保ち、複数の音を一つの響きとしてまとめられます。

一方で、前の和音を残したまま次の和音を重ねれば、残したくない音も一緒に聞こえます。ペダルの練習で最初に判断したいのは、足が何センチ動いたかではなく、響きが豊かになったのか、古い和音が混ざって輪郭を失ったのかという違いです。

濁りをゼロにすることだけが目的でもありません。曲によっては、複数の音を意図的に重ね、色合いや奥行きを作ります。初心者の段階では、偶然残った音と、聴いて選んだ重なりを区別できるようにします。

まずペダルなしで和音の境目を聴く

練習する2小節から4小節を選び、最初の一回はペダルを使わずにゆっくり弾きます。この段階で確かめるのは、指だけで完全なレガートにできるかではありません。低音や和音がどこで変わるか、休符はどこにあるか、旋律をどこまで保ちたいかを耳と楽譜で確認します。

和音の変わり目が分からない場合は、左手の低音だけを弾いてみます。次に、右手の和音や旋律を加えます。全部を一度に弾くより、低音の変化を先に聴いたほうが、前の響きを消したい位置を見つけやすくなります。楽譜にコード名が書かれていなくても、低音と重なっている音が変わる場所には印を付けられます。

ペダルなしで弾くのは、完成形からペダルを外すためではなく、濁りの原因を分けるためです。音やリズムがまだ定まっていない箇所では、ペダルが間違いを覆い隠すことがあります。先に手の動きと和音の順序を確かめると、あとで足を加えたときに何が変わったかを聴き取りやすくなります。初心者向けの音色の聴き方も、この聞き分けを整える参考になります。

Vienna Piano School
グランドピアノを弾く生徒に、楽譜を示しながら指導する講師。

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基本の踏み替えは「弾く、上げる、踏む」

最初の和音では、ペダルを上げた状態で音を弾き、指で和音を保ったまま右ペダルを踏みます。そのあとに指を離すと、ペダルが音を受け取ったことを確認できます。

次の和音へ移るときは、前の響きをペダルで保ったまま新しい和音を弾きます。新しい和音を指で押さえた直後にペダルを上げ、前の響きが整理されたところで踏み直します。指が新しい和音を保っているので、足が上がっている短い間にも音は途切れません。

基本の踏み替え

右のダンパーペダル

「弾く、上げる、踏む」の動作順です。図の幅は時間の長さを表していません。

  1. 新しい和音を弾く

    前の響きはペダルで保ち、新しい和音を指で鳴らして押さえます。

  2. ペダルを上げる

    新しい和音を指で保ったまま、前の響きが整理される位置まで戻します。

  3. 踏み直して聴く

    新しい響きを受け取り、濁りと切れ目のどちらも聴きます。

C–F–G7–Cで試す

各和音を4拍ずつ。速さは固定しません

最初のCは弾いてから踏みます。F以降は、新しい和音を指で保ちながら上げて踏み直します。

  1. C

    1番目

    ド・ミ・ソ

    C–E–G

  2. F

    2番目

    ファ・ラ・ド

    F–A–C

  3. G7

    3番目

    ソ・シ・レ・ファ

    G–B–D–F

  4. C

    4番目

    ド・ミ・ソ

    C–E–G

踏み替える場所と深さは、曲の和声、テンポ、楽器、部屋の響きによって変わります。この進行は動作の順序を分けて聴くための練習例です。

この順番は「後踏み」「レガートペダル」「シンコペーテッドペダル」などと呼ばれます。名称を覚えるより、手と足が同時に離れないことが大切です。上げる前に次の和音が鳴る、上げている間は指が新しい和音を保つ、前の響きが消えたら踏み直す、という三点を一つずつ確認します。

上野学園教育研究紀要の教育実践報告では、レガートペダルの基本を、新しい音を弾いてからペダルを上げ、再び踏む順序で整理しています。初心者全員に対する比較実験ではなく、動作を整理するための教育上の出発点として参照できます。

足は右ペダルから離さず、かかとを床に置くと小さな動きを保ちやすくなります。ペダルを上げるたびにつま先まで離すと、戻す位置がずれたり、足音が出たりしやすくなります。特定の角度に固定する必要はありませんが、膝や腰ごと動かさず、足首付近の小さな動きで操作できる座る位置を探します。

C、F、G7、Cで4段階に分けて練習する

曲の中でいきなり踏み替えると、読譜、指づかい、音色、足の動きに注意が分かれます。まず右手だけで、Cの和音「ド・ミ・ソ」、Fの和音「ファ・ラ・ド」、G7の和音「ソ・シ・レ・ファ」、最後にCを弾きます。弾きやすい中央付近の音域を選び、各和音を4拍ずつ保ちます。速さを数値で固定する必要はありません。4拍を落ち着いて数え、次の和音を準備できる速さで始めます。

  1. ペダルなしで弾く。 各和音を4拍保ち、次の和音との違いだけを聴きます。手を移すときに急いだり、音がばらばらになったりする場合は、先にその動きを整えます。
  2. 一つの和音をペダルで受け取る。 Cを弾き、指を保ったまま踏み、指を離しても音が続くことを確認します。ペダルを上げて音を止め、F、G7、Cも同じ方法で一つずつ試します。
  3. 四つの和音をつなぐ。 次の和音を弾いた直後に、上げて踏み直します。最初はCからFへの一回だけを確認し、濁りと切れ目の両方が減ったら、その先へ進みます。
  4. 短く録音する。 四つの和音を一回だけ録音し、画面を見ずに聴きます。評価するのは、和音が変わる瞬間に古い音が残りすぎていないか、反対に響きが途切れていないかの二点です。

この進行は、基本のタイミングを切り分けるために新しく組んだ練習例です。和音が変わるたびに必ず踏み替えるという意味ではありません。また、同じ練習を長く繰り返すより、一つの移り方を数回確かめ、聞こえ方が変わらなければ原因を見直します。

ピアノのペダルに右足を置いている奏者の足元

足の位置を整え、ペダルの動きと響きの変化を結びつけて確認します。写真:cottonbro studio / Pexels。写真は練習場面のイメージです。

濁る、切れる、足音が出る原因を分ける

前の和音が残って濁る

新しい和音を弾いてからペダルを上げるまでが長いと、二つの和音が必要以上に重なります。また、ペダルが十分に戻らないまま踏み直すと、前の響きが残ることがあります。まず一つの移りだけを弾き、新しい和音を指で保ったまま、上げる位置を少しずつ確かめます。

低い音域や音数の多い箇所では、同じ時間だけ重ねても密集して聞こえやすくなります。足の速さだけで解決しようとせず、残す音を減らす、低音を早めに整理する、ペダルの深さを調整するといった選択肢があります。この記事の和音練習では、まずペダルを一度上まで戻して原因を分けます。

響きが途中で切れる

次の和音より先にペダルを上げると、前の響きと新しい音の間に隙間ができます。新しい和音を弾いたあとでも、指をすぐ離してから踏み直すと同じことが起こります。新しい和音を指で保ち、足が踏み直したことを確認してから指を離します。

切れ目をなくそうとしてペダルを遅く上げすぎると、今度は濁ります。そこで、一回の録音で全部を直そうとせず、まず濁りだけ、次に切れ目だけを聴きます。二つを別々に判断したほうが、上げる位置を調整しやすくなります。

ペダルや靴の音が目立つ

つま先がペダルから離れ、勢いをつけて踏み直すと、演奏とは別の音が出やすくなります。足の前側をペダルに触れたまま保ち、戻る力を足で受け止めます。ペダル自体の動きや音は楽器によって違うため、機構の問題を決めつけず、まず音を出さずに一度だけ動かし、自分の足が離れていないかを確認します。

曲に戻すときは答えを固定しない

和音の変わり目で踏み替える方法は、初心者が耳と足を結びつける出発点です。実際の曲では、旋律のつながり、スタッカートや休符、フレーズの切れ目、テンポ、音域、音量、作曲された時代や様式によって、どの音をどこまで残すかが変わります。音が少し重なることが音楽的に必要な場面もあります。

楽譜にペダル記号がない場合も、常にペダルを使わないとは限りません。反対に、記号があるから一つの深さとタイミングで踏み続ければよいとも限りません。版や作曲家の表記を確認し、旋律と和声がどう聞こえるかを基準にします。初めのうちは、ペダルを加えた一回と外した一回を録音し、何が良くなり、何が不明瞭になったかを比べると判断しやすくなります。

山﨑紫乃によるペダル教育の実践報告も、楽器、音響条件、タッチ、テンポなどによって判断が変わることを述べています。また、Bruno H. Reppによる予備的研究では、2人のピアニストがシューマンの《トロイメライ》を演奏した際のペダルタイミングが、テンポに対して単純な固定関係を示さず、奏者間にも違いがありました。初心者の練習法を比較した研究ではありませんが、「打鍵から何秒後」と一つの数値を一般則にしない理由にはなります。

電子ピアノとアコースティックピアノでも、踏み込みの深さ、戻り方、余韻の聞こえ方が同じとは限りません。普段の楽器で整った踏み替えも、別の楽器や部屋ではもう一度聴き直します。ハーフペダルなど深さを使い分ける技法もありますが、最初の練習では、上げる、踏むを明確に分けたほうが順序を確認しやすくなります。

5分の練習順と、曲で迷ったとき

短く練習する日は、最初の1分でC、F、G7、Cをペダルなしで弾きます。次の1分で一つの和音をペダルに受け取る動作を確かめ、続く2分で四つの和音をつなぎます。最後の1分で曲の中の一つの踏み替えを録音し、次回に直す点を一つだけ書きます。時間配分は目安で、問題が一つ見つかったら、全部の和音を繰り返すよりその移りに絞ります。

何度弾いても聞こえ方を確かめず、同じ動作だけを重ねている場合は、音を聴かずに反復する練習の見直し方も参考になります。ペダル練習でも、回数より「濁った」「切れた」「意図した響きになった」のどれかを言葉にしてから次の一回を弾きます。

録音を聴いても濁る位置が分からない場合や、取り組んでいる曲に合う踏み替えを確かめたい場合は、レッスンで実際の響きと足の動きを具体的に確認できます。体験レッスンの内容と申込み方法をご覧ください。オンラインは現在受講でき、東京都内の対面レッスンは2026年10月に始まります。

参考資料

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