フライブルク音楽大学のピアノ出願:郵送書類・課題曲と日本での準備
フライブルク音楽大学のピアノ出願は、オンライン登録と紙の書類の郵送を組み合わせて行います。日本から準備する場合は、演奏する曲とともに、卒業証明書などの発行時期や翻訳の手配も早めに考えておきたいところです。
ここでは、ピアノを主専攻とする学士課程Bachelor Musikを中心に、2027年夏学期入学に向けた出願と演奏準備を解説します。最初に押さえたいのは、次の4点です。
- オンライン登録と郵送には、それぞれの締切があります。
- 日本の卒業予定時期と、出願時に提出できる証明書を確認します。
- 実技は、3つの異なる様式の作品または楽章に、エチュードを加えて準備します。
- ドイツ語、聴音、楽典も、ピアノの曲と並行して取り組みます。
出願日程と2つの提出
2027年夏学期の募集案内では、大学のポータルで登録した後、出願書と必要書類を紙で送る手順が示されています。オンラインの入力を終えた段階で、出願全体を終えたと思わないことが大切です。
01
オンライン登録
- 日程
- 2026年10月1日〜11月1日23:59
- 準備すること
- 大学のポータルから登録。志望課程と専攻を確認して入力します。
02
書類の郵送
- 日程
- 2026年11月2日の消印まで
- 準備すること
- 出願書と必要書類を紙で提出。オンライン登録とは別に送ります。
03
適性試験
- 日程
- 2027年1月25〜30日
- 準備すること
- 個人の日程・試験の進め方は、大学から届く案内で確認します。
郵送先の表記
Hochschule für Musik Freiburg
Mendelssohn-Bartholdy-Platz 1
D-79102 Freiburg
Germany
郵送について書かれている「Datum des Poststempels」は消印の日付です。この募集では11月2日までの発送が基準ですが、日本からは締切直前の発送を避け、窓口で受け付けられた日付が分かる控えを残しておきましょう。オンライン登録の締切も別に守る必要があります。
提出後の案内はポータルで届きます。登録したら、入力内容と大学からのメッセージを読み返せる状態にしておきます。家族が書類を手伝う場合も、受験する本人が志望課程と登録内容を理解しておくと、その後の大学とのやり取りを引き継げます。
試験期間は2027年1月25〜30日です。このうち自分がいつ、どの試験を受けるかは、大学から届く個別の案内で確認します。曲を仕上げる予定も、この1月の実技から逆算します。11月の出願後に新しいプログラムを一から読み始めると、演奏を人に聴いてもらう時間が短くなります。
日本の卒業時期と出願資格
「夏学期入学」という言葉だけで、日本の学校の夏休み頃を想像してしまうと、準備の時期がずれます。今回の出願は2026年秋、試験は2027年1月です。日本の高校や大学を2027年3月に卒業する予定なら、出願と試験の時点ではまだ在学中ということになります。
この場合、最初に確かめたいのは、現在の学歴でどの課程に出願するのか、出願時点でどの証明書を出し、卒業後の書類をいつ提出するのかです。学校が発行する卒業見込証明書をそのまま使えるかどうかも、フライブルク側に確認します。日本の証明書の名称と、大学が求める書類を一つずつ照らし合わせます。
すでに日本の音楽大学で学んでいる方は、在学中の課程名、学年、これまでの履修内容を伝えられるようにしておきましょう。大学の在学生には成績・履修の一覧であるTranscript of Recordsも求められます。転学や既修得単位の扱いについては、入学試験の合格とは別に大学の判断が必要です。
フライブルクのピアノ学士には、演奏を中心に学ぶ芸術系と、演奏・教育を学ぶ芸術教育系のプロフィールがあります。大学名だけで志望を決めず、どの学び方を選ぶのかも考えます。私は、受験生が「入学できたら何を学びたいか」を言葉にする時間を大切にしています。独奏を深めたいのか、室内楽に取り組みたいのか、教える仕事にも関心があるのか。その答えによって、授業の一覧から目に入ってくる内容も変わります。


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証明書・翻訳・経歴書
出願には、記入済みの申請書、申請書に貼る証明写真、経歴書、50ユーロの出願料の支払証明、学歴や語学の証明などが必要です。学校の卒業資格の証明には認証された写しが求められ、外国語の証明書には認証されたドイツ語または英語訳を添えます。細かな提出範囲は、末尾の公式書類一覧で志望課程と自分の状況に合わせて確認してください。
案内で見かける「beglaubigte Kopie」は認証された写し、「beglaubigte Übersetzung」は認証された翻訳です。自分でコピーした書類や、自分で訳した文章と同じ扱いにはなりません。依頼先と大学の受理条件を確認してから手配し、証明書の発行と翻訳にかかる時間を見込んでおきます。
経歴書は「Lebenslauf」と呼ばれます。フライブルクは、学歴や芸術活動を含む、空白期間のない最新の経歴を求めています。学校名と在籍期間を軸に、ピアノの師事歴、講習会、主な演奏経験をまとめます。日本の学校名は正式名称を使い、課程名も実際の資格に沿って記します。
演奏経験は、内容が分かる書き方を選びます。「コンサート出演」だけでなく、独奏、室内楽、歌曲伴奏のどれを担当したのかを書きます。大きな賞の名前がなくても、長く取り組んだ作品や共演の経験には、その人の学び方が表れます。短い経歴の中でも、何に時間をかけてきたかが伝わる記述を残しましょう。
曲目表は、経歴書よりさらに作品の特定が重要です。たとえばベートーヴェンなら、ソナタの番号だけでなく、調性、作品番号、演奏する楽章まで書きます。「Sonate c-Moll op. 10 Nr. 1, 1. Satz」のように楽章を示せば、第1楽章を用意していることが分かります。提出する表記と、実際に弾く範囲を一致させます。
課題曲の3様式とエチュード
ピアノ主専攻の学士課程では、3つの異なる様式の作品、または個々の楽章に、エチュード1曲を加えます。要項の「Einzelsätze」は個別の楽章を指します。ソナタを選ぶ場合も、この学士の条件では楽章単位の選択が認められています。エチュードは3つの選曲とは別に用意します。
選曲を始めるときは、まず手持ちの曲を聴き直します。たとえば、対位法的な作品、古典派のソナタ楽章、ロマン派の作品という組み合わせなら、それぞれで音楽の組み立て方が変わります。20世紀の作品を含める選択も考えられます。これは組み合わせを考える例であり、大学がこの作曲家の並びを指定しているわけではありません。
3様式をそろえる際には、作品名の時代区分に加えて、演奏の中身を聴きます。速い音型が続く曲ばかりだと、長い旋律を保つ力や、静かな場面での音の扱いが見えにくくなります。華やかな曲と緩やかな曲、厚い響きと透明な響きを並べたときに、自分の演奏の幅がどう聞こえるかを確かめましょう。
曲の難しさは、最後まで弾いたときの完成度と一緒に判断します。冒頭の難所は弾けても、展開部で拍が落ち着かず、再現部では旋律が伴奏に埋もれるなら、そこに時間が必要です。曲を替える前に、今の曲で何が聴こえていないのかを先生と話し合います。
試験では、提出した曲目から審査側が演奏するものを選び、時間の都合で途中を止める場合があります。曲順を固定した通し練習だけでなく、選ばれた曲のテンポと音色を思い浮かべて始める練習もしておきます。止められた後は、次の曲の音楽に耳を切り替えます。
様式ごとの音作り
バッハとベートーヴェンを弾き分けるというと、まずペダルの量や強弱を変えたくなるかもしれません。私は、その前に譜面の中で何が動いているかを聴きます。旋律、低音、内声の関係が変われば、同じピアノから求める響きも変わります。
フーガで主題が中声部に現れる場面なら、最初はその声部だけを弾き、どの音へ向かう線なのかをつかみます。次に上の声部を加え、主題が隠れない範囲で、その声部の流れも残します。主題の音を一つずつ強調するだけでは、旋律の形が途切れることがあります。入口の音量と、フレーズ全体の方向を分けて聴くのがポイントです。
古典派のソナタでは、伴奏の細かい音が拍の輪郭を作ります。すべての音を同じ重さで弾くと、旋律が歌っていても、下で忙しく刻んでいるように聞こえます。旋律と低音だけで弾き、和声がどこへ進むかを聴いてから、中の音を戻します。音が増えても、フレーズの到着点が変わらないようにします。
ロマン派の作品では、旋律が同じ音を保っている間にも、下の和声が変わることがあります。その変化を聴かずにペダルを残すと、響きの色が混ざります。まず低音の動きを確かめ、旋律を加えて、和声が変わる瞬間に耳を向けます。踏み替えを整えたら、今度はフレーズを長く弾き、響きの変化のたびに音楽が止まっていないかを聴きます。
エチュードも、速さだけで判断しません。音型の先に低音の到着や調の変化があるなら、その方向を保って弾きます。難所だけを繰り返して弾けるようになったら、少し手前から入り直してみてください。前のフレーズから移る瞬間に拍が縮むなら、音型そのものとは別に、入り方を練習する必要があります。
このように、曲ごとに聴く対象を変えていくと、様式の違いが演奏に現れます。録音では、それぞれの曲の冒頭だけを続けて聴くのも有効です。どの曲でも伴奏が同じ重さ、休符が同じ長さの感覚になっていないか。作品の性格が始めの数小節から聞こえるかを確かめます。
聴音・楽典と学士課程の授業
学士課程の受験では、ピアノ実技とともに聴音や楽典などの試験にも備えます。大学が公開している聴音の例題には、音程、和音、和音進行、単旋律、2声の書き取りが含まれています。現在案内されているものは2023年の問題で、出題形式を知る練習材料として使えます。
2声の聴音で上の旋律を追っているうちに低音が分からなくなるなら、まず短い範囲で聴き分けます。一度は上の声を歌い、次は低音の進む方向を聴きます。拍子と終止の位置をつかんでから、残った音を埋めます。答えと比べるときには、音高の間違いとリズムの間違いを分けて見ます。
リズムを間違えた場所は、拍を取りながらリズムだけを声に出します。音高を間違えた場所は、その1音だけを覚えるより、前後の旋律を歌い直します。正しい音に置き換えたとき、旋律の向きや和音の響きがどう変わるかを聴きます。採点して次の問題へ移るだけでは、この違いを取り逃します。
楽典では、和声の知識を実際の音に戻す練習も役立ちます。短い旋律に低音を付け、終止へ向かう流れを弾いてみます。その後で内声を加え、各声部が歌える動きになっているかを確かめます。紙の上で書けたものをピアノで弾くと、音が詰まる場所や、不自然に跳ぶ声部が耳に残ります。
フライブルクの芸術系ピアノ学士の履修表を見ると、主専攻のほかに、室内楽、歌曲、音楽理論、聴音、古楽の演奏実践、現代音楽の奏法や記譜法などが並びます。受験の関連試験は、入学後にも続く学びの入口です。実技が落ち着いてから取りかかるのではなく、曲を練習する日々の中に聴音や和声の時間を置きます。
B1とピアノのドイツ語
ドイツ語圏以外から出願するピアノの受験生は、大学の語学規定にあるB1の証明を確認します。語学証明がまだ出ていない場合の扱いは、大学に相談して判断を受けます。語学の条件全体については、音楽留学の語学証明とレッスンの会話でも説明しています。
証明書の勉強と並行して、自分の曲を使った受け答えも練習しましょう。曲名と楽章をドイツ語で言い、どの学校で何を学んでいるか、今の曲でどこを直しているかを短く話します。実際の楽譜があれば、言葉と音を行き来できます。
「Ab dem zweiten Thema, bitte」と言われたら、第2主題から始める指示です。位置を見つけ、その部分のテンポを内側で聴いてから弾きます。小節番号を確認したければ、「Meinen Sie Takt 35?」と尋ねられます。「35小節目のことですか」という意味です。指示を聞いて譜面を探し、必要な箇所を確認して弾くところまでを、一つのやり取りとして練習します。
自分の演奏について話すときは、たとえば「Hier möchte ich die linke Hand leichter spielen」と言えば、「ここは左手をもっと軽く弾きたい」と伝えられます。言った後にその箇所を弾き、旋律が前へ出たかを聴きます。言葉を覚えるだけで終わらず、音にした結果まで確かめるのが、音楽のための語学練習です。よく使う表現はピアノのドイツ語用語にもまとめています。
日本で進める受験準備
出願の時期には、書類の手配とピアノの練習が重なります。学校や翻訳の依頼先が発行するものは早めに動かし、自分で進める練習には、曲ごとの課題を残しておきます。「全曲を仕上げる」という大きな予定だけでなく、ソナタの展開部、静かな曲の旋律、エチュードへの入り方など、今聴くべき部分を決めます。
私が準備の早い段階で聴きたいのは、速い曲だけでなく、音の少ない場面です。長い音の間に伴奏が膨らんでいないか、低音の進行が旋律を支えているか、終止を急いでいないか。そこに出てくる聴き方は、ほかの曲にも表れます。難所を増やす前に、今の音をどこまで扱えるかを掘り下げます。
本番が近づいたら、先生や聴き手に曲を選んでもらう機会を作ります。曲順が変わっても、その作品の空気を思い浮かべて始められるかを試します。演奏後は、もらった感想から次の練習で確かめる点を選びます。長期の準備については、音大・海外音大受験の12か月計画も参考になります。
Vienna Piano Schoolでは、ピアノの選曲・解釈・音作りに加え、音楽に必要なドイツ語、教授とのやり取り、出願準備をサポートしています。2026年10月から池袋・新宿のピアノスタジオで、中学生以上と大人の方を対象に、対面・55分・4,800円のレッスンを行います。30分の無料体験では、準備中の曲を聴きながら、フライブルクの受験までに取り組みたい内容を相談できます。
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