ドイツ語圏のピアノレッスンでよく使う音楽用語

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

ドイツ語でピアノを学ぶとき、用語をどのように音や動きと結びつければよいでしょうか。小節と拍、HとBの音名、響きや運指の言葉を、短い例文と鍵盤図で解説。聞き返す表現も紹介します。

ドイツ語でピアノのレッスンを受ける準備では、音楽用語を日本語訳だけで覚えるより、「どこから弾くか」「どの音を聴くか」「何を変えるか」と結びつけると、言葉を演奏に生かしやすくなります。まずは小節や拍、音のつなぎ方、響き、手の動きを表す言葉と、聞き返すための短い表現を押さえましょう。音名のHとBは英語と対応が異なるため、鍵盤でも確かめておきたいところです。

オーストリアやドイツ、スイスのドイツ語圏で学ぶ場合も、先生によって言い方や比喩は違います。ここではレッスンで役立つ基本語を、音楽上の意味とともに紹介します。例文は使い方を説明するために作ったもので、特定の先生の発言を記録したものではありません。

ピアノの鍵盤を弾く手と、そのそばで演奏を見ている人

小節と拍を聞き分け、同じ場所から始める

der Taktは、小節や拍子を表します。たとえば「Ab Takt acht, bitte.」なら「8小節目からお願いします」という意味です。一方、3/4-Taktなら4分の3拍子。Taktという一語を覚えたうえで、前後の数字が場所を示すのか、拍子を示すのかを聴き分けます。

小節の中の数える位置はdie Zählzeitです。「auf der zweiten Zählzeit」なら「2拍目で」。4分の4拍子の曲で、8小節目から始めるのと、その小節の2拍目から始めるのとでは、入り方が変わります。楽譜を指しながら確認すれば、語学の問題とリズムの問題を分けて考えられます。

der Auftaktはアウフタクト、つまり強い拍に先立つ弱起を指します。冒頭が不完全な小節で始まる曲では、最初の完全な小節の前にある音も含めて弾くのかが大切です。「mit Auftakt」は「アウフタクトを含めて」。小節番号だけで迷うときは、弾き始める音を一緒に確かめましょう。

実際の指示には、場所に加えて、手や弾き方が続くことがあります。次の例は文法を細かく分析するためではなく、言われた内容を鍵盤上の行動につなげるためのものです。

レッスンの一言を、音楽の中で受け取る

Ab Takt acht, bitte nur die linke Hand und etwas leiser.

どこから
ab Takt acht8小節目から
どの手で
nur die linke Hand左手だけで
どう変える
etwas leiser少し音量を下げて

使い方を示すための例文です。音量の指示を聞いたら、テンポまで変えていないかも聴いてみます。

ここでのleiserは「もっと小さい音で」。langsamerの「もっと遅く」とは別です。音量を変えるつもりがテンポまで落ちてしまったら、何を変える指示だったかに戻ります。また、nurは「だけ」、noch einmalは「もう一度」。短い言葉でも、片手なのか両手なのか、続けるのか弾き直すのかを左右します。

音名のHとBは、鍵盤と結びつける

ドイツ語の基本の音名はC、D、E、F、G、A、Hです。固定ドでいう「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ」に対応します。特に気をつけたいのは、ドイツ語のHがシ、Bがシ♭を指すことです。英語ではシをB、シ♭をB-flatと呼びます。

同じ鍵盤、違う音名

鍵盤の文字はドイツ音名です。BとHの位置を確かめましょう。

ドからシまでの鍵盤。ドイツ音名Hは右端の白鍵のシ、Bはその左隣の黒鍵のシのフラット。CDEFGAHB
ドイツ語 H
日本語:シ(固定ド)
英語:B
ドイツ語 B
日本語:シ♭(固定ド)
英語:B-flat

音名の対応を示す図です。オクターブは指定していません。

日本でドイツ音名を習った方にはなじみのある対応ですが、英語の教材やコード表も使っていると、同じBを違う意味で読むことがあります。先生がBと言ったとき、英語のつもりで白鍵のシを弾くと、話が半音ずれてしまいます。

シャープやフラットが付くと、Cisはド♯、Fisはファ♯、Esはミ♭など、名前も変わります。すべてを一度に暗記する前に、今弾いている曲の調と、レッスンでよく止まる音から覚えると使い道が見えます。図は音の対応を示したもので、実際にはどのオクターブを指しているかも楽譜の中で確認してください。

Vienna Piano School
グランドピアノを弾く生徒に、楽譜を示しながら指導する講師。

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ウィーン育ちのコンサートピアニスト、Enea。

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音のつなぎ方を表す言葉

die Artikulationはアーティキュレーション、音をどのようにつなぎ、分けるかということです。legatoやstaccatoなど、楽譜にあるイタリア語も使われます。それに加えて、gebundenは「つながった」、getrenntは「分かれた」という意味で、音の関係を説明します。

たとえば「Bitte mehr gebunden.」は「もう少しつなげて」という例です。ただ鍵盤を長く押さえればよい、と決めてしまうと、旋律の輪郭がぼやけることもあります。今の演奏のどこが途切れて聴こえたのか、次の音への受け渡しを聴きながら試したい言葉です。

反対に「Hier bitte absetzen.」は、この場面では「ここでいったん切って」という意味になります。音を短く終えることと、次の音を早く弾くことは別です。同じリズムを保ちながら音と音の間に空間を作ると、指示の意味を音で確かめられます。

「どの程度つなぐのか」「どこで離すのか」は、曲の性格や前後のフレーズによって変わります。単語と一つの弾き方を固定して覚えるより、先生の実演を聴いて、自分の音との違いを捉えるほうが役立ちます。

響きと声部の話を、音量だけで受け取らない

der Klangは音や響き、die Klangfarbeは音色です。weicherは「より柔らかく」、hellerは「より明るく」、singendは「歌うように」。こうした言葉は目指す音の性格を伝えますが、そのまま指の動作を一つに決めるものではありません。

たとえば「Die Melodie bitte mehr hervorheben.」なら「旋律をもう少し際立たせて」という意味です。die Melodieが旋律、die Begleitungが伴奏です。右手の音量を大きくすることだけを考えず、伴奏の響きを控えると旋律が聴こえやすくなるか、両者の関係を試せます。

もう一つ覚えておきたいのがdie Stimmeです。日常語では「声」ですが、多声の音楽では「声部」を指します。Oberstimmeは上声、Mittelstimmeは内声、Unterstimmeは下声。「上声を聴いて」という指示は、右手のすべての音を同じ強さで弾くという意味ではありません。一つの手が複数の声部を受け持つこともあるためです。

柔らかい響きと小さな音も、いつも同じ意味になるわけではありません。先生がweicherと言った場面で、どの音の立ち上がりや重なりが気になったのかを確かめると、言葉が曖昧な印象のままで終わらず、次に聴く場所が見えてきます。

指使いと手の動きを表す言葉

der Fingersatzは運指、指使いです。「Welchen Fingersatz nehmen Sie hier?」は「ここではどの指使いを使っていますか」という質問の例です。数字だけで答えるより、その箇所をゆっくり弾いて見せれば、指の交替や次の位置への移動まで伝えられます。

der Anschlagはピアノでは打鍵やタッチを指します。単に「叩く」という日常的なイメージに置き換えず、鍵盤に触れて音を出す仕方と、その結果の響きを結びつけて受け取りたい言葉です。Fingersatzがどの指を使うかに関わるのに対し、Anschlagの話では音の出し方が焦点になります。

グランドピアノの鍵盤を弾く両手と前腕

動きについての言葉は、実際に出た音と一緒に確かめます。写真は特定の手の形を勧めるものではありません。

身体の部分では、der Fingerが指、das Handgelenkが手首、der Armが腕です。rechtsは右、linksは左。「mit der rechten Hand」は右手で、「mit der linken Hand」は左手で、という表現になります。名詞には性があり、文の中では冠詞などの形も変わるため、短いまとまりで覚えておくと聞き取りの助けになります。

lockerは「力みのない、柔軟な」といった意味ですが、手を支えずに脱力させる指示だと決めつけないようにします。どの動きの、どの瞬間について言われたのかを見せてもらいましょう。動きが分からないまま大きく変えるより、短い箇所で試し、その音と感覚を先生に伝えるほうが話を進めやすくなります。

フレーズや曲の構成を話すとき

die Phraseはフレーズ、das Motivは動機、das Themaは主題です。「Wo endet die Phrase?」は「フレーズはどこで終わりますか」という問いです。音符を最後まで正しく並べることから一歩進んで、どこへ向かい、どこで一息つくかを考える場面につながります。

たとえば、旋律が上がってから静かに収まる箇所を想像してください。「Bis zum Ende der Phrase.」と言われたら「フレーズの終わりまで」という範囲を示しています。その範囲を弾くうちに、途中の小節線で音楽を止めていないか、終わりの音だけが突出していないかも聴けます。用語の意味と、その場で扱っている音楽上の課題は、一緒に理解していくものです。

der Satzは文脈によって意味が変わります。ソナタについて「der erste Satz」と言えば「第1楽章」。日常語の「文」という訳だけでは分かりませんし、いつでも「フレーズ」と置き換えられる言葉でもありません。作品のどの大きさのまとまりを話しているかが手がかりになります。

先生の表現を国ごとの決まった指導法として覚える必要はありません。日本とヨーロッパの音大レッスンを比べるときの視点でも触れているように、実際の先生や授業を見て考えることが大切です。同じ言葉でも、曲や演奏の状態によって求められる変化は違います。

聞き返せると、音楽の話を続けられる

分からなかったときは、「Können Sie das bitte wiederholen?」で「もう一度言っていただけますか」と頼めます。話す速さが難しいなら、「Können Sie bitte langsamer sprechen?」で「もう少しゆっくり話していただけますか」。langsamという語が、ここでは演奏ではなく話し方にかかることも、文の中で覚える理由の一つです。

言葉は分かっても音のイメージがつかめないときは、「Können Sie mir das bitte vorspielen?」で「弾いて聴かせていただけますか」とお願いできます。説明を同じ言葉で繰り返してもらうことと、音で示してもらうことは、別の助けになります。

一部分だけ確かめるなら、「Nur die linke Hand?」で「左手だけですか」、「Ab Takt acht?」で「8小節目からですか」と聞き返せます。長い説明をすべて日本語に直そうとするより、分からない部分を絞ると、その後の演奏を続けやすくなります。例文では丁寧なSieの形を使っています。呼びかけ方は相手との関係に合わせてください。

練習曲の中から一か所選び、知っている言葉で短く説明してみましょう。たとえば「ここは左手だけ」「旋律を聴く」「フレーズの終わりまで」。次のレッスンで実際に使った言葉を楽譜のその場所と一緒に残すと、自分の音楽に結びついた語彙が少しずつ増えていきます。

こうしたやり取りの準備と、出願に必要な語学証明は別に確認する必要があります。留学を考えている方は、音大・海外音大受験の準備計画も参考に、演奏と語学に必要な時間を見ておくとよいでしょう。

Vienna Piano Schoolでは、ピアノと合わせた音楽ドイツ語の語彙や留学準備のサポートにも対応しています。現在はオンラインで受講でき、東京都内の対面レッスンは2026年10月開始です。無料の30分体験レッスンの申込みでは、弾いている曲と、ドイツ語でどのようなやり取りを練習したいかをお知らせください。

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