音大以外の大学でもピアノを続ける:試験・実習と曲の仕上げ方
大学では別の分野を学びながら、ピアノも続けたい。高校までのように毎週同じ時間に帰宅する生活から、履修登録、空きコマ、ゼミ、実習のある生活へ移ると、練習の置き場所も変わります。実家のピアノを離れて暮らし始める方にとっては、弾く楽器を探すところからの出発です。
私が大学生の方とレッスンの計画を考えるなら、まず「今学期、どんな演奏を残したいか」を聞きます。好きな一曲を最後まで弾く、サークルで連弾をする、以前弾いたソナタを音色から見直す。その目標を、授業や試験の日程と一緒に置いてみます。
- 実際に通える練習場所と、楽器を使える時間を確かめる。
- 新しく育てる曲と、弾き続けたい曲を分けて選ぶ。
- 定期試験・実習の前には、新しい譜読みの量を調整する。
- 学期の区切りに一度演奏を聴き、次に取り組むことを決める。
大学で続けるピアノの目標
「趣味として続ける」という言葉の中にも、いくつもの楽しみ方があります。一曲の解釈を深く考えたい方、友人と一緒に音楽を作りたい方、好きな曲を家で弾けるようにしておきたい方。それぞれで、選ぶ曲も練習の使い方も変わります。
たとえば「今学期はショパンを弾きたい」なら、どの作品の何に惹かれるのかを話してみてください。旋律の歌い方なのか、和声が変わるときの響きなのか。私はそこを聴いたうえで、曲全体の長さや中間部の難しさ、今の読譜と運指の経験を見ます。好きな音楽への関心と、実際の楽譜の両方から選曲します。
発表会や検定の課題がなくなると、何をもって前進とするかが曖昧になることもあります。「伴奏が強くなっても旋律の線を保つ」「中間部から最後まで音楽を止めずに弾く」のように、演奏で確かめられる目標を一つ持つと、学期末に聴き返す場所が定まります。
大学で新しく知った作品も、次の曲を探すきっかけになります。友人の演奏を聴く、学内の演奏会へ行く、図書館で楽譜を開く。気になった曲は、音源だけでなく楽譜も先生と見てみましょう。今取り組む曲と、少し先に弾きたい曲を選ぶ時間も、ピアノを続ける楽しみの一部です。
空きコマと練習場所
時間割に一コマ空いていても、その時間をすべて練習に使えるとは限りません。教室から練習室までの移動、鍵の受け取り、昼食、次の授業への移動も含めて、一度実際に歩いてみます。「授業の合間に弾く」と決める前に、楽器の前に座れる時間を確かめます。
学内なら、学生課、学生会館、課外活動の案内で「音楽練習室」「練習ブース」「ピアノ」の項目を探します。サークルの団体利用と個人利用で窓口や予約枠が分かれる場合があります。自分が利用対象に入るか、予約が必要か、ピアノのある部屋はどこかを確認してください。
たとえば早稲田大学の戸山キャンパス学生会館では、大学の案内に個人利用できる音楽練習用ブースが掲載され、ピアノのあるブースも紹介されています。学生生活課の案内では、個人ブースに週予約と当日予約があります。こうした施設の種類と利用方法を、まず自分の大学で調べます。学外の人も使える一般の貸し練習室とは利用対象が異なるため、所属大学の窓口で条件を確かめましょう。
学内で弾く場所が見つからない場合は、通学経路上の貸し練習室も候補になります。大学の最寄り駅だけでなく、乗り換え駅や自宅の近くも含めて、移動時間と室料を合わせて考えます。探すときの確認点は、東京のピアノ練習室ガイドにまとめています。
一人暮らしの部屋に楽器を置くなら、建物の演奏条件と使える時間を先に確認します。ヘッドホンを使う電子ピアノでも、鍵盤やペダルを踏む音は残ります。夜しか時間がない生活なのか、授業前に弾ける日があるのかで、練習場所の組み合わせは変わります。


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学期の曲選び
新しい曲を何曲も同時に始めると、試験前にそれぞれの譜読みが途中で止まり、休み明けに戻る場所が増えます。まずは今学期の中心にする一曲、または一つの楽章を選びます。それに、すでに音を覚えていて弾き続けたい曲を組み合わせると、新しい課題と演奏の楽しみの両方が残ります。
中心の曲は、冒頭だけで決めず、最後まで楽譜を見ます。短い曲でも和音の読み替えが多かったり、後半だけ手の移動が大きかったりします。逆に、少し長くても同じ材料が戻ってくる作品なら、構成を理解することが練習の助けになります。演奏時間と譜読みの負担を別々に考えます。
私は選曲の段階で、少し難しそうな一節を一緒に弾いてみるのが好きです。音を一つずつ確かめたとき、何に時間がかかるかが分かるからです。音域を読むことなのか、和音の指を決めることなのか、片手で二つの声部を弾き分けることなのか。そこで見えた課題を、学期の前半に置きます。
以前弾いた曲には、新しい聴き方を一つ加えてみます。旋律を歌いながら左手を弾く、ペダルを外して音のつながりを聴く、途中の転調から始める。最初から最後まで指の記憶だけで通すより、いま気になっている響きへ耳を向けます。
本番が決まっている場合は、その日までに曲全体を整える時間も含めて選びます。大学祭やサークルの演奏会に申し込む前に、演奏時間、リハーサルの日、学業の締め切りを並べます。曲名を出してから難しい後半に気付くより、先に一度楽譜を持って相談したいところです。
定期試験までの配分
「新しく読む時間」と「身に付いた曲を保つ時間」は、同じ練習の中でも役割が違います。前者では知らない音や動きを覚え、後者では知っている音楽の響きや流れを取り戻します。試験が近づくにつれて、二つの比重を変えていきます。
たとえば1月に定期試験があり、2月に練習時間を戻せるなら、秋から次のように一曲を育てることが考えられます。11月や12月に実習が入る場合は、その時期に「保つ」練習を移します。
秋から試験後まで、一曲を育てる
10月
今学期の一曲を選ぶ
- 新しく育てる部分
- 中間部も試し、時間をかけたい音や運指を見つける。
- 弾き続ける部分
- 以前弾いた曲を、途中や終わりからも弾いてみる。
11〜12月
曲全体へ広げる
- 新しく育てる部分
- 各部分を読み、つなぎ目と表情の変化を聴く。
- 弾き続ける部分
- 先に読んだ部分の旋律と伴奏のバランスを戻す。
1月
定期試験の時期
- 新しく育てる部分
- 新しい範囲を増やす前に、再開するページへ印を付ける。
- 弾き続ける部分
- 弾ける日に、曲の途中と最後の一段を訪ねる。
2月
演奏を聴いて再開
- 新しく育てる部分
- 残したメモと楽譜を開き、次の課題から取り組む。
- 弾き続ける部分
- 一曲を通して録音するか、友人に聴いてもらう。
試験前に残す練習メモ
いま弾けるところ:前半は両手で通せる。中間部は最初の和音まで読んだ。
決めたこと:中間部の右手の指番号を楽譜に書いた。
次に聴くこと:中間部の旋律と内声を分けて弾き、旋律を残したまま両手で合わせる。
ここで大切なのは、試験前に新曲を急いで増やすことより、再開する場所を自分で分かっていることです。「中間部の最初の和音は読めた。次は右手の旋律と内声を分けて聴く」と書いておけば、休み明けに同じページを開いたとき、次の問いから始められます。
学期の途中に一度、予定と演奏を見比べます。前半の譜読みが想定より長引いたなら、後半に入れる範囲や演奏の機会を見直します。反対に、音は早く読めたのに両手の響きがまとまらないなら、残った期間を音色や声部の練習に使います。進み具合に合わせて内容を変えます。
短い練習と譜読み
空きコマの練習では、楽器の前に着いてから曲を選び始めると、使える時間の多くが過ぎてしまいます。その日に聴く一節を楽譜で開いておきます。目標は「短い時間で全部を取り戻す」ではなく、一つの音楽的な問題に答えを出すことです。
たとえば、右手の旋律が左手の伴奏に隠れる四小節を練習するとします。旋律だけを弾いて行き先を聴き、次に左手を加えます。音量を下げることに集中して拍が止まったら、同じテンポで左手だけを弾き直します。最後に前のフレーズから続け、そこへ入ったときにも旋律が聞こえるかを確かめます。
別の日に、譜読みの途中から再開するときは、最初の音だけでなく、その場所の調や低音を確かめます。曲の冒頭から指を動かしてたどり着く方法に頼ると、短い練習のたびに同じページを通ることになります。途中の始める場所を楽譜で選び、その音から出られるようにしておきます。
楽器のない時間には、音源を聴きながら楽譜で主題の戻りを追う、低音だけを読む、次のレッスンで聞きたい箇所を印す、といった準備ができます。実際に鍵盤を弾く時間には、そのとき気になった響きや指使いを試します。机で考えたことを、耳と手で確かめるところまでが一つの練習です。
実習・就活と練習の再開
教育実習や学外実習、研究室での活動、就職活動が入ると、授業期間とは違う場所へ通う日が増えます。いつもの練習室の近くを通らなくなるなら、空いている時間の長さだけを見ても予定は立ちません。楽器に触れられる日と、移動先を含めて考えます。
一時的に練習が減る前には、残しておきたい曲の弱い場所を先生と確認します。私は、冒頭よりも、中間部への入り方や最後の一段を聴くことがあります。普段よく弾くところは覚えていても、途中のつなぎ目や終わりの和音で迷うことがあるからです。
しばらく弾けない期間があるなら、再開用の短いメモを楽譜に挟んでおきます。決めた指使い、最後に練習した範囲、次に聴くことを残します。試験や実習のあとに開いて、その範囲をゆっくり弾き、思い出せることと読み直すことを分けます。
再開初日に、以前の速さで一曲を通して判断すると、手の動きばかりが気になりがちです。まず音のまとまりを取り戻し、片手で確認してから両手へ戻します。休みの前には聞き流していた内声や、フレーズの終わりが耳に入ることもあります。その気付きも、次のレッスンへ持ってきてください。
サークルと演奏機会
ピアノサークルや音楽系の団体では、他の学部の人と音楽を通して知り合う機会があります。活動内容を見るときは、練習場所を使えるかに加えて、普段どんな曲を弾いているか、演奏会にどう参加するか、合わせる日や部費を確かめます。自分が楽しみたい活動と、実際に参加できる予定を照らし合わせます。
連弾や伴奏を引き受ける場合は、相手と合わせる日も練習計画の一部です。自分の音を読めた段階から、一緒に弾く時間を設けます。相手が息を吸うところ、休符のあとに入るところ、テンポが変わるところは、一人で弾いているときとは違って聞こえます。
合わせの途中で一音間違えても次の拍へ進めるように、楽譜には二人で始められる場所を決めておきます。「最初からもう一度」だけで練習すると、後半を合わせる時間が足りなくなります。中間部や最後の数小節からも始め、曲全体の呼吸を確かめます。
独奏の小さな演奏会も、学期の目標になります。華やかな曲を急いで追加する前に、いま弾いている曲を一度人に聴いてもらうことを考えてみます。音を間違えなかったかだけでなく、聴き手にどの旋律が届いたか、静かな終わりまで音楽が続いたかを振り返ります。
レッスンと学期の振り返り
大学生活に合わせたレッスンでは、練習の事情と、演奏で困っていることの両方を伝えてください。「来月は実習で平日にピアノを使えない」「この四小節で左手が強くなる」という二つの情報があれば、使える時間の中で何に取り組むかを一緒に選べます。
学期末には、最初に選んだ曲や目標へ戻ります。一曲を仕上げた、以前より旋律を歌えるようになった、友人と初めて最後まで合わせた。その演奏を聴いたうえで、次の学期に続けたいことを決めます。新しい曲を選ぶときにも、今回得た響きや動きが手がかりになります。
Vienna Piano Schoolでは、2026年10月から池袋・新宿のピアノスタジオで、中学生以上の方を対象に対面レッスンを行います。大学で音楽以外を学んでいる方の継続や、久しぶりの再開についても、現在の曲と生活に合わせて相談できます。通常レッスンは55分・4,800円、初回は30分の無料体験です。体験レッスンのお申し込みに、今弾いている曲と練習環境をお書きください。18歳未満の方は保護者の同意のもと、保護者からご連絡ください。
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