ピアノ初心者は何から始めるべき?最初の一か月で大切なこと

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

ピアノを始めたばかりの方に向けて、最初の一か月で意識したいことを整理しました。練習時間、楽器選び、姿勢、読譜、曲選びなど、無理なく続けるための基本をわかりやすく解説します。

この記事を書いた人

Enea(ウィーン・ピアノ・スクール主宰 / 講師)

ウィーン市立音楽芸術大学ピアノ科修了。ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学でも学び、東京・新宿でクラシックピアノを指導しています。初心者から音大受験まで、音色、身体の使い方、作品の構造を結びつけて見るレッスンを大切にしています。

ピアノを始めたいと思って検索をすると、教本、練習法、楽器、独学、レッスンと、情報が一気に出てきます。最初の一か月で全部やろうとすると、どれも中途半端になりやすいです。そして、続かなくなる理由のほとんどは、才能でも年齢でもなく、「最初に何を整えるか」が曖昧なままだったことです。

この記事では、ピアノを今から始める大人の初心者に向けて、最初の一か月で本当に大切なことを、目的、楽器、練習時間、姿勢、読譜、曲選びの順に整理します。難しい話はしません。ただ、ありふれた「楽しく始めましょう」では終わらせません。最初の一か月の進め方で、その後の半年から一年の上達はかなり変わります。

ピアノ初心者が最初に整えたい座り方を示す細い線画
最初の一か月は、曲数よりもまず座る位置と身体の軸を落ち着かせることが大切です。

この記事の要点

  • 最初に決めるのは、目的、練習時間、楽器の三つ。
  • 最初の一か月は、姿勢・手の形・拍・基本の読譜・短い曲、の五つに集中する。
  • 難しい曲を最初に選ぶと、ほぼ確実に止まる。
  • 独学でも始められるが、最初の一か月に作る癖は後で直しにくい。
  • 体験レッスンの一番の役割は、優先順位を整理すること。

最初に決めるべき三つのこと:目的、練習時間、楽器

ピアノを始めるとき、最初に向き合うのは音符ではありません。自分の生活の中で、ピアノをどう位置づけるかを決めることです。曖昧なままだと、教本も楽器も練習時間もすべて中途半端になります。

まず目的を、ひとつの文で書いてみてください。たとえば「半年後に、好きな曲を片手ずつでもいいから通して弾けるようになりたい」「一年後に、ショパンの簡単な小品に手をつけたい」「子どもの伴奏を、ゆっくりでもいいから家で弾きたい」。具体的であるほど、最初の一か月で何を練習すべきかが見えてきます。

次に練習時間です。社会人や子育て中の方に「毎日一時間」は現実的ではありません。最初の一か月は、十分から二十分を週に四日でも十分です。むしろ、長く座って疲れる練習よりも、短く集中して、毎回同じ場所で弾く方が定着します。練習時間の現実的な目安については、ピアノ初心者の練習時間はどれくらい?でも詳しく扱います。

三つ目は楽器です。これは最初に迷う方が一番多いところです。家にアコースティックピアノがあるなら、それを使ってください。新しく購入する場合、電子ピアノでも始められますが、避けたい条件があります。鍵盤が軽すぎるもの、ペダルが付いていないもの、音量調整ができても音色の幅がほぼ無いもの。これらは、最初は便利ですが、半年後に手や耳が育ちにくくなります。

楽器選びで最低限見るべきこと

  • 88鍵あること(76鍵では足りなくなる場面が早く来ます)。
  • 鍵盤に重さがあること(ハンマーアクション、または同等の表現)。
  • ペダルが付いていること(少なくとも一本)。
  • 夜は静かに練習できる環境であること(ヘッドホン対応で十分)。

最初の一か月でやるべきこと:五つに絞る

最初の一か月で全部を進める必要はありません。むしろ、絞った方が結果は出ます。私がレッスンで最初に整えていくのは、次の五つです。

1. 姿勢と手の形を、最初に作る

椅子の高さ、肘の位置、肩の力、手のひらのアーチ、指先の角度。地味に聞こえますが、最初の一か月で作る癖は、その後一年以上ついてきます。手首が落ちる、肩に力が入る、指が伸びきって弾く、といった癖が定着すると、後で直すのに時間がかかります。

姿勢と手の形は、文章だけでは伝わりにくい部分です。鏡で横から自分を見たり、スマートフォンで弾く手を録画したりすると、自分の癖が見えやすくなります。

2. 拍を感じる練習を、最初から入れる

初心者が早い段階でつまずく原因の多くは、指ではなく拍にあります。音符を読めても、拍が体に入っていないと、両手で合わせる段階で必ず崩れます。最初の一か月は、メトロノームを高速で使う必要はありません。ゆっくり歩くテンポで、四分音符を声に出しながら弾く。これだけで、後の数か月がかなり変わります。

3. 基本の読譜だけを、確実に

「楽譜が読めない」と感じている方も、最初の一か月で完璧を目指す必要はありません。まずは、ト音記号のド・レ・ミ・ファ・ソと、ヘ音記号のド・シ・ラ・ソ・ファ。この十音が、ほとんどの初心者教本の最初の数ページで使われています。読譜の進め方は、楽譜が読めなくてもピアノは始められる?でも詳しく扱います。

4. 短く、簡単な曲を、最後まで弾く

「短く」「簡単で」「最後まで弾ける」曲を一曲、最初の二週間以内に通せるようにしてください。完璧でなくて構いません。一曲を最後まで通す経験は、自信になるだけでなく、フレーズ、終わり方、息の取り方を体で覚える練習になります。

5. 練習の終わり方を決める

意外に見落とされるのが、練習の「終わり方」です。間違えたまま終わる、疲れて終わる、というのが一番もったいない。短い練習でも、最後に一回だけ、最初から最後まで通して、ゆっくりでも止まらずに弾いて終える。これだけで、次の練習が楽になります。

最初から難しい曲を選ばないほうがいい理由

大人の初心者がもっとも陥りやすいのが、最初に弾きたい曲を選ぶことです。気持ちは分かります。ショパンのノクターン、坂本龍一、久石譲、ジブリ、好きな映画音楽。これらを弾きたくてピアノを始める方は多いです。

ただ、最初の一か月でこれらに取り組むと、ほぼ確実に止まります。理由はシンプルです。譜読みに時間がかかりすぎて、姿勢、拍、読譜、音色のどれも育たないまま、譜面の解読だけで疲れてしまうからです。

これは「夢を諦める」という話ではありません。好きな曲は、最初の一か月で扱う曲ではなく、目標として置く曲です。先に基本を整えた方が、半年後にその曲に取り組むときに、はるかに楽に、そして美しく弾けます。

最初の一か月に向く曲、向かない曲

向く曲:右手だけで弾ける童謡、両手で四分音符だけの簡単な伴奏、一ページで終わる初心者教本の曲。

向かない曲:原曲の音源がきれいすぎて到達点が遠い曲、両手の音数が多い曲、テンポが速い曲、ペダルを多用する曲。

独学で始める場合の注意点

独学そのものは否定しません。動画も教本も、十年前より格段に充実しています。最初の一か月を独学で進めることは、十分に可能です。

ただし、独学で始める場合に気をつけたい点があります。多くは、自分では気づきにくい癖の話です。手首が落ちている、肩が上がっている、指が突っ張っている、拍より速く弾いている、間違えた場所だけを繰り返している。これらは、自分の演奏を録音して聴いても、原因までは見えにくいです。

独学とレッスンの線引きは、「指が動かない」「音が悪い」と感じ始めたときです。練習しているのに同じ場所で止まる、両手にしようとすると崩れる、というのは練習不足ではなく、原因が見えていないサインです。独学とレッスンの違いについては、ピアノは独学でも上達できる?レッスンを受けたほうがいい人の特徴でも扱います。

レッスンを受けると、最初に何が整理されるか

体験レッスンや初回レッスンの一番の役割は、たくさん教わることではありません。むしろ、優先順位を整理することです。初心者の方が最初に持ち込むのは、たいてい次のような状態です。

ピアノの鍵盤の近くに置かれた楽譜の写真
写真:Sebastian Rivera / Pexels。初回レッスンでは、姿勢や手の形だけでなく、楽譜をどう読み、練習に結びつけるかも整理します。

「教本を買ったが、どこから始めればいいか分からない」「動画を真似しているが、これで合っているか分からない」「弾きたい曲があるが、難しすぎる気がする」「家に楽器があるが、椅子の高さも分からない」。

これらは、一人で同時に解こうとすると重い問題ですが、レッスンで一度整理すると、次の一か月に何をすればいいかがかなり明確になります。私が初回レッスンで見るのは、ほとんどの場合、姿勢、手の形、拍、最初の曲の選び方の四つです。技術指導はその後で十分です。

初回レッスンで整理できること

  • 椅子の高さ、肘の位置、手のひらの形を実際に確認する。
  • 今の楽器が、最初の半年に合っているかを判断する。
  • 最初に取り組む曲を、目的とレベルから決める。
  • 家での練習を、何分・何回・何を、まで具体化する。
  • 半年後に向けて、無理のない見通しを共有する。

最初の一か月を、急がない

ピアノは、最初の数週間で一気に弾けるようになる楽器ではありません。それでも、最初の一か月の進め方を整えると、その後の半年から一年で、はっきりとした違いが出ます。基本に時間を使うことは、遠回りではなく、最短の道です。

もし、教本も楽器も用意したけれど、最初の一歩がうまく決まらない、と感じている方は、一度体験レッスンで現在の環境と目標を一緒に確認すると、最初の一か月に何をすべきかがかなり整理しやすくなります。講師の背景や指導方針については、講師プロフィールもあわせてご覧ください。

急がず、ただし最初の癖だけは丁寧に。最初の一か月は、そのくらいの気持ちで十分です。

よくある質問

ピアノ初心者は毎日練習するべきですか?

毎日でなくても大丈夫です。最初の一か月は、十分から二十分を週に四日程度でも十分に進みます。大切なのは長さよりも、毎回同じ姿勢・同じ手の形で座ることです。間を空けすぎると感覚が戻りにくいので、二、三日ごとに短く触れる方が、週末にまとめて長く弾くより定着します。

大人から始めても遅くありませんか?

遅くありません。ただし、子どもと同じ進め方ではうまくいきません。大人は理解する力が強い反面、無意識に力が入りやすく、間違いを直す前に弾き直してしまう癖がつきやすいです。最初の一か月で姿勢と拍を整えておけば、年齢はほとんど問題になりません。

電子ピアノでも始められますか?

始められます。88鍵あり、鍵盤に重さがあり、ペダルが付いているものを選んでください。鍵盤が軽すぎるキーボードや、ペダルのない練習用機種は、最初の半年はよくても、その後の音色や脱力の練習で不利になります。すぐにアコースティックを買う必要はありませんが、長く続ける前提なら、最初の楽器選びは少し慎重にしておくと後で楽です。

最初からレッスンを受けたほうがいいですか?

必ずしも初日から受ける必要はありませんが、最初の一か月の早い段階で一度見てもらう価値はあります。理由は、姿勢や手の形の癖は早いほど直しやすいからです。独学で進めてから半年後にレッスンに来る方は、ほぼ全員、手の使い方を直す時間が必要になります。最初に方向を一度確認しておくと、その後の独学もずっと効率的になります。

楽譜が読めなくても大丈夫ですか?

大丈夫です。最初の一か月で覚えるのは、ト音記号とヘ音記号で十音ずつ程度です。すべて読めるようになってから弾き始める必要はありません。読譜は、音を出しながら、リズムと一緒に少しずつ覚えていくのが、もっとも残りやすいやり方です。

この記事をシェア

関連記事