ベルリン芸術大学(UdK)のピアノ受験:日本からの出願と演奏準備

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

ベルリン芸術大学のピアノ学士を日本から受験する方へ。学歴書類と演奏動画の提出先、ソナタ全曲の準備、現地試験と理論・聴音、ドイツ語証明、現在の出願日程を詳しく解説します。

ベルリン芸術大学(Universität der Künste Berlin、UdK)のピアノ学士課程では、学歴などを記した正式な出願と、演奏動画による予備審査を並行して準備します。書類はmy.udk、動画はBEMUSという別のシステムに提出し、予備審査を通過すると現地での演奏試験と音楽理論の試験へ進みます。

日本から受験する方は、まず次の四点を確認してください。

  • 希望する入学期と、その出願期間
  • 高校や大学から取り寄せる学歴・履修の証明
  • 動画と現地試験、それぞれに必要な作品の全体
  • ドイツ語の水準と、証明書を提出する時期

ここではBachelor of Musicのピアノ専攻を扱います。修士課程やKonzertexamenには別の条件があります。また、同じベルリンにあるハンス・アイスラー音楽大学は別の大学です。募集要項を保存するときは、大学名に加えて課程名まで確かめましょう。

ベルリン芸術大学のコンサートホール入口とガラス張りの外観

UdKのピアノ学士課程

UdKのピアノ学士課程は標準8学期、240単位です。学則が挙げる学びの柱には、ソロ演奏、室内楽、歌曲伴奏があります。主科のレッスンに加え、現代のピアノ音楽、音楽史、音楽理論、聴音などを学び、他の演奏者と音楽を作る経験を重ねます。

受験校を考えるとき、私は「どの曲を弾けるか」と同時に、「その曲の何をもっと知りたいか」を聞きます。バッハの内声に興味があるのか、歌曲の言葉と伴奏の関係に惹かれるのか。同じ難易度の曲を弾いていても、関心の向きは違います。その関心が、入学後に深めたい勉強を考える出発点になります。

教授の演奏を聴く際も、音色の好みだけで決めず、フレーズの呼吸、声部の扱い、作品全体の構成に耳を向けてみてください。自分の演奏で迷っている場所を思い浮かべながら聴くと、レッスンで尋ねたい音楽上の問いが生まれます。教授への連絡や事前のレッスンとは別に、入学は大学の正式な審査で決まります。

日本の音大に在籍している方は、今の学びをどこから続けたいのかも整理します。学士課程を最初から受けるのか、既修得の学習を示して上の学期への出願を考えるのか、卒業後の修士課程を目指すのか。課程が変わると、学歴の条件も演奏課題も変わるためです。

日本の学歴書類と音楽歴

ピアノ学士の出願案内には、音楽教育歴を含む履歴書、学校の修了証明、該当する場合の履修・成績の証明、ドイツ語の証明、出願料の支払い証明が挙がっています。日本の高校や大学へ書類を依頼する前に、公式案内のドイツ語名と、自分が提出しようとしている書類を対応させます。

出願書類のドイツ語名

正式な出願はmy.udk。演奏動画はBEMUSへ提出します。

Lebenslauf履歴書・音楽歴
音楽教育を受けた期間、先生、学校、演奏経験を年月順に。
Zeugnis des Schulabschlusses学校の修了証明
高校などの修了を示す資料。卒業前の提出はFAQと窓口で確認。
Leistungsnachweis / Transcript of Records履修・成績の証明
上の学期への出願など、該当する場合。科目・単位・成績を示す。
Sprachnachweisドイツ語の証明
現在のピアノ学士ガイドはB2。入学手続きまでの追加提出を認める。
Nachweis der überwiesenen Bewerbungsgebühren出願料の支払い証明
支払いの処理日を含む銀行の明細・振込確認。

BEMUS:古典派ソナタ全曲と技巧的なエチュードの動画。学歴書類とは提出先が異なります。

高校に在学中で、出願期間中に最終の卒業証明を出せない場合について、UdKのFAQは直近の成績資料を提出し、最終の証明を入学手続きまでに補う方法を案内しています。自分の卒業時期と希望する入学期を添えて、どの資料を先に出すか確認してください。日本の3月卒業という日程も、年月を記せば相手に伝わります。

大学に在籍している方のTranscript of Recordsは、履修科目、単位、成績を示す資料です。演奏曲目の一覧とは役割が異なります。どの学習が認定され、どの学期に入れるかはUdKが判断します。「日本で2年学んだから、必ず第5学期から」という計算では決められません。

翻訳については、出身校で発行できる言語と書類の種類を調べたうえで、UdKの入学・試験事務を担当する窓口に必要な形式を尋ねます。たとえば、日本語の卒業証明、大学発行の英文成績証明をそれぞれ持っている場合は、その組み合わせを伝えます。必要な翻訳や認証が分かってから手配すれば、取り直しを減らせます。

ピアノ学士にVPDは必要でしょうか。 VPDはuni-assistによる学歴の事前審査書類ですが、UdKが公開する学士課程のVPD必須リストには、演奏専攻のピアノは含まれていません。ピアノ部門の案内にある海外の学歴とVPDの説明は、修士出願についてのものです。日本からの出願という理由だけで、全員がVPDを申し込むと判断しないようにします。個別の学歴について尋ねる際は「Klavier Bachelor」と希望課程を明記します。

音楽歴を記すLebenslaufには、習ってきた期間、先生、学校、演奏やアンサンブルの経験を年月順にまとめます。コンクール名だけを並べるより、いつ何を学んだかが読めることが大切です。日本の学校名は発行書類の表記にそろえ、年月は西暦に統一すると、履歴書と証明書を見比べられます。

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my.udkとBEMUSへの提出

my.udkではアカウントを作成・確認し、ピアノ学士課程の正式な出願を行います。学歴などの書類は、1ファイル5MB以内のPDFとして準備します。履歴書と成績証明を一つの大きなPDFにまとめる前に、それぞれの提出欄を確認しましょう。

演奏動画はBEMUSに提出します。my.udkと同じログイン情報を使い、正式に出願した課程に対応する動画をアップロードします。現在のピアノ学士案内では、形式はMP4・M4V・MOV、1ファイル2GBまで、最大8ファイル・合計12GBです。曲や楽章ごとに整理したファイル名と、実際の映像の中身を照合します。

my.udkの状態表示でin Vorbereitungは準備中、Antrag abgegebenは出願済みを意味します。入力した内容を保存しただけでは、提出済みになっていないことがあります。BEMUSではアップロード成功の表示を確認し、受付期間中に提出ファイルを見直せます。長い楽章では、最後の音まで再生して確かめてください。

現在の出願料は1件50ユーロです。公式案内は、銀行での処理日を示すWertstellungsdatum・Valuta・Value dateを含む支払い証明を求めています。振込先や海外送金の手数料の扱いは、その都度大学の案内で確認します。演奏の撮影と、送金・書類の取り寄せは、同じ日に終わる作業ではありません。録画の締切から逆算するときには、事務の時間も予定に入れます。

動画審査のソナタとエチュード

学士課程の予備審査では、古典派のソナタ全曲と、技巧的なエチュード1曲が求められます。ピアノ部門の案内は、ソナタの枠からシューベルトを明確に除いています。エチュードについて同じページにある「ショパン」の指定は修士課程の動画条件なので、学士の案内と読み分けてください。

録画は1年以内のもので、固定したカメラに本人と鍵盤が演奏中ずっと映る条件です。編集による切り貼りは認められません。一方、複数楽章の作品は、楽章ごとに別のテイクや場所で録画できます。全楽章をそろえることと、一つの楽章を途中で編集しないことの両方を守ります。

全曲の準備では、速い第1楽章だけに練習時間を集めないことが大切です。緩徐楽章では長い音の間にも和声が進み、終楽章では別の身軽さや集中が必要になります。楽章別に録画する予定でも、ときどき全曲を通して弾くと、一つのソナタとしての大きさや、楽章間の性格の違いが見えてきます。

たとえばモーツァルトのゆっくりした楽章で、右手を美しく歌わせたいと思ったら、左手の和声を先に聴きます。私はレッスンで、低音だけを弾きながら旋律を歌う練習をよく使います。音を長く保つ場所でも、次の和音へ向かう力は残っているでしょうか。伴奏を戻したとき、その行き先が細かな音に埋もれないように整えます。

エチュードは、指が動くことに加え、音型の中から何を聴かせるかを決めます。旋律を含む音、和声が変わる場所、音域が広がるところを楽譜で追い、速度を上げてもその違いが残るか録音で聴きます。自分の得意な技術と、今後深めたい音楽性の両方を考えて選曲します。

撮影機材や音割れの確認は、ピアノの録画審査の準備でも扱っています。UdKへの提出では、一般的な撮影の工夫に加え、志望課程の全曲・画角・編集条件を優先します。

現地試験の演奏プログラム

学士の現地試験には、J. S. バッハの作品、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンのソナタ全曲、ロマン派以降の自由曲を準備します。短い初見演奏も含まれ、入学規則には音楽に関する短い面談と、理論・聴音の筆記試験が記されています。

学士課程の二つの演奏審査

Vorauswahl

予備審査・動画

  • 古典派のソナタ全曲。シューベルトは対象外。
  • 技巧的なエチュード1曲。

Zugangsprüfung

現地での演奏

  • J. S. バッハの作品。
  • ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンのソナタ全曲。
  • ロマン派以降の自由曲。
  • 初見演奏と音楽に関する短い面談。

現地試験では、理論・聴音の筆記試験も受けます。

楽章別の録画と、演奏途中の編集

各楽章を別のテイクや場所で録画することは認められています。一つの楽章の演奏を途中で切り貼りする編集はできません。提出する作品の全楽章をそろえます。

試験官が一部を指定して聴く場合も、受験者は作品全体を準備します。途中から弾く練習をするなら、難所の直前だけでなく、主題が戻る位置や調性が変わる位置から始めてみます。その場所の役割を聴いてから弾くと、曲頭からの勢いに頼らず音楽に入れます。

動画を提出した後は、ソナタを保ちながらバッハと自由曲を仕上げます。毎回同じ曲から練習せず、ある日はバッハを最初に、別の日は自由曲を最初に弾いて、聴き手の前で音楽が立ち上がるか試します。長く弾いた後には安定する部分でも、最初の一音から同じ集中を作れるかを聴きます。

バッハでは、主題が内声に移ったときにも追いかけられるかが大切です。ロマン派の作品では、旋律の長い音を伴奏がどう支えるか、和声の変化にペダルがどう応じるかを考えます。時代の違いは、音量やテンポを大きく変えるだけでなく、声部の聴き方や発音の違いとして演奏に表れます。

初見は、受験曲より易しい譜面で拍を保つ習慣を作ります。弾く前に調号、拍子、低音の進み方、同じ音型の繰り返しを読みます。両手のリズムがそろう場所と、片手が音を保つ場所を区別し、縦の響きを聴きながら進めます。一音ごとに戻る練習とは、目的を分けて取り組みます。

音楽理論・聴音の準備

UdKの入学規則は、理論・聴音の筆記試験を約1時間とし、音程、三和音、七の和音と転回形、カデンツ、旋律、その他の音の並びを挙げています。ピアノの難曲が弾けることと、聴いた和音を判断して書けることは、練習の経験が異なります。演奏曲が仕上がってから始めるのではなく、並行して取り組みます。

ピアノの前で五線ノートに鉛筆で書き込む手元

日本語で覚えた用語と、試験で読むドイツ語も結び合わせます。Intervallは音程、Dreiklangは三和音、Umkehrungは転回形です。用語を見たら、意味を日本語で答えるだけでなく、実際にその響きを弾く、歌う、書くところまで進めます。言葉と耳と譜面を一緒に使う練習です。

ソナタの終止を題材にするときは、まず低音を歌い、その上の和音がどこへ向かうかを聴きます。譜面上の音を縦に拾うだけでなく、属和音から主和音へ落ち着く感じを確かめます。同じ和音でも転回形が変われば低音の動きが変わるので、その違いを鍵盤と耳の両方で追います。

短い旋律の聴き取りでは、最初から全音を一度に書こうとせず、拍とまとまり、上行・下行、終わりの音を順に聴きます。どの部分が残り、どこから曖昧になったかを先生に伝えると、必要な課題を選べます。演奏のレッスンとは別に理論や聴音の専門的な指導が必要な場合も、早い段階で学習の時間を確保します。

ドイツ語証明とレッスンの会話

現在のピアノ学士の出願案内はドイツ語B2を求め、証明書は入学手続きまでに追加提出できるとしています。大学の語学証明ページにはGoethe、telc、ÖSDのB2など、受理する証明の種類が記されています。ピアノは個別の条件を確認する課程として挙げられているため、他専攻向けの一般説明だけで提出時期を決めないようにします。

ここには公式ページ間の相違があります。英語版のピアノ部門ページはA2で開始し、第2学期末までにB2へ到達する扱いを記していますが、現在の学士出願ガイドは入学手続きまでのB2を示しています。準備はB2の提出を前提に進め、A2での開始を希望する場合は、ピアノ部門と入学窓口に適用を確認してください。

資格の勉強に加え、知っている曲を使って短く話す練習もできます。「Ab dem zweiten Thema, bitte.」と言われたら、第2主題の場所を探して弾く。「Welche Stimme ist hier wichtig?」なら、どの声部を聴かせたいかを示す。単語を覚えることと、楽譜の場所や響きに応じることを一緒に練習します。

自分から説明するなら、「Die Melodie liegt hier in der linken Hand.」と左手の旋律を示して弾いてみます。その後、別のバランスを試すよう促されたら、響きを変えて応じます。こうした会話には、曲を聴く力も必要です。資格と音楽の会話の準備は、音楽留学に必要なドイツ語で詳しく紹介しています。

入学期と日本での受験準備

2027年夏学期入学に向けた現在の出願期間は、2026年9月20日〜10月20日です。ピアノ部門は学士の現地演奏試験を2027年1月25日、会場をJoseph-Joachim-Saal、理論試験を1月26日と案内しています。当日の集合時刻などは、届いた招待の内容に従います。

冬学期の通常の出願期間は2月20日〜3月20日です。動画の締切については、学士出願ガイドが出願と同じ期限を示す一方、ピアノ部門ページは冬学期向けに4月1日を挙げています。希望する入学期の締切を部門へ確認し、後の日付が認められると分かるまでは、書類と動画の両方を3月20日までに整える予定を立てます。

問い合わせ先も内容に応じて選びます。課題曲や演奏審査についてはピアノ部門、学歴書類や入学手続きについては入学・試験事務の窓口、アップロードの不具合はBEMUSの技術窓口が基本です。希望する課程と入学期、すでに取得していれば出願番号を添え、質問を一つの判断に絞ります。曲目については、作曲家、作品名、作品番号、提出する楽章を記します。

受験準備の一週間には、ソナタの全楽章、バッハと自由曲、初見、理論・聴音、ドイツ語で音楽を話す時間を少しずつ置きます。受験準備を通して、入学後に必要な音楽の力を育てていきます。ソロ以外の曲に触れ、歌手や他の楽器と合わせる経験も、UdKで学びたい内容を考える材料になります。

Vienna Piano Schoolでは、中学生以上の方と大人を対象に、ピアノの演奏準備と、音楽に関わるドイツ語・英語、留学に向けた連絡や出願の相談を行っています。オンラインレッスンは現在受講でき、対面レッスンは2026年10月から池袋・新宿のピアノスタジオで始まります。30分の無料体験レッスンでは、希望課程と現在の曲目をもとに、演奏、音楽の会話、今後必要な学習を一緒に考えます。

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