大人のピアノは30分で足りる?レッスン時間の選び方

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

レッスンの長さは、曲数だけでは決まりません。一つの課題を聴き、試し、前後の音楽へ戻す。その時間から、自分に合う枠を考えます。

大人のピアノ教室を探すと、30分、45分、60分、90分など、さまざまなレッスン時間が並んでいます。長いほうがたくさん教わりそうですが、仕事のあとに集中できるか、今の自分に必要なのかも気になるところです。

30分でも、一つの課題を聴いてもらい、その場で試すレッスンはできます。長めの時間が役立つのは、曲の前後まで弾く、先生の実演を聴く、別の箇所でも試すなど、その課題を掘り下げたいときです。曲数だけでなく、先生とのやり取りにどれくらい時間を使いたいかで考えてみてください。

レッスンを比較するときは、何ページ進んだかに加え、どの音を聴き分け、何を試せたかを振り返ります。短い二小節を扱う場合でも、音を一度直して終わるのか、前後のフレーズへ戻して確かめるのかで、必要な時間は変わります。

レッスン時間の見方

教室の案内では、個人レッスンかグループかを先に確認します。たとえばヤマハの大人向けピアノには、個人30分、グループ60分という形式があります。グループでは個別の指導、各自の練習、アンサンブルなどが組み合わされるため、数字だけで個人レッスンの二倍と比較することはできません。

同じ個人レッスンでも、入れ替えや楽器の準備が枠に含まれる場合があります。島村楽器のピアノサロンの案内では、30分に入れ替え・準備時間を含むと記載されています。通いたい教室の条件を見て、実際にどんな時間になるかを確かめます。

ここからは、一対一のレッスンで、先生が自分の演奏を聴いている場面を中心に考えます。

時間を何に使いたいか

30分

一つの課題を聴いてもらい、その場で試す。

説明を聞いたあと、自分でもう一度弾く時間があるか。

55〜60分

一つの変化を前後のフレーズや別の箇所へ広げる。

実演を聴く、試す、聞き直す往復をどこまで行いたいか。

90分

長い作品の通奏と細部の検討など、まとまった音楽を扱う。

後半も集中して聴けるか。持ち帰る練習の中心が明確か。

二小節をどこまで聴くか

ピアノの鍵盤に置かれた両手

バッハ《平均律クラヴィーア曲集》第1巻、ハ長調プレリュードの冒頭です。動く音の並びは短く、最初の二小節だけならすぐに弾けます。それでも、レッスンで聴きたいことは複数あります。

バッハBWV846:冒頭の二小節

楽譜は横にスクロールできます。

バッハのハ長調前奏曲の冒頭。下の二分音符とタイで続く音の上で、16分音符が動く。1893年のCzerny版。
楽譜を大きく表示

たとえば、上の音が動く間に、下の音まで早く離れてしまうとします。先生が楽譜の長い音を示し、その音だけを保って弾いてみる。次に動く声部を加え、響きが続くかを聴く。ここまでなら、短い範囲に集中した一つの課題になります。

そのあと前後を続けると、別のことが分かるかもしれません。音を保とうとして手全体が固まる。次の和音へ進むと、また早く離す。ペダルを加えると、前の響きが残りすぎる。長めのレッスンでは、最初の修正が音楽の中でも働くかを、少し範囲を広げて聴けます。

これは、長い時間なら必ず全部扱うという予定表ではありません。実際に弾いた音が、次に何を試すかを教えてくれます。一つの説明を聞いてすぐに変わる日もあれば、先生の実演を聴き、動きを変え、もう一度比べる時間が必要な日もあります。

30分が合う場面

30分のレッスンでは、今日聴いてもらいたい箇所を一つ選んでおくと、音楽へ早く入れます。冒頭のリズム、旋律と伴奏のバランス、前回の注意が家で再現できなかった場所など、現在の課題を中心に扱います。

短い曲を一曲弾き、気になる箇所を試し、次の練習を確かめる。そのようなまとまりが自分に合うなら、短めの枠は続けやすい選択肢です。毎回あれもこれも持ち込むより、一つの変化を家の練習へ持ち帰ります。

ただし、初心者だから説明がすぐ終わるとは限りません。初めて読む記号を確かめ、先生の音を聴き、自分で弾き、その違いをもう一度聴く。新しいことに触れる段階ほど、その往復に時間を使う場合があります。

30分を選ぶなら、質問を聞いてもらう時間や、教わったことをその場で試す時間があるかも見てください。曲を一度弾いて、先生の説明を聞いたところで毎回終わるなら、課題の絞り方か時間の長さを相談する目安になります。

55〜60分で広げられること

少し長い枠では、一つの課題を別の場面でも試せます。バッハの冒頭で長い音を保てたら、和音が変わる場所へ進み、同じように聴けるかを確かめる。旋律の弾き方を変えたら、長いフレーズに戻して、歌が続くかを聴く。その時間に余裕が生まれます。

大人の学び直しでは、得意なことと、忘れていることが混ざっている場合もあります。曲の表情を考えながら、途中で読譜やリズムの基本へ戻る。その寄り道が必要なとき、長めの枠なら一つのレッスンの中で行き来できます。

二曲を扱う場合も、それぞれを急いで一度ずつ弾くより、共通する課題を探します。一曲目で伴奏を静かにする感覚をつかみ、二曲目の別の音形で試す。曲数を増やすことより、学んだことが別の音楽でも使えるかを確かめます。

また、先生の実演を聴く時間も大切です。打鍵の説明を言葉だけで聞くより、二つの響きを続けて聴いたほうが、目指したい音をつかめることがあります。そのあと自分で試し、先生と同じところを聴けているかを話します。

90分を考える場面

長い作品を通して聴いてもらい、そのあと細部へ戻りたいときには、さらに長い枠が役立つ場合があります。通奏で初めて分かるテンポの変化、後半で薄くなる集中、曲全体の強弱の配分などを扱えます。

ただし、演奏時間の長さだけで90分を選ぶ必要はありません。数分の曲でも深い検討はできますし、長い曲の一部分を集中的に扱う日もあります。今回の目的が、全体を聴いてもらうことなのか、一つの技術的な箇所を解くことなのかを先に決めます。

長い枠では、弾き続けることだけが勉強ではありません。先生の演奏を聴く、楽譜を見ながら和声や声部を考える、自分の演奏について話す時間も含めます。後半に説明を聞いても頭へ入らない、同じ失敗を繰り返すようなら、時間の使い方を変えるか、短い枠を検討します。

レッスンを受けたあとに、何を家で試すかが残ることを大切にしてください。長い時間に多くの注意を受けても、練習の中心が分からなければ、次の一週間に生かしにくくなります。

時間と頻度は別に考える

一回60分を月に一度受けることと、30分を月に二度受けることでは、合計時間が同じでも、先生に聴いてもらう間隔が違います。短い間隔なら、家で試した結果を早く見てもらえます。長い一回なら、その場で一つの作品を深く扱う余裕があります。

どちらが合うかは、次のレッスンまでに自分で何を進められるかにも関わります。新しい読み方や動きを覚えている途中なら、間違った理解のまま長く練習していないかを確かめたいところです。自分で課題を整理できる方なら、まとまった作品を準備して聴いてもらう方法も考えられます。

まず必要な頻度を考え、その中で一回の長さを選びます。月の合計分数だけを合わせるより、練習とレッスンがどのように交互に来るかを見てください。頻度については、大人のレッスンを月何回にするかで詳しく扱っています。

仕事帰りの集中と通い方

東京で仕事帰りに通うなら、移動を含めた一日の流れも考えます。駅へ着いてすぐに急いで弾き始める日と、少し落ち着いてから始められる日では、同じ長さでも感じ方が変わります。

通いやすさは、ご自宅からだけでなく、普段出発する職場や学校からの経路でも比べてください。レッスンが長いほど移動の回数が減る、とは一概に決まりません。頻度と合わせて、無理なく続けられる予定を相談します。

途中で音を聴く集中が薄れたら、そのことを先生へ伝えます。弾く課題から、先生の実演を聴く時間へ切り替えることもできます。毎回最後のほうで理解が曖昧になるなら、開始時刻、扱う内容、レッスンの長さのどこを変えるとよいかを話します。

家での練習時間を長く取れない週には、レッスンで扱う曲を絞る方法もあります。短時間の練習でも確かめられる課題を選び、次回にその音を聴いてもらう。忙しさに合わせて、音楽の中身も調整していきます。

体験で確かめたいこと

体験レッスンでは、終了時刻までに何曲弾けたかより、先生との往復を見てみてください。自分の演奏を聴いてもらい、説明や実演を受け、自分でもう一度弾く。その結果を一緒に聴く時間があったかが、参考になります。

「途中から分かってきたところでもう終わった」「後半は少し疲れたけれど、先生の実演を聴くと理解できた」といった感想は、時間選びの材料です。初回の緊張もあるため、その一回の印象を先生と話しながら、今後の受け方を考えます。

継続レッスンは55分・90分の枠を想定しています。受講方法や空き状況は別途ご案内し、音楽の目標、集中の持ち方、通いやすさに合わせて相談します。まずは体験の中で、どんな説明と練習が自分に合うかを聴いてみてください。

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