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楽譜が読めなくてもピアノは始められる?初心者が最初に読むべき音符

Enea|
楽譜が読めなくてもピアノは始められる?初心者が最初に読むべき音符

この記事を書いた人

Enea(ウィーン・ピアノ・スクール主宰 / 講師)

ウィーン市立音楽芸術大学ピアノ科修了。ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学でも学び、東京・新宿でクラシックピアノを指導しています。初心者から音大受験まで、音色、身体の使い方、作品の構造を結びつけて見るレッスンを大切にしています。

「楽譜が読めないから、ピアノを始められない」とおっしゃる方は、想像以上に多くいます。子どもの頃から音符に苦手意識があった方、学校の音楽の時間でつまずいた方、そもそも一度も楽譜と向き合ったことがない方。どの方も、「まずは楽譜を読めるようにしてから」とハードルを上げて、結局始められないままになっています。

この記事では、初心者の読譜について、できるだけ現実的に整理します。最初から完璧に読める必要はないこと、最初に覚えるべき音はごく少ないこと、音符より先にリズムを読む方が良いこと、そして読譜の苦手意識は最初の一か月でかなり変わることまで、順を追って書いていきます。

空の五線譜を指でたどりながら鍵盤と結びつける様子の線画

この記事の要点

  • 楽譜が読めなくてもピアノは始められる。読譜と演奏は同時に育てるもの。
  • 最初に覚えるのは、ト音記号とヘ音記号の十音だけで十分。
  • 音符より先に、リズムを読むほうが上達につながりやすい。
  • 初心者がつまずきやすい場所は、ヘ音記号、加線、オクターブ違いなど共通している。
  • 苦手意識のほとんどは、最初の一か月で大きく変わる。

楽譜が読めなくてもピアノは始められる

結論から書きます。楽譜が読めなくても、ピアノは始められます。むしろ、ほとんどの大人初心者は、ほぼ読めない状態から始めています。「読めるようになってから」と待っていると、何年経っても始められません。

誤解されがちですが、読譜は「ピアノを始める前提条件」ではなく、「ピアノを弾きながら一緒に育てる技術」です。音を出しながら、それがどの音符に対応するかを確認する。リズムを取りながら、その動きが楽譜上のどの形に対応するかを確認する。こうした往復の中で、読譜は少しずつ身についていきます。

逆に、楽譜だけを先に覚えようとすると、机の上の知識になりがちで、いざ鍵盤に向かったときに思い出せません。読譜は、鍵盤と切り離さない方が早く身につきます。最初の一か月で何を整えるかについては、ピアノ初心者は何から始めるべき?最初の一か月で大切なことにも詳しく書いています。

最初に覚えるべき音は、十音だけ

「五線譜全部を覚えなければ」と思うと、確かに気が遠くなります。しかし、最初の一か月で必要な音は、はるかに少ないです。具体的には、次の十音から始めます。

最初の一か月で覚える十音

  • ト音記号(右手):ド・レ・ミ・ファ・ソ。真ん中のドから順に上へ。
  • ヘ音記号(左手):ド・シ・ラ・ソ・ファ。真ん中のドから順に下へ。

この十音だけで、ほとんどの初心者教本の最初の数ページが弾けます。最初の一週間は、この十音を、楽譜と鍵盤を交互に見ながら、ゆっくり結びつけていきます。一度に全部を覚える必要はありません。一日二、三音ずつでも十分です。

ト音記号とヘ音記号にまたがる音の位置を示す五線譜の参考図
参考図:G / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)。英語の音名で、ト音記号とヘ音記号の音の並びを確認できます。

慣れてきたら、次のドへ、その上下の音へ、と少しずつ範囲を広げます。半年もすれば、両手で二オクターブ程度の範囲は、見て弾けるようになります。これは、年齢に関係なく身についていきます。

音符よりも先に、リズムを読む

初心者の多くは、「楽譜を読む」と聞くと、まず音符の名前を当てることをイメージします。しかし、現場で見ていると、音符はある程度読めるのに弾けない、というケースの方が圧倒的に多いです。原因は、音符ではなくリズムにあります。

リズムを読むとは、音符の長さと、拍の流れを把握することです。四分音符、八分音符、二分音符、付点、休符。これらが組み合わさってリズムの形を作ります。音符の名前が分かっても、リズムが体に入っていなければ、弾けません。両手で合わせる段階で必ず崩れます。

全音符、二分音符、四分音符、八分音符以降の長さを示す参考図
参考図:Johannes Rössel / Wikimedia Commons(Public domain)。音符の形だけでなく、拍の長さとして読むことが大切です。

最初の一か月では、音符を声に出して数えながら弾く時間を毎回入れてください。「いち・に・さん・し」とゆっくり数える。それだけで、リズム感の土台が育ちます。メトロノームを使うのは、もう少し慣れてからで構いません。最初は、自分の声で拍を取る方が、体に入りやすいです。

初心者が楽譜で混乱しやすい場所

読譜に取り組み始めると、ほとんどの初心者が同じ場所でつまずきます。前もって知っておくと、混乱が減ります。

楽譜で混乱しやすい場所

  • ヘ音記号:ト音記号と同じ感覚で読むと、ずれた音を弾いてしまう。最初は別の体系として覚える方が早い。
  • 加線:五線より上や下に出る音。線が一本ずつ増えるたびに、何の音か分からなくなる。
  • オクターブ違い:同じ「ド」でも、楽譜上の位置が違うと、鍵盤上の場所も違う。
  • 調号と臨時記号:シャープやフラットが曲の途中で変わると、どの音に適用されるか分かりにくくなる。
  • 繰り返し記号:D.C.、D.S.、リピート記号、コーダ。曲の流れを途中で見失う原因になりやすい。

これらは、ひとつずつ確認していけば、必ず分かるようになります。むしろ、混乱するのは普通です。ここでつまずいて「自分には才能がない」と感じる必要はまったくありません。

五線の上に加線が増えていく音符の参考図
参考図:Mets501 / Wikimedia Commons(Public domain)。五線から外れた音は、加線を一本ずつ数えて場所を確認します。

読譜の練習を、毎日に組み込む方法

読譜が早く身につく人と、なかなか身につかない人の違いは、才能ではなく、毎日少しずつ触れているかどうかにあります。ピアノの前で弾く時間とは別に、楽譜を読む時間を短く確保すると、半年後の景色が大きく変わります。

具体的には、次のような形が現実的です。

一日5分、楽譜を見て、音符の名前を声に出すだけの時間を持ちます。鍵盤に触れる必要はありません。電車の中でも、寝る前でも構いません。「ド・レ・ミ・ファ・ソ」と楽譜を指でなぞりながら読む。これを毎日続けるだけで、視覚的な認識が早くなります。

もう一つは、弾いている曲の楽譜を、弾く前に一度ゆっくり「目で読む」ことです。指は動かさず、頭の中で音を鳴らしながら読む。最初は時間がかかりますが、慣れてくると、初見の曲を弾く力にもつながります。

こうした読譜の練習は、ピアノを弾く時間が短い日でも続けやすく、続けるほど効きます。練習時間そのものの組み立てについては、ピアノ初心者の練習時間はどれくらい?毎日何分から始めるべきかにもまとめています。

レッスンでは、楽譜の読み方をどう進めるか

読譜の苦手意識を持って初回レッスンにいらっしゃる方には、まず安心していただきたいことがあります。レッスンの最初に楽譜を「テストされる」ことはありません。むしろ、本人がどこまで読めて、どこから読めなくなるかを、こちらから探していく時間です。

レッスンで読譜を進めるときに大切にしているのは、楽譜と鍵盤と音を、できるだけ同時に結びつけることです。机の上で楽譜だけを読む練習より、音を出しながらその音符を確認する方が、ずっと早く身につきます。初心者にとっては、視覚(楽譜)、聴覚(音)、運動(指の動き)の三つを一緒に育てる方が、定着しやすいからです。

もう一つは、楽譜の「読めた範囲」をはっきり把握することです。「だいたい読める」のままで進むと、必ずどこかで詰まります。レッスンでは、本人が「本当に読めている音」と「弾いた経験で覚えている音」を分けて確認します。後者だけが多いと、新しい曲を弾くたびに最初からやり直しになります。

独学で読譜を進めている方が、レッスンと組み合わせるかどうか迷うときの判断材料は、ピアノは独学でも上達できる?レッスンを受けたほうがいい人の特徴にも書いています。

苦手意識は、最初の一か月で大きく変わる

「楽譜が読めない」という不安は、思っているよりも早く解消します。最初の一か月で十音を覚え、リズムを声に出して数える習慣ができれば、二か月目には、楽譜を見るだけで指が動き始めます。三か月目には、初見で短い曲が弾けるようになる方も多いです。

逆に、読譜を「特別な訓練」と捉えると、いつまでも苦手なままになります。ピアノを弾く時間の中に、自然に読譜を組み込む。それが、もっとも続けやすく、もっとも早く身につく方法です。

楽譜に苦手意識がある方も、最初からすべて読める必要はありません。初回体験レッスンでは、今の読譜の状態を確認しながら、無理のない読み方の進め方を一緒に決めていきます。講師の背景については、講師プロフィールもあわせてご覧ください。

よくある質問

楽譜が全然読めません。それでも始められますか?

始められます。最初の一か月で必要なのは、ト音記号とヘ音記号で十音ずつ程度です。これ以上を最初から覚える必要はありません。弾きながら少しずつ読めるようになっていきますので、「読めるようになってから」と待つ必要はありません。

どれくらいで楽譜が読めるようになりますか?

目安として、最初の一か月で十音、三か月で両手の基本範囲、半年で二オクターブ程度の範囲、一年で簡単な曲の初見、というイメージです。毎日5分、楽譜を読む時間を取れば、年齢に関係なくこのペースで進みます。短時間でも続けることが、もっとも効きます。

楽譜を覚えてから弾くのは良くないですか?

悪くはありませんが、最初の段階ではおすすめしません。覚えて弾いてしまうと、楽譜を「読んでいる」感覚が育たないまま進んでしまいます。新しい曲に取り組むたびに、最初から覚え直すことになり、長期的には大きな遠回りになります。最初は楽譜を見ながらゆっくり弾く方が、結果として早く進みます。

大人になってから楽譜を読めるようになれますか?

読めるようになります。大人の方が、概念的に整理して覚えるのが得意なので、子どもより早く読めるようになる方も多いです。子どもは時間をかけて感覚的に身につけますが、大人は「五線とドの位置の関係」を理屈で覚えられます。最初の数週間が一番難しく感じますが、そこを越えるとぐっと楽になります。

数字譜やコードネームでも始められますか?

短期的に「好きな曲を一曲弾く」だけが目標なら、それでも始められます。ただ、長くピアノを続けたい場合や、いろいろな曲に挑戦したい場合は、五線譜を読めるようにしておく方が、結果として自由度が大きく広がります。最初の数か月だけ、両方を併用して、少しずつ五線譜に移行する形が現実的です。