20年ぶりのピアノ再開:曲選びと最初の8週間の練習計画

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

昔の曲を思い出す楽しさと、今の耳で音楽を聴く面白さ。クレメンティの譜例を使い、再開地点の見つけ方から両手・音色・途中開始まで、最初の8週間の練習を考えます。

20年ぶりにピアノを再開するときは、昔の曲を少し弾くことと、短い楽譜を新しく読むことの両方から始めます。覚えている音楽、今の読譜、両手の動きは、それぞれ違う戻り方をします。最初の8週間では、その違いを見ながら曲と練習量を選び、旋律やフレーズを聴いて弾く時間を育てていきます。

私は久しぶりの演奏を聴くとき、間違えた音だけでなく、どこで自然に歌えているかにも耳を向けます。音を探すために止まっていても、その手前のフレーズには以前の音楽経験が表れていることがあります。そこを生かしながら、今必要な読み方や動きを考えます。

再開時に見るのは、主に次の4点です。

  • 楽譜:音の上下やリズムを追えるか。覚えている曲と新しい曲で違いがあるか。
  • 両手:どちらかが休む場所や、左右が別のリズムになる場所で拍を保てるか。
  • 響き:旋律と伴奏の違い、音の終わりを聴けるか。
  • 練習量:集中や動きが変わるのはいつか。練習後の体の状態はどうか。

以下の8週間は、練習を振り返るための計画例です。以前の水準へ戻る期限ではありません。予定を進めるかどうかは、日付よりも、その段階で聴き取れた変化を基準にします。

最初の8週間の見取り図

1〜2週目

今の演奏を知る

昔の曲と、新しく読む短い楽譜を比べる。練習量と最初の曲を決めます。

どこで音を探し、どこでは自然に歌えているか。

3〜5週目

短い箇所を深める

リズム、左右の休符、指使いを確かめ、旋律と伴奏を聴き分けます。

片方が休む間も、もう片方の音楽が続いているか。

6〜8週目

曲の流れへ戻す

途中から始める場所を増やし、部分練習を前後のフレーズへ戻します。

通して弾いたときにも、練習した響きや拍が残るか。

再開地点と最初の曲

昔の楽譜を開いて指が自然に動くと、嬉しいものです。ただ、冒頭からは弾けても、途中の小節を指されると始められない場合があります。覚えている動きが先へ運んでくれている一方で、楽譜から演奏を組み立てる力には、まだ手を入れる余地があります。

まず昔の弾きやすかった曲から数小節を選び、冒頭と途中の2か所から弾いてみます。次に、知らない短い旋律を片手で読んでみてください。この2つを比べると、「記憶が戻らない」と「音を読むのに時間がかかる」を分けて考えられます。昔の曲だけを繰り返していると、後者が見えにくくなります。

最初の主な練習曲には、音を探す作業だけで時間を使い切らず、旋律と伴奏を聴ける曲を選びます。以前ソナチネまで弾いていた方なら、短いソナチネの一部や、それより音数の少ない作品が候補です。以前の学習がもっと初期だった方には、片手の旋律から両手へ進む短い曲が合います。曲名や昔使っていた教材だけで難度を決めず、数小節を実際に読んで選びます。

久しぶりに弾きたい憧れの曲は、今後の目標として楽譜を開いておきます。その曲のどこに惹かれるのかも大切です。ゆっくりした旋律の美しさなら、まず短い曲で歌と伴奏のバランスを育てる。軽い動きが好きなら、短い音階や明瞭なアーティキュレーションを含む曲を選ぶ。最初の1曲にも、戻りたい音楽への手がかりを持たせます。中級者のクラシック選曲には、学びたい力ごとの候補があります。

1〜2週目:短い演奏と練習量

最初の週は、選んだ曲の4〜8小節を弾き、拍が止まった場所を確かめます。音が読めなかったのか、次の位置へ手が間に合わなかったのか、左手が入ると右手も止まったのか。原因によって、その後にする練習は変わります。

一度短く録音しておくと、弾いている最中には気づかなかった音も聴けます。例えば、自分では右手をはっきり弾いたつもりでも、録音では左手の最初の音ばかりが目立つことがあります。気づいた場所を楽譜に印し、次の試行ではその響きに耳を向けます。録音を整った演奏に仕上げる作業へ変えず、今の弾き方を知る材料として使います。

練習時間は、最初から長く固定せず、短い区切りから試します。例えば10〜15分ほどを予定し、その中で動きや集中がどう変わるか見ます。これは全員に適した所要時間を決める数字ではありません。時間を延ばした日は、同時に速さや難度まで大きく上げず、練習後の状態も含めて調整します。

2週目には、当面取り組む短い曲と、繰り返し戻る数小節を決めます。「毎日最初から最後まで弾く」という予定より、「この4小節で左手が入っても拍を保つ」という対象があると、短い時間でも何を聴くかが定まります。生活に合わせた時間の配分は、ピアノの練習時間の考え方でも扱っています。

楽器の状態も一度確かめておきましょう。久しく使っていなかったアコースティックピアノは調律師に相談し、電子ピアノは各鍵盤とペダルの反応を確認します。特定の鍵盤だけ音が出にくいときに、自分の指の弱さと決めつけて押し続けないためです。

Vienna Piano School
グランドピアノを弾く生徒に、楽譜を示しながら指導する講師。

クラシックピアノ個人レッスン

55分・無料の体験レッスン。

池袋・新宿のピアノスタジオでの対面レッスン。

ウィーン育ちのコンサートピアニスト、Enea。

Enea

ウィーン育ちのコンサートピアニスト

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3〜5週目:楽譜と両手の動き

この時期には、1つの短い譜例から読み方、音の終わり、左右の役割を確かめます。以前ソナチネを学んだ方なら、クレメンティ《ソナチネ》Op.36-1 第1楽章の冒頭がよい材料になります。今この音数を読むこと自体が負担なら、同じ課題をもっと短い曲で扱います。

クレメンティ:休符と左右の受け渡し

ソナチネOp.36-1 第1楽章、第1〜4小節。

譜例は横にスクロールできます。

ハ長調、2分の2拍子。第1小節の右手はド、ミ・ド、ソ、ソ。左手の低音は休符で区切られる。第4小節の後半は、右手が休んでも左手の8分音符が続く。
譜例を大きく表示

第1小節:音価

右手の4分音符と8分音符の長さを、まず声や手拍子で確かめます。

第1〜3小節:休符

右手が続く間も、左手は書かれた休符で音を終えます。

第4小節:左手の線

右手の休符を、左手の動きへ耳を向ける場所として弾きます。

第1小節の右手は、ドを4分音符で弾き、ミ・ドを8分音符、ソ・ソを4分音符で弾きます。まず鍵盤から少し離れ、音の長さを声や手拍子で確かめます。そのあと右手で弾くと、音を探すこととリズムを作ることを、少し分けて扱えます。

この曲の拍子は2分の2拍子です。初めに細かな音価を確認するときは4分音符の単位で数えても、フレーズとして弾くときには、1小節を大きな2拍で感じてみます。音が増えるたびに拍の幅まで狭くなると、第3小節の8分音符が急いでしまいます。音の数と、音楽を支える拍を分けて聴きます。

左手では休符が大切です。第1小節の低いドを弾いたあと、鍵盤を押さえたままにすると、書かれた休みが消えます。右手が続いている間にも、左手は音を終えます。ペダルを外し、左手の音が消えたあとに右手の旋律だけが残る瞬間を聴いてください。両手を合わせる練習には、同時に弾くことだけでなく、片方だけを離すことも含まれます。

第4小節では、右手の動きが止まったあとにも左手の8分音符が続きます。ここで両手を一緒に止めてしまうなら、まず左手の後半だけを歌いながら弾きます。次に右手を戻し、右手の休符を左手へ耳を向ける場所にします。音楽を受け渡す場所が分かると、指の記憶だけで冒頭から走り続ける弾き方から離れられます。

指使いは、音を1つずつ届かせるためだけでなく、その先へ動くために決めます。第3小節から第4小節への流れなど、前後を含めて試してから楽譜へ書きます。同じ場所で毎回迷うなら、まず選んだ指でゆっくり2小節を弾き、次には少し前から入ります。片手では保てるリズムが両手で崩れる場合は、両手を合わせる練習も参考になります。

5週目からの音色とフレーズ

音を読めるようになると、昔の速さへ戻したくなります。その前に、同じ数小節を違うバランスで弾いてみましょう。クレメンティの冒頭なら、右手の旋律だけを弾いて歌い方を決め、次に左手を加えます。低いドを強く鳴らしすぎると、旋律の出だしより低音の方が印象に残ります。右手をさらに強くする前に、左手の音量を変えて比べます。

逆に左手を小さくしすぎると、拍や和声の支えが弱くなります。私が聴きたいのは、左右のどちらかが勝っている演奏よりも、旋律が進むための土台が聞こえる演奏です。同じ音量差を曲全体に当てはめず、第4小節のように左手が動く場所では、下の線にも表情を持たせます。

フレーズの終わりでは、最後の音を短く切っていないか、次の始まりへ急いでいないかも聴きます。音を小さくすることと、音を早く離すことは別の操作です。長さを保ったまま静かに収める弾き方を試し、その後に前の小節から続けます。こうした違いを味わう時間が、単に昔の指の速さを測る練習にはない面白さになります。

6〜8週目:途中開始と通し演奏

6週目ごろには、曲の途中から始める場所を増やします。フレーズの始まり、曲想の変わり目、左手の形が変わる場所など、楽譜を見て説明できる地点を2〜3か所選びます。開始音だけ覚えるのではなく、その前にどんな音楽があり、これからどこへ進むかも思い浮かべます。

部分練習では、直したい小節の少し前から入り、その先まで弾きます。難しい小節だけを毎回きれいに弾けても、前の指使いから入れないことがあります。区間どうしのつながりを練習することで、通したときのつまずきを先に扱えます。

7週目は、今保てるテンポで曲や楽章を通してみます。途中で細部を直す演奏と、終わりまで流れを聴く演奏では、注意の使い方が変わります。通したあとに気になった場所を2〜3か所選び、次の練習で扱います。毎回同じ小節へ戻るなら、その前にテンポや手の位置がどう変わったかまで見直します。

8週目には、最初に録音した箇所を、近いテンポと同じ録音位置で弾いて比べます。見るのは、間違いの数だけではありません。長い音の間も旋律を聴けているか。左手の休符が残っているか。難しい音型の前で拍が急がないか。音楽上の変化を言葉にできれば、その先に育てる課題も選べます。

1曲がまとまったら、次には別の性格の短い曲を加えます。明るいソナチネで歯切れや拍を学んだあとは、ゆっくりした曲で歌や響きを聴く。昔の好きな曲を戻しながら、新しい短い曲で読譜を続ける。再開後のレパートリーには、記憶を楽しむ曲と、今の耳を育てる曲の両方があってよいと思います。

忙しい週と練習場所

仕事や家庭の予定で1週間空いたら、最後に取り組んでいた短い区間から再開します。忘れた部分を全部取り返そうと長時間弾くより、今どこで拍や指使いが揺れるかを一度聴きます。予定表の週番号も、実際の練習に合わせて動かします。

時間が短い日は、曲全体を急いで通す代わりに、前回の1か所へ戻ります。例えば左手の休符を聴く日なら、最初に左手だけ、続いて両手、最後に少し長いフレーズを弾く。音がどう変わったかまで確かめたら、その日はそこで区切ります。

自宅で音を出せる時間が限られる場合は、鍵盤に触れる時間を決め、その前に楽譜のリズムや指使いを読む方法もあります。東京では、レッスンとは別にピアノ練習室を使う選択もあります。部屋ごとの楽器や予約条件は、東京のピアノ練習室の選び方をご覧ください。久しぶりのアコースティックピアノでは、最初に静かな音とペダルの響きを聴いてから曲へ入ります。

練習中や練習後に痛み、しびれ、力の入りにくさがあるときは中止し、医療専門職に相談してください。BAPAMの復帰ガイドも、演奏時間・強度・曲の難度を段階的に増やすことを勧めています。けがや症状からの復帰には、この音楽学習の計画とは別に、個別の医療上の助言が必要です。

再開後のレッスン

久しぶりのレッスンには、以前使っていた楽譜と、今弾いている短い部分を持っていくと、選曲や指使いから話を始められます。「昔はソナチネまで」だけでなく、「今はここで左手が止まる」「旋律をもっと歌わせたい」と、現在の演奏で気になる場所を伝えます。

Vienna Piano Schoolでは、池袋・新宿のピアノスタジオでの対面レッスンのお申し込みを受け付けています。現在は開講準備中です。以前の学習経験と、また弾きたい曲を添えて、無料体験レッスンをお申し込みください。初回体験は55分・無料。通常のレッスンは55分4,800円、室料800円を加えた合計5,600円です。開始時期と体験の日程はメールでご案内します。

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