20年ぶりにピアノを再開するには?最初の8週間の練習計画

Enea — Vienna Piano School 主宰
Enea

昔習っていたピアノを10年、20年ぶりに再開する方へ。読譜、両手の連携、音色、無理なく弾ける時間を確かめながら、8週間で練習の土台を組み直す方法を紹介します。

20年のブランクがあっても、完全な初心者と同じ順序でやり直す必要はありません。最初の8週間で目指したいのは、昔の水準を急いで取り戻すことではなく、現在の読譜、両手の連携、音色、無理なく弾ける時間を確かめ、これからの練習が続く土台を作ることです。

以下は、週3〜5日、1回15〜30分ほどから始める計画例です。8週間は回復を約束する期限ではありません。以前の経験、休んでいた年数、使える楽器、生活の予定に合わせて、同じ段階を繰り返して構いません。

長い休止のあと再び開かれた木製のアップライトピアノと、折り返したカバー、メトロノーム、鉛筆を描いたイラスト。

長いブランク後の最初の目標は、以前の曲を急いで弾き切ることではなく、今の状態を正確に知ることです。

再開前に確かめたい4つのことと曲選び

以前のレベルではなく、今できることを4つに分ける

久しぶりに弾くと、以前できたことがすべて同じ速さで戻るわけではありません。楽譜は読めるのに両手が合わないこともあれば、指は動いても音を追うのに時間がかかることもあります。昔弾けた曲を1回通しただけでは、再開地点を正確に決められません。

まず、次の4つを分けて見ます。

  1. 読譜:音名を1つずつ数えず、短い旋律や和音の形を追えるか。
  2. 両手の連携:片手では分かる部分を、遅いテンポで無理なく合わせられるか。
  3. 音色と聴き方:旋律と伴奏の違い、音の終わり、ペダルの濁りを聴けるか。
  4. 無理なく弾ける時間:集中と動きの質を保ったまま、何分ほど続けられるか。

ここで点数を付ける必要はありません。「読譜は思ったより残っている」「左手が入ると拍が止まる」「10分を過ぎると音が荒くなる」のように、観察できたことを短く書けば十分です。

楽器自体も長く使っていない場合は、練習を始める前に状態を確かめます。アコースティックピアノは調律師に点検を依頼し、電子ピアノはすべての鍵盤とペダルが正常に反応するかを確認します。楽器側の問題を、演奏上の問題と混同しないためです。練習時間そのものを決め直したい場合は、短時間練習の組み立て方も参考になります。

最初は、以前より余裕を持って読める曲を選ぶ

再開すると、最後に仕上げた曲や、途中で止まった憧れの曲をもう一度弾きたくなります。ただし、昔の最高レベルの曲は、今の状態を確かめる材料にはなっても、最初の主な練習曲に適しているとは限りません。難しすぎる曲では、読譜、指づかい、跳躍、ペダルなどが一度に問題になり、何を戻すべきか見えにくくなるからです。

最初の1曲は、次の条件から選びます。

  • 以前に弾いた最も難しい曲より、譜読みや動きに余裕を持てる。
  • 8〜16小節なら、片手ずつ落ち着いて読める。
  • 速さや大きな跳躍に頼らなくても、音楽として楽しめる。
  • 8週間の大半を譜読みに費やさずに済み、音色やフレーズまで考えられる。

昔の曲に戻る場合も、全曲ではなく、比較的弾きやすかった1ページから始めます。新しい曲を選ぶなら、短くても旋律や和声の方向を聴ける作品が向いています。取り組みやすいクラシック曲の選び方にある候補も、以前の経験に合わせて選び直せます。

ピアノ再開の8週間を、今の演奏の確認、基礎の再接続、1曲の中での統合という3段階に分けた計画。

1〜2週目は今の演奏を確認し、3〜5週目は読譜・連携・音色を分けて整え、6〜8週目に1曲の中で結び直します。

1〜2週目:直す前に今の演奏を確かめる

1週目は短い録音を残す

最初の週は、昔のやさしい曲か、今読めそうな曲から8〜16小節を選びます。すぐに直そうとせず、選んだ部分を一度通して録音します。演奏を評価するためではなく、次の点を聴き分けるためです。

  • 拍が止まるのは、音を探すときか、両手を合わせるときか。
  • 指づかいが毎回変わっていないか。
  • 旋律より伴奏が大きくなっていないか。
  • 間違えたあと、どこから再開できるか。

録音を何度も聞く必要はありません。1回聞いて、直したいことを1つだけ書きます。最初の記録は、8週目に同じ部分を録音したときの比較材料になります。

2週目は最初の曲と練習量を決める

2週目は、1週目の観察をもとに、当面の1曲を決めます。同時に、集中と動きの質を保てる練習時間も決めます。15分で終わっても問題ありません。翌日に疲れを持ち越さず、次の練習で同じ課題に戻れる長さの方が役に立ちます。

この段階で確認したいのは、曲が最後まで弾けるかではありません。片手なら安定する場所、両手で崩れる場所、楽譜を見直す場所が区別できれば、3週目から取り組む順序が見えてきます。

木製のピアノを弾く大人の両手を、鍵盤の横から捉えた写真。

写真:Itay Weissman / Pexels。短い部分に区切ると、拍、指づかい、音のバランスを一つずつ確かめやすくなります。

3〜5週目:読譜・連携・音色を分けて戻す

3週目は拍と指づかいを固定する

4〜8小節を選び、まず拍を数えるか、鍵盤を使わずにリズムを声に出して確認します。次に片手ずつ弾き、指づかいを決めます。毎回違う指で何となく通れる状態より、遅くても同じ動きを再現できる状態を優先します。

音を間違えるたびに最初へ戻ると、冒頭だけが慣れ、問題のある小節はいつも練習の最後になります。難しい場所の1小節前から始め、通過できたら1小節後まで広げます。

4週目は両手を小さく接続する

片手で弾けても両手で崩れる場合は、回数を増やす前に情報を減らします。左手を和音のまとまりや低音だけにし、右手と拍が合う位置を確認します。そのあと元の形へ戻し、1〜2小節ずつつなぎます。

目標は、止まらずにページを通すことではありません。どの拍で両手が一緒になり、どこで別の動きをするかを分かった上で弾けることです。両手の問題が大きい場合は、4週目をもう一度繰り返して構いません。

5週目は音の課題を1つ加える

音とリズムが安定してきたら、旋律と伴奏の音量差、フレーズの終わり、ペダルのいずれか1つを選びます。全部を同時に直そうとすると、手順だけで手いっぱいになります。

たとえば、右手の旋律を少し明確にしたいなら、ペダルを外し、左手を小さくして2回録音します。違いを聴き取れたら、前後の小節とつなぎます。録音は上達の証明ではなく、同じ条件で2つの弾き方を比べる道具です。

6〜8週目:1曲の中で結び直す

6週目は始める場所を増やす

曲の冒頭からしか弾けない状態では、途中の問題を直しにくく、本番やレッスンで止まったときにも戻れません。曲を3つほどの区間に分け、各区間の最初から弾けるようにします。区切りの前後2小節も練習し、部分練習が曲の流れから孤立しないようにします。

7週目は無理なく保てるテンポで一度通す

ここで初めて、無理なく保てるテンポで全体を一度通します。通したあとは、気になった場所を3つまで記録します。次の練習からは、その3つを短く直し、毎回の通し練習は避けます。

止まった回数だけを数えるより、「左手が入ると拍が急ぐ」「フレーズの終わりが急に切れる」「和音が変わっても前の響きが残る」のように、次の行動につながる言葉で残す方が有効です。

8週目は第1週と同じ部分を録音する

第1週に使った8〜16小節を、同じくらいのテンポと同じ機器で録音します。以前の演奏と競うのではなく、8週間の中で何が変わったかを確認します。拍、両手の連携、音量のバランス、弾き直したあとの再開位置を1つずつ聴きます。

変化が小さくても、原因と次の練習を言葉にできるようになっていれば、再開の土台はできています。反対に、曲は通るけれど毎回違う場所で崩れるなら、難度を上げる前に4〜6週目へ戻る方がよいでしょう。

8週間後に確認すること

以前の水準に戻ったかどうかではなく、次の項目で判断します。

  • 曲の途中に、すぐ始められる場所が3か所ほどある。
  • 速さを落とす理由と、直したい小節を説明できる。
  • 片手、リズムの骨格、短い両手練習を使い分けられる。
  • 1回の練習で扱う音の課題を1つに絞れる。
  • 次回に何を試すかを、短い言葉で残せる。

全部できなくても問題ありません。読譜に時間がかかるなら易しい短い曲をもう1曲加え、両手の連携が不安定なら今の曲を小さな単位で続けます。昔の曲がすぐ戻るかより、現在の問題に合う練習を選べるかが、次の8週間を左右します。

予定どおり進まないときの調整

昔の曲が予想以上に弾けない場合は、その曲だけで今の状態を判断しないでください。記憶が曖昧なのか、曲そのものが難しいのかを分けるため、知らない短い易しい曲も読んでみます。

両手がなかなか合わない場合は、テンポだけを下げ続けるのではなく、左手を低音だけにする、リズムだけをたたく、1拍ずつ交互に確認するなど、同時に処理する情報を減らします。

忙しくて1週間空いた場合は、遅れを取り戻そうとして練習時間を倍にしません。最後に安定していた4〜8小節から再開し、その週を同じ段階として数え直します。大人が無理なく上達する条件については、大人のピアノ学習と現実的な進め方でも説明しています。

痛みやしびれがあるときは中止する

長い休止のあとは、演奏時間、音量、速さ、曲の難しさを一度に上げないようにします。舞台芸術医学を専門とする英国の慈善団体BAPAMの復帰ガイドは、休止後には演奏時間、強度、曲の難度を段階的に増やし、痛み、力が入りにくい、腫れ、しびれ、強い疲労、指を動かしにくいなどの症状があれば、資格を持つ医療専門職へ相談するよう勧めています。

痛みを「久しぶりだから」と考えて弾き続けることは、この8週間の計画に含まれません。症状がある場合は練習を中止し、適切な医療専門職へ相談してください。

次の8週間へ進むために

再開直後に必要なのは、昔できたことを証明する演奏ではありません。現在の読譜、両手の連携、音の聴き方、無理なく続けられる練習量を分けて確認し、自分で次の課題を選べる状態を作ることです。

オンラインレッスンは現在受講でき、東京都内の対面レッスンは2026年10月に始まります。長いブランク後の演奏状態と、最初に選ぶ曲、練習の優先順位を具体的に確認したい方は、体験レッスンの内容と申込み方法をご覧ください。

参考資料

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