《エリーゼのために》を最後まで仕上げるための練習順序
《エリーゼのために》を最後まで弾けるようにするには、冒頭を繰り返すだけでなく、明るい中間部分、低音の連打、その後の上行を早めに練習に入れることが大切です。難しい箇所の音と動きを小さく確かめ、前後をつないでから、曲全体に戻します。聴き慣れた速さを最初の目標にせず、主題と中間部分が同じ曲として続く状態を目指しましょう。
冒頭が弾けることと、全曲に取り組めること
「ミ、レ♯、ミ、レ♯」で始まる主題はよく知られています。その部分を弾けるようになると、曲の大半が分かった気持ちになるかもしれません。ところが先へ進むと、右手の細かな動き、左手の連打、両手の音量の違いなど、冒頭とは別の課題が出てきます。冒頭が弾けるかどうかだけでは、全曲の取り組みやすさは決まりません。
まず、手元の楽譜が全曲のものか、主題だけの抜粋ややさしい編曲かを確認します。編曲から原曲へ移る場合は、音の数、伴奏、音域が変わることがあります。以前弾いた記憶だけで先へ進まず、中間部分を含めて譜面を一度見渡してください。
取り組む目安になるのは、速さよりも、音を調べながら短い範囲を組み立てられることです。右手の数音を決めた指で弾き、左手の出る場所を確認し、ゆっくりなら両手を合わせられるでしょうか。毎回違う場所で読み直す状態なら、最初の課題はテンポを上げることではなく、音と指使いを定めることです。
一方、各部分を短く区切れば自分で進められるなら、全曲を少しずつ学ぶことはできます。途中が難しいからといって、すぐに曲を諦める必要はありません。負担が大きい場合は、初めて取り組むクラシック曲の選び方も参考に、別の短い曲と並行する方法を考えてみてください。
曲の中に五つの目印を付ける
練習を始める前に、楽譜へ戻る場所を作りましょう。以下は形式を細かく分析する図ではなく、練習場所を見失わないための地図です。主題のまとまりの中にも違う旋律や繰り返しがありますが、まずは大きな流れをつかみます。
上から演奏の流れ。練習は02・04から始めても構いません。
- 01最初の主題旋律と伴奏のバランスを作る
- 02明るい部分旋律の先に、細かな右手の動き
- 03主題に戻る直前の小節からつなぐ
- 04低音の連打と上行和音を保ち、三連符から下降へ
- 05最後の主題戻った後も、終わりまで聴く
練習場所を探すための大きな区分です。主題の中の変化や繰り返しは、楽譜で確かめます。
明るい部分には印を一つ、低いラが続く部分にも印を一つ付けます。さらに、その二つの部分を抜けて主題へ戻る場所を別に囲んでください。「難しい所」と一括りにするより、「明るい旋律の始まり」「低いラの始まり」「最後の主題の入口」と呼べるほうが、毎日の練習を始めやすくなります。
この記事の譜例は、末尾に載せたMutopiaの楽譜を基準にしています。同譜では明るい部分が第24小節、低音の連打が第60小節、三連符の上行が第78小節から現れます。弱起や繰り返しの別括弧の数え方によって、小節番号が異なる版もあります。番号が合わない場合は、音型と前後の流れで場所を照らし合わせてください。
主題が戻ってきたら、毎回最初と同じと思い込まないことも大切です。直前の音、つなぎ方、その後の行き先を楽譜で確かめます。繰り返し記号や一番・二番括弧も、使う版に従って読むようにしましょう。


クラシックピアノ個人レッスン
初心者から上級者まで。オンラインで国内外から受講できます。

Enea
ウィーン育ちのコンサートピアニスト
体験30分 · 新宿の対面レッスンは2026年10月から
練習は中間部分から始め、主題にも戻る
毎回冒頭から弾き始めると、慣れた部分に練習時間が集まりやすくなります。全曲を目指す段階では、その日に確かめたい中間部分を先に扱い、主題の練習も別に残しておきます。曲の順番と、練習する順番を一致させる必要はありません。
- 明るい部分の細かな音型と、後半の連打・三連符をそれぞれ短く読む。
- 各部分で指使い、拍の区切り、左手が入る位置を決める。
- その音型の直前から入り、直後の落ち着く音までつなぐ。
- 主題と中間部分を接続し、最後に曲の流れの中で確認する。
最初の段階で、難所をすべて両手で仕上げる必要はありません。たとえば明るい部分の右手を一小節読み、後半の左手だけを一小節試す日があってもよいのです。早めに曲の後半へ触れておけば、どこに時間が必要かが分かります。
練習の終わりには、次回の開始場所を一行で残します。「中間部を練習する」ではなく、「第31小節の二拍目から三拍目を、同じ指で続ける」と書けば、翌日すぐに取りかかれます。うまくいかなかった回数より、次に確かめる動作を記録してください。
主題では、右手の旋律と左手の分散和音を別々に聴きます。左手の低い音から上の音へ移るとき、移動先を探すために旋律まで待たせていないか確認しましょう。左手を静かに置く練習と、右手のフレーズを歌う練習を合わせると、中間部分を学ぶ間も冒頭の音楽が育ちます。
明るい部分は、旋律と三十二分音符を分けて読む
明るい旋律へ移ると、和音や装飾音、付点のリズムが現れます。音の位置が変わったからといって、それだけでテンポを上げる必要はありません。まず旋律の長い音を保ち、左手の伴奏がその間をどう進むかを確かめます。装飾音だけを何度も弾くより、装飾音を含む旋律の始まりから次の拍までを聴いてください。
その後の細かな音は、見た目の密度に圧倒されやすい箇所です。次の譜例では、右手の三十二分音符を八分音符一つ分ずつに区切っています。この曲は八分の三拍子なので、ゆっくり読むときは、一小節を三つの八分音符の拍として数えられます。
第31小節の右手。三十二分音符を四音ずつ読みます。音とリズムを抜粋しています。
- 1拍目ド・ソ・ソ・ソ四音で一拍
- 2拍目ラ・ソ・シ・ソ四音で一拍
- 3拍目ド・ソ・レ・ソ四音で一拍
高いソと、その間を動く音を見分けます。音名だけでは高さを区別していません。
音の高さと長さを文字で確認
中央のドをC4とします。第31小節:C5・G5・G4・G5、A4・G5・B4・G5、C5・G5・D5・G5。すべて三十二分音符。四音ずつで八分音符一つ分、小節全体で八分音符三つ分です。
一拍に四つの音が入ります。高いソが繰り返される一方で、その間の音は移っていきます。「全部速く動く」と見るより、繰り返す音と変化する音を見分けて、次に触れる鍵盤を確認しましょう。高いソを毎回強調する必要はありません。
まず一拍目だけを、同じ指使いで弾きます。次に二拍目まで延ばし、拍の境目で手が止まらないかを確かめます。四音を弾き終えてから次の位置を考える状態なら、練習の範囲を「一拍目の最後の音から、二拍目の最初の音まで」に変えてみてください。区切りをまたぐ動きを練習できます。
両手にすると崩れる場合は、左手をいったん外し、右手の音の順序が変わらないか確認します。そのうえで、楽譜にある左手の各音が右手のどの音と重なるかを見つけます。合わせる瞬間だけで止まって確かめる練習をしたら、最後は止まらずにその前後を弾き直しましょう。
先の小節も同じ形だろうと決めつけず、音が変わる場所を読んで進みます。譜例の一小節が弾けても、その先の指使いや主題へ戻る準備は別に必要です。速度を上げる段階では、ゆっくり練習からテンポを戻す方法のように、音や拍のどちらが崩れたのかを確かめながら範囲を調整してください。
低いラの連打は、右手の和音と役割を分ける
後半では、左手の低いラが十六分音符で繰り返されます。右手には長く保つ和音が現れ、冒頭とは響きの厚さが変わります。ここは、左手が動くたびに両手を一緒に押し直さないことが大切です。動く手と、音を保つ手を分けて聴きましょう。
たとえば参照譜の第61小節では、右手の和音は付点四分音符で一小節続き、左手のラは六回鳴ります。まず右手だけで和音を弾き、次の小節の和音へ移る位置を見ます。指の形を毎回探す場合は、テンポを付ける前に移動先の音を確かめてください。
左手だけでは、同じ鍵盤を続けて鳴らせる小さな動きを探します。鍵盤が戻る前に押し込もうとしていないか、途中から音だけが急に大きくなっていないかを聴きます。強く響かせようとするあまり、腕や指を固めたまま繰り返す必要はありません。
両手を合わせるときは、短い一小節で、右手の和音が保たれている間に左手が続くことを確認します。左手の音を小さめにして、右手の和音の響きが追えるかを試すのも一つの方法です。その後、楽譜の強弱に沿って全体の響きを作ります。「左手はいつでも弱く」と固定するのではなく、聴かせたい声部との関係で決めましょう。
この部分でも、ペダルを踏み続ければ解決するわけではありません。まず短い範囲をペダルなしで合わせ、音の重なりと長さを確かめます。ペダルを加えた後は、和音が変わっても前の響きが残りすぎていないかを聴いてください。踏み替えの深さや量は、楽器と部屋の響きでも変わります。
上行の三連符は、先ほどの四音と数え方が違う
低音の連打が続く部分の先には、広い音域を上る分散和音が現れます。ここでは三連符を、先ほどの三十二分音符と同じ感覚で詰め込まないようにします。見た目にはどちらも細かな動きですが、一拍に入る音の数が違います。
第78小節の右手。十六分音符の三連符を三音ずつ読みます。音とリズムを抜粋しています。
- 1拍目ラ・ド・ミ三音で一拍
- 2拍目ラ・ド・ミ三音で一拍
- 3拍目レ・ド・シ三音で一拍
一・二拍目は上行、三拍目で下向きに折り返します。拍の頭を強調する必要はありません。
音の高さと長さを文字で確認
中央のドをC4とします。第78小節:A3・C4・E4、A4・C5・E5、D5・C5・B4。すべて十六分音符の三連符。三音ずつで八分音符一つ分、小節全体で八分音符三つ分です。
この小節では、八分音符一つ分の長さを、十六分音符の三連符で三等分します。「一拍に四音」だった第31小節に対し、ここは「一拍に三音」です。ゆっくりの段階では、三つの音を均等に弾いて次の拍へ進めるか、数えながら確かめてください。拍の区切りは練習の目印であり、各拍の頭を強く叩く指示ではありません。
右手だけで最初の三音を弾き、次の三音へ移る位置を見ます。手を広げた形のまま遠くの音へ届かせようとせず、次の音域に手が移れる指使いを選びましょう。指番号は手の大きさや前後の動きにも関係するため、ここで全員に一つの番号を指定することはしません。自分で選びにくい場合は、使っている楽譜を見ながら先生と決めると練習が進めやすくなります。
譜例の三拍目は下向きに動きます。上ることだけを意識して勢いを付けると、この折り返しや次の小節への移動が曖昧になることがあります。最高音を含む三音だけでなく、その先の着地までをひと続きで弾いてみてください。
続く上行と半音階の下降も、別々の開始地点から練習します。高い音に到達するまでを成功の区切りにせず、下って主題に戻るまでの行き先を用意しましょう。途中で音を探す場合は、その直前から短くつなぎ直します。指が覚えた勢いに任せるより、どこへ着くかを分かっていることが支えになります。
主題へ戻るつなぎ目を、独立した練習場所にする
中間部分が弾けるようになっても、主題へ戻る瞬間だけ止まることがあります。その場合は、主題を冒頭から弾き直す練習ではつなぎ目を通りません。中間部分の終わりから入り、主題のフレーズが落ち着くところまでを一つの練習範囲にします。
明るい部分からの戻りでは、主題を予告するミとレ♯の動きにも耳を向けます。参照譜の第39小節では、おなじみの音型が一小節の中に戻ってきます。その小節だけを取り出すのではなく、前の小節から右手の流れと左手の入りを確かめてください。
後半の上行・下降から最後の主題に戻る場合も同様です。速い音が終わった安心感で急に間を空けたり、反対に勢いのまま主題へ走り込んだりしていないかを聴きます。参照譜では第83小節から主題の音型を確認できます。戻った後の最初の音だけで止めず、短いフレーズまで続けましょう。
練習中は難所だけ遅くして構いません。ただし通して弾く段階では、主題だけが先へ進みすぎないテンポを選びます。冒頭を気持ちよく弾ける速さでは中間部分が追いつかないなら、全体の基準を少し落として接続を確かめます。そのうえで、表情としての自然な間や揺れを考えていきます。
細かな音を読むときに八分音符三つで数えていた感覚は、曲が進むにつれて一小節の大きな流れへまとめられます。ただ、数え方を大きくした途端に短い音が不均等になるなら、部分練習では細かい拍へ戻りましょう。最初から最後まで一つの数え方に縛られる必要はありません。
最後までつながったら、響きと終わり方を整える
全曲を止まらずに弾くことは、一つの確認になります。ただし、間違えなかったかどうかだけで仕上がりを決めると、主題の歌い方や、中間部分との響きの違いを聴き逃します。通す回には、確かめたいことを一つか二つに絞りましょう。
- 主題の旋律が、左手の伴奏に埋もれずに続いているか。
- 明るい部分の細かな音が、拍の流れからはみ出していないか。
- 低音の連打の上で、右手の和音の変化が聴こえるか。
- 二つの中間部分から主題へ戻るとき、次の音を探して止まっていないか。
- 最後の音と休符を楽譜で確認し、響きの終わりまで聴けているか。
ペダルは、音をつなぐ助けにも、濁りの原因にもなります。主題で旋律をなめらかにしたい場合も、左手の響きが変わるたびに耳を働かせてください。録音するなら、弾いている間に分かりにくかった伴奏の大きさや響きの残り方を、一度に一つずつ聴き返します。毎回録音する必要はありません。
最後の主題も練習時間を確保しましょう。曲の頭では弾ける音型でも、長く弾いた後では注意の向き方が変わることがあります。最後の主題から始める練習をして、終わり方を楽譜と耳で確かめます。最後の鍵盤を押したところで手順が終わるのではなく、音を離し、必要なところでペダルを戻し、響きが収まるまでが演奏です。
通した後に気になる場所があったら、その日の練習を最初からやり直す必要はありません。問題の直前から直後までを取り出し、次に通すときの確認点を残します。部分練習と全体の演奏を行き来すると、どこを直すかと、何のために直すかが結び付きます。
「第31小節の両手が合わない」「半音階から主題への戻りで止まる」など、具体的な場所が分かっていれば、レッスンでもそこから相談できます。Vienna Piano Schoolの無料30分体験レッスンの案内では、お申し込み方法を確認できます。使っている楽譜と、今いちばん確かめたい一節を用意していただくと、次に取り組むことを一緒に考えやすくなります。
この記事をシェア
関連記事
練習法
東京の対面レッスンとオンラインレッスン、どちらが合う?
東京でピアノを習うなら対面とオンラインのどちらが合うのか。生音と身体の確認、自宅の楽器、移動、通信環境を比べ、今の課題と生活に合う受講形式を選ぶ順番を紹介します。
練習法
ピアノ初心者におすすめの簡単なクラシック曲と、選び方
ピアノ初心者に向けて、クラシックで本当に取り組みやすい曲と、その選び方を整理しました。難易度を判断する基準、見た目より難しい有名曲、定番のおすすめ曲、無料で楽譜を入手する方法までを、現役講師の視点で解説します。
練習法
ピアノ初心者が最初にやってはいけない練習方法、5つ
ピアノ初心者が無意識にやってしまいがちな、5つの「やってはいけない練習」を整理しました。最初から弾き直す癖、速く弾きすぎる、音を聴かずに指だけ動かすなど、努力を無駄にしないための具体的な見直し方を解説します。

